都市計画論文集
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54 巻, 3 号
都市計画論文集
選択された号の論文の178件中1~50を表示しています
  • 空き家所有者へのSP調査に基づいて
    和氣 悠, 氏原 岳人, 織田 恭平
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,空き家所有者を対象としたアンケート調査に基づき,空き家の市場流通化を拒む課題を網羅的に把握するとともに,それら課題に対応した効果的な空き家対策をSP調査に基づき検証した.主な分析の結果,1)「物置として必要」や「特に困っていない」と回答する空き家所有者については,既存の対策によって空き家を市場流通化させることは困難である.2)各自治体で数多く実施されているリフォーム補助などの金銭的サポートによる空き家対策は,効果が限られている.3)一方,新たな空き家対策の1つとして挙げた固定資産税の増加策は,1)の解決困難な課題も含めて全般的な課題に極めて高い効果を示した.既存の空き家対策では限界が見られるなかでは,このような新たな施策についても,1つの選択肢として検討するに値すると言える.

  • 高砂市を事例として
    五十石 俊祐, 大橋 響, 矢本 良
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 253-260
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    全国的に空き家が増加する一方でDID地区の面積は拡大している。地方自治体の財政効率は人口密度と負の相関関係にあることを考慮すると、空き家の再活用促進策を検討する意義は大きいと考えられる。そこで本研究は、高砂市を対象に戸建て空き家の社宅活用に着目し、企業が高経年既存戸建て住宅を社宅として借り上げた際の経済的メリットと経費を推計した。分析の結果、経済的な補助施策を用意しない場合、社宅として借り上げることが経済的なストックは2戸と推計された。このことから経済的支援施策がなければ、戸建て空き家の社宅活用促進は難しいと考えられる。そこで、社宅活用による財政効果の期待値の75%を企業に対して補助した場合を想定したところ、社宅として借り上げることが経済的なストック数が近隣市から通勤するファミリー借家世帯数を上回ると把握できた。このことから、支援施策次第ではあるが、郊外自治体において空き家の借り上げ社宅活用が進む可能性はあると考えられる。

  • 日本の課題を踏まえたアメリカ・ハワイ州におけるマンション住戸の宿泊利用の制度からの検討
    中城 康彦, 齊藤 広子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    空き住戸の増加が問題となる一方、宿泊施設の不足が顕著なことより、日本の区分所有マンションをストックとして有効活用する方法として宿泊利用することが考えられる。日本では専有部分は区分所有者の判断で使用収益処分でき、管理組合が関与できないとする考え方が一般的である。住戸をホテルとして運営している事例や裁判事例から日本の空き住戸を宿泊利用する際の4つの課題を抽出した。日本の課題を解決する参考とするために、ハワイ州のコンドミニアムの空き住戸利用制度を分析した。短期バケーションレンタル、コンドミニアムホテル、タイムシェアを分析し、州法による許認可基準の明確化と登録及び情報開示、専門家をオンサイトに配置する、ホテル機能のための施設の所有と利用に工夫があることなどを明らかにした。特に、住戸ごとではなく建物全体を統括的に運営する専門家の導入について日本でも検討することが考えられる。

  • 9都市におけるケーススタディを通じて
    中村 優里, 片桐 由希子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 268-275
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    全国都市緑化フェア(以下、緑化フェア)は緑のまちづくりへの継続的な効果を得ることを狙いとした、1983年から続く自治体持ち回り式のイベント事業である。本研究では、過去に緑化フェアを開催した9都市の担当者へのヒアリング調査を通じて、緑化フェアの実施による効果とイベントレガシーとしての定着を把握した上で,その評価の視点を整理した。緑化フェアのレガシーと明確に評価されたのは、会場である都市公園を中心とした公園の利活用の促進、緑化活動の活性化と人材育成に関する事業・制度、関係組織の設立や活性化であり、シティープロモーションの効果も認識されていた。一方、レガシーとしての効果の定着は、フェアの企画・実施の体制の、施策としての展開と連動の有無に依存する。緑化フェアが多様な立場の主体にとっての社会実装の場として、都市における緑の可能性を見出す機会となるためには、緑化に対する意識醸成やライフスタイル、イベントの実施のプロセスを通じた協働の場の構築など社会的な効果など、現状では前後を知る担当者が実感する状況の変化や、他業種の事業者の視点での経済的な効果など、分野を横断し共有するための評価が求められる。

  • 農住都市構想を推進する融資制度の比較と農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法の利用実態
    佐伯 亮太, 松本 邦彦, 澤木 昌典
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 276-281
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    農と住の融合したまちづくりの萌芽として1967年から始まった農住都市構想に着目する。農住構想が発表された1967年から農住組合法制定以前の1979年までを対象期間として、農住構想の理念と実現に向けた制度の創設や改正、関連省庁による研究調査等の動向をまとめた。農住構想は複数の省庁が連携して計画したが、実行段階になって連携不足が明らかになった。また対象期間中に農住構想の推進に寄与した融資制度である農地所有者等賃貸住宅建設融資利子補給臨時措置法によって建設された358申請(736棟、10,303戸)を分析した結果、農住団地の建設は特定の県に集中しており、また申請者も個人による申請が95.3%を占め、申請棟数は69.3%が1棟のみの申請であった。つまり、黎明期の農住構想の具現化については、土地利用等を検討せずに農住団地建設が可能であったことから、理念を十分に反映できたとは言えない。それは、利子補給法が建物建設のための融資制度であったためである。

  • イエ リンリン, 出口 敦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 282-289
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    中国における「復墾」とは、住宅、工場等が立地する既存の開発地を農地に戻す事業のことである。本研究は、我が国で一般に良く知られていない中国の復墾の制度とを理解すると共にその効果や課題を考察する基礎的な研究として、上海市における復墾事業の背景と制度、および実施状況を把握すると共に、抽出した事例の現地調査を通じ、復墾事業の効果と課題を整理し、これまで一般に不可逆的と思われてきた都市開発の逆パタンと言える開発地を農地に戻す事業の実態を明らかにすることを目的とする。まず上海市における1999年開始以降の復墾の制度の変遷を3段階の過程で整理すると共に、開発地総量のマイナス成長の政策の下、補償制度やインセンティブ制度を導入することで復墾の目的を達成している実績と事業パタンを整理した。更に、同市の新浜鎮の復墾事業のケーススタディでは、現地調査やヒアリング調査を通じ、居住環境の改善や鎮の生産性の向上に寄与するなどの効果が認められている一方、復墾事業期間の後期では事業実施の困難さが増す傾向にある点や、農村住宅地から移転した農民の居住環境の変化への対応に対して課題がある点を指摘した。

  • 地域委員会の組織運営と活動実態およびローカルプラン策定過程における役割について
    一色 寛登, 鶴田 佳子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 290-297
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は、コペンハーゲン市のローカルプラン策定過程における法定地域住民組織である地域委員会の役割と活動実態を把握することである。分析の結果、地域委員会のメンバーは地域で活動している多様な専門分野の住民組織から選出され公正性、客観性が担保されるシステムあることが分かった。また、ローカルプラン策定過程において、草案策定前と計画案の公開ヒアリング期間中における市民ミーティングの開催、住民の意見をまとめた意見書作成とそれの市への提出を行っており、専門の下部組織「都市環境委員会」で議論され、地域委員会で決定されるシステムである。以上の考察から、地域委員会はローカルプラン策定過程の住民参画において重要な役割を持っていることが分かった。

  • 宋 俊煥, 鵤 心治, 小林 剛士, 趙 世晨
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 298-305
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、ポートランド市の95地域組織(NA)を対象としてその活動実態を整理するとともに、コンパクトシティ政策への参加意識と住民参加が与えた影響、NAの活動特性との関係性を明かにすることで、日本においてコンパクトシティ政策を進める上で有効となる自治会等の地域組織と行政との連携手法及び市民参画に資する知見を得ることを目的とする。ヒアリング調査によりポートランド市のNAの仕組みを把握し、ネイバーフッド担当部局のNA活動リーダー・データベースを用いオンライン方式アンケート調査(回答数128名、回収率40.3%)を行った。主成分分析の結果、NAの活動特性を説明する①活動の活発性、②都市密度・CN性、③コンパクトシティ政策への積極性、④社会福祉活動の指向性の、4つの特性軸が明らかとなり、また5つのグループに類型化と比較分析することで、グループ別特徴と共に、(1)地域組織の市民参加を促進する方法、(2)地域組織内の小委員会の存在、(3)まちづくりリーダーの役割について知見を整理している。

  • 名古屋市「地域まちづくり」の取り組みを事例に
    吉村 輝彦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 306-312
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、都市計画マスタープランに位置づけられた「地域まちづくり」とその推進のための支援制度があり、また、近年、社会状況の変化を踏まえ、制度改正を行い、支援の仕組みを拡充した名古屋市を事例に、「地域まちづくり」の取り組みの実態を明らかにし、その意義や課題を考察することを目的とする。名古屋市における「地域まちづくり」の取り組みは、マネジメントの視点を意識し、地域まちづくりのプロセスを全体として示していくことで、まちづくり団体に対して組織や活動の成長を促し、合わせて、段階や成長(ステップアップ)に応じた伴走型支援をしていく仕組みは、自立的で、かつ、持続的な地域まちづくりの取り組みを育んでいこうとする点、そして、資金的及び非資金的な支援を行いながら、官民連携のまちづくりを射程に、パートナーシップを育んでいこうとする点で、今後を見据えたものとして意義がある。活動支援の実績としては、登録団体や認定団体の数、アドバイザー派遣、活動助成、コンサルタント活用助成は一定程度の活用実績はあるが、団体の取り組みスタンスにより活用状況は異なる。

  • 青森県黒石市中町地区南西部・南東部を対象として
    北原 麻理奈, 窪田 亜矢
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は地方都市中心市街地の歴史的地区における空閑地再編に向けた基礎的な知見を得ることを目的として、歴史的町並みの残る青森県黒石市の中町地区南西部・南東部を対象に近代以降の土地所有の変遷を明らかにした。旧土地台帳及び旧公図を用いた所有変化・敷地形状変化の分析から、近隣での土地売買により各家の商売状況に応じた敷地規模の調整が図られており、かぐじと呼ばれる主屋後背のオープンスペースの規模が柔軟に変化してきたことが明らかとなった。こうした変化を経てもなお敷地前面からこみせ・主屋・かぐじが縦に並ぶという雪国の住まい方に由来する空間特性は崩れることなく維持されていた。また戦前までに所有面積を徐々に増やしていく「おおやけ」と呼ばれる大商家の台頭が見られ、複数の「おおやけ」が土地を共同で所有し、次なる利用に備えるという土地マネジメントの一端も明らかとなった。近年うまれている新たな土地利用の動きはこうした土地所有の伝統の上に位置づけられるものであったが、一方で戦後から現在にかけて、主屋の建替えや解体に伴い空間特性が崩れている敷地が部分的に存在し、町並みの連続性が失われている状況も明らかとなった。

  • 安曇川沖積平野(木津荘, 滋賀県)を対象として
    吉田 裕枝
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 321-328
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、重要文化的景観である滋賀県高島市の「針江・霜降の水辺景観」に含まれる、条里制集落・針江地区の耕作地の所有形態における、関係性の特徴の解明を目的としている。周辺地域である安曇川沖積平野には、集落への帰属意識を高めるため、一耕作者を意図的に複数の水路に関連づけ、耕地を小規模に分散化して所有する伝統が存在する。そこで、本研究では、針江地区で1984〜85年に行われた換地を分析時点として、換地史料における記載を元に、集落内外の共同体間の関係性から、その耕作地所有形態の特徴を定量的に分析した。そして、中世での集落の耕作地や居住域の開発史と対照した結果、次のような結論が導き出された。1)換地前後の針江地区の所有者には、隣接する集落、かつて地域の井堰を共同利用していた近隣集落群居住の所有者による耕地が含まれることが明らかになった。2)古くから開発された耕地ほど、その耕地の水利に関連するあらゆる属性に、万遍なく所有される傾向があり、一方、相対的に新しく開発された耕地は、その所有属性に偏重傾向がある。3)換地前後、各小字の耕作地の属性は、その水利に連関する近隣共同体との関係が示唆された。

  • 江戸前期から昭和中期の地図を基礎資料として
    久保 有朋, 岡崎 篤行
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 329-336
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    全国有数の花街である古町花街は、1655年に町立てされた旧新潟町のほぼ中央に位置し、近世から近代にかけて整備された街路や地割がよく残り、戦前の歴史的建造物も数多く残る地区である。古町花街の街区は通り・小路・新道・路地の四段階の街路で構成され、通りと小路の形成史は既に明らかである。一方、背割線上に造られた新道と、建築物の隙間である路地は、新潟市史等の郷土史で扱われず、地図への記載が省略される場合も多く、その情報の少なさから形成の歴史は明らかでなかった。本稿では、江戸前期から昭和中期を対象とし、古町花街の主要な街路である新道並びに路地の形成を明らかにする。本稿の主な結論は以下の通りである。(1)新道の形成時期に関して分かったことは、八番町側東新道は江戸末期、九番町側東西新道は明治中期に全通したこと、八番町側西新道は明治中期に一部を除き開通し、明治後期に全通したことである。(2)路地の形成に関して分かったことは、六軒小路の東側は江戸前期、西側は江戸後期の形成と推察されること、勝念寺小路は明治中期までに形成され、一部現存の可能性が高いことである。また、江戸後期から明治中期の史料より5本の路地を確認した。

  • 東京23区内を対象として
    青木 悠輔, 中井 検裕, 沼田 麻美子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 337-344
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    現在、宅地化の進行により都市農地は年々減少傾向にある。しかし、都市農地は近年多面的な機能が評価されてきているおり、これ以上の宅地化は望ましくなく、保全されるべきである。そこで、本研究では開発権移転の手法によって都市農地の開発権を都心部に移転することに着目し、その手法を人口減少社会における都市部の農地保全に応用できる可能性を検討することを目的としている。まず、地価比率や土地残余法によって開発権の移転レートを求め、そのレートを想定される事業に適用した。さらに、開発権移転が行われる際に、都心部で開発を行う事業側の収益性を検証した。結果として、丸の内や銀座エリアでは1つの事業で世田谷区の生産緑地の全開発権を移転でき、その他のエリアでは多数の事業の組み合わせによって世田谷区の生産緑地の全開発権を移転できることが分かった。

  • 二子玉川ライズ・ルーフガーデンを対象として
    横田 樹広
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    複合再開発に伴い一体的な屋上緑化空間が整備された二子玉川ライズのルーフガーデンにおいて、展望デッキ、原っぱ広場、めだかの池、青空デッキの4つのゾーンを対象として、夜間利用に伴う利用者の生理・心理的効果を計測した。27人の大学生を対象に、ストレス負荷後とゾーン利用後における唾液アミラーゼ濃度活性の測定とPOMS2検査、SD法による印象評価アンケートを行った。その結果、唾液アミラーゼ濃度活性はめだかの池の観察と原っぱ広場の散策・休憩でとくに低下し、あわせて緊張感・疲労感・無気力感の有意な改善がみられた。印象面でも、めだかの池で屋上感・自然性、原っぱ広場で開放感と親しみやすさが得られた。また青空デッキは、展望デッキに比べ、立体感や心理的ストレス要素の低減がみられた。これらより、ビオトープ空間と芝生広場の相乗的なストレス緩和効果や、デッキの環境に応じた心理的効果を活用し、ゾーン間の一体的な効果を創出することが有効と考えられた。複合再開発に伴う屋上緑化では、夜間利用も踏まえて異なる空間・利用形態のゾーンを立体的に複合化することで、身近なストレス緩和空間のネットワーク化に寄与できると考えられた。

  • 福岡県筑豊地区遠賀川流域河川敷における社会実験
    小池 博
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 352-358
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では、既往の研究で見られるようなウッドテラス型の利用法に加え、ウッドパネルの木質的特性を生かし、ウッドパネルに直接接触できるような利用法(以下、ウッドタッチ型利用法とする)を提示することで、より河川敷公共空間の積極的な利用を促進するとの仮説を立てた。その仮説を実証することを目的とし、福岡県筑豊地区遠賀川流域河川敷においてウッドパネルを活用した社会実験を行ない利用者にアンケート調査を行った。その結果、①木なりのウッドパネルは、遠賀川河川敷公共空間のイメージを向上させる効果があり、②ウッドテラス型の利用法よりも、ウッドタッチ型の利用法の方が概ね評価が高く、③ウッドタッチ型の利用法でもウッドパネル自体への評価は1次の目的行為の満足度に左右される可能性があり、④ウッドパネル自体はイベント時でも平常時でも河川敷公共空間の利用を促進させる可能性があることがわかった。

  • 植田 直樹, 西谷 麟, 村上 暁信
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 359-366
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は東京都心部における緑化条例の特徴を把握することで、今後の都市を見据えた緑化誘導のあり方を議論することを目的としたものである。東京都とは別に独自の条例を持つ13区の緑化条例を対象に、既往研究に基づいた分析を行った結果、それぞれは都心部ならではの自治体独自の課題認識に基づいた工夫を行っていることが反面した。それらは①建築計画との連動を重視した工夫,②都市が求める緑の多様な機能を実現するための工夫,③緑が継続的に生育できるための工夫,の3つに大きく大別できることがわかった。今後の都心部における緑化誘導のあり方を議論するにおいては、こうした工夫を理解し、さらに発展させることが必要であることが判明した。

  • 関東地方における総合運動場初期成立事例に関する検討
    馬場 信行
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 367-374
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本論は、京浜電鉄が明治後期に開設した、羽田運動場の設置基本構想と設計思想と整備、運営内容を分析し、その社会的位置づけを目的とする。当該時期の運動場の大半は学校に立地し、一般市民に開かれた総合運動場は僅少であった。そのなかで羽田運動場は、一部のエリート学生だけではなく、労働者層等一般市民に開かれたものであった。また、観覧席設置の手段などを用いて、スポーツ競技観戦や法人運動会開催の機会を羽田運動場は提供していた。

  • 「グランフロント大阪北館西側歩道空間における座具設置社会実験」を対象として
    遠矢 晃穂, 嘉名 光市, 蕭 閎偉
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 375-382
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の社会実験は公共空間の活性化のために必要不可欠なものである。 本研究は、グランフロント大阪の北館西側歩道に社会実験座具を設置した社会実験エリア内で、人々のアクティビティに焦点を当てている。 まず、社会実験エリア内の利用者の通年変化とイベントによって引き起こされる周囲への影響を検証した。 次に、利用者のアクティビティのタイプ区分と社会実験エリアに醸成された雰囲気の変化を分析し、その結果、この研究では、季節ごとの平日/休日の違いを明らかにし、またリピーターの出現やアクティビティによる周囲への影響を明らかにした。

  • 柳川 星, 阿部 貴弘
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 383-390
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,シアトル市旧日本人街の日系人コミュニティを対象として,エスニック・コミュニティの形成・変容過程を明らかにするとともに,その過程において形成された歴史的環境を保全・活用する意義を考察した.エスニック・コミュニティの集住する地区はその独自の歴史的環境が魅力になり観光地としてのポテンシャルを持っているが,わが国においてはその保全・活用が行われているのは限られた事例のみである.本研究の対象地では歴史的環境の保全・活用が盛んに行われており,日系移民の居住がはじまった太平洋戦争前から現在までその変遷を調査した.分析にあたっては,社会背景や行政施策に加え,日系コミュニティ独自の組織や教育,文化,建築,景観に着目した.その結果,歴史的環境の中でも特にエスニック・コミュニティの生活史を伝えるビルト・エンバイロンメントを保全・活用することが,地区のエスニシティを継承することにつながることがわかった.

  • 安達 友広, 木曾 悠峻, 久保 勝裕
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 391-398
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    城下町で多く見られる「山当て」の現象は、北海道の一部のグリッド市街地でも確認されている。その中には、遠方の山頂よりもはるかに市街地に近接した「奇岩」に向けて、景観軸を形成している都市がある。本研究では、GISを用いて奇岩への軸線を客観的に計測し、さらには軸線の形成過程を明らかにした上で、その後の軸線の整備実績から、現在の都市デザインにおける歴史的景観の位置づけを検証した。分析の結果、形成過程として、①地形的制約の中で自然発生的に形成された場合、②奇岩を見通しやすい位置に市街地そのものを配置した場合、③特定の道路を奇岩に向けて計画して市街地の基線とした場合、が確認された。また、奇岩は、市街地から間近に見えることに加えて、その特徴的な景観によって古くからアイヌらの象徴空間である場合が多く、市街地が形成された明治以降も地域のシンボルとして認知されている。そのため、奇岩周辺や道路沿いの整備が進められ、軸線が強化されている実態を明らかにした。

  • ネパール地震後の文化遺産保護国際協力事業調査報告
    森 朋子
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 399-404
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿は、コカナでのネパール震災後約4年の復興を事例に、2015 年11月から2019年3月に行った現地調査に基づき、ネワール集落保全に向け、民家再建の実態とその建設規定に関する課題を明らかにすることを目的とする。研究の方法として、コカナの概要と震災後の復興を時系列に整理して変化と現状を明らかにし(第2章)、再建された新築民家に着目してその実態を明らかにする(第3章)。最後に、ネパールの文化財保護行政と都市計画行政の現状をそれぞれ整理し、震災後制定された歴史的集落における建設規定の内容を概観して、現時点でのネワール集落保全に向けた民家再建の建設規定に関する課題を明らかにする(第4章)。

  • 下山 萌子, 後藤 春彦, 山村 崇
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 405-412
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、日本を訪れる外国人観光客が増加している。特に2000年代以降は、国による観光促進政策が進められたことも後押しして、訪日観光客数は急伸基調にある。本研究では、客室数の増加が顕著な東京都心部において、近年に建てられたホテルの立地傾向を明らかにする事を目的とする。その上で現行の誘導政策と立地実態とを比較しつつ課題を抽出する。訪日観光客増加期に建設されたホテルの立地傾向を詳細に検討したところ、主なパターンとして以下の3種類が得られた。1.駅近の小規模オフィスが、中価格帯の宿泊特化ホテルへの建て替わる、もっとも代表的なパターン。2.駅からやや離れた場所では、小規模オフィスが低価格帯の宿泊特化型ホテルへと建てかわるパターンが見られたが、このタイプのホテル(いわゆる「ビジネスホテル」)の建設は以前よりも鈍化しつつある。3.ターミナル駅から近い商業地域では、複数の事業所が再開発により統合されて大規模複合ビルとなり、その上層部に高級ホテルが設置されるパターンも見られる。最も主流なパターンは1であるため、中小規模の空きオフィスをホテルへ用途変更にするための規制緩和についても検討の余地がある。

  • 間野 喬博, 丸岡 陽, 松川 寿也, 中出 文平, 樋口 秀
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 413-420
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では1970年代に40戸以上連担して住宅が建築された区域を「住宅増加地(増加地)」と定義する。住民の高齢化し店舗や公共交通が撤退したおそれがある郡山、宇都宮、前橋、金沢、豊橋、大分の住宅地を対象とし、生活の現状と変化に着目し、良好な生活環境の条件を明らかにすることが目的である。自治体へのヒアリングでは増加地の形成過程などを明らかにした。現地調査では増加地との高低差により公共交通の利便性が低い事例がみられた。アンケート調査では公共交通を利用して食品小売店を利用する住民は稀有であることが判明した。形成から時間が経過した住宅地では、生協や移動販売の利用支援など、徒歩での生活を可能にするための制度が必要であると考える。

  • 橋村 ちひろ, 雨宮 護, 畑 倫子, 島田 貴仁
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 421-428
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、子どもが犯罪や事故に巻き込まれることを心配する保護者によって、子どもの行動が規制される傾向にある。このことは、子どもが大人の付き添いなしで自由に行動する機会を減らし、子どもの発達に悪影響を及ぼすことが指摘されている。既存研究においては、こうした子どもへの行動規制には、子供や保護者の個人属性的要因とは別に、地域の環境要因が影響することが指摘されている。そこで、本研究は保護者による行動規制と地域要因との関連を明らかにすることを目的とした。本研究ではまず、探索的に行動規制の傾向を明らかにするために、小学生の子どもを持つ保護者16名に面接調査を行った。次に面接調査の結果を踏まえ、行動規制と地域要因との関連を定量的に明らかにすることを目的とし、神奈川県に住む小学生の子どもをもつ女性を対象に、ウェブアンケート調査を実施した。ウェブアンケート調査(n=440)に対する共分散構造分析の結果、都市性が低く子どもの少ない地域では、空き地等のひと目の少ない場所が認知され、保護者の不安感が増すことから、規制が強くなることが明らかになった。また、居住地域の社会的凝集性が高いと認知している保護者は、規制が弱くなることも明らかとなった。

  • 東京都千代田区中神田中央地区の用途別容積型地区計画と街並み誘導型地区計画を併用した地区計画を対象に
    高山 広太郎, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 429-434
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    1990年代後半から2010年代にかけて、東京都千代田区の神田周辺の広いエリアに用途別容積型地区計画と街並み誘導型地区計画を併用した地区計画(以下「併用型地区計画」という)が導入された。この地区計画の目的は、建物更新の促進と住宅の誘導を通じて、バブル以降に減少した千代田区の定住人口を回復するとともに、個別の建て替えを促進して防災性の向上や土地の有効利用を図ることである。本研究の目的は、千代田区中神田中央地区という開発圧力が高い地区における地区計画の影響を、(1)地区の空間変容、(2)個別の建物更新の実態、(3)地区の社会環境の変容、という3つの切り口で明らかにすることである。本研究により、併用型地区計画の導入を境に集合住宅の建設が目に見えて増加し、従来の業務地一辺倒の市街地ではなくなってきている市街地の変容の実態を初めて定量的・定性的に捉えることができた。

  • 千葉県南房総市への転入者を対象としたアンケート調査より
    長岡 篤, 持木 克之, 籠 義樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 435-440
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    千葉県南房総市へ転入した住民を対象にしたアンケート調査を実施し、自ら望んで転入した住民とやむを得ず転入した住民との比較を通して、転入理由や転入前後の満足度・不満足度の変化、南房総市への定住意向の把握から、同市への評価を明らかにすることを目的とした。その結果、転入元は千葉県内が半数を占め、転入理由は仕事のためと家族のためとともに、千葉県以外からの転入では同市を好んで転入した住民が一定割合いた。転入前後の満足な点と不満・不便な点から、満足な点では自ら望んで転入した住民は、南房総市の地域性に関する項目が増えており、やむを得ず転入した住民は、不満・不便度が大きく上昇していた。満足な点と不満・不便な点から回答者を4グループに分類した結果、満足度が上昇した住民とともに、満足度不満足度の両方が上昇した住民、不満足度が上昇した住民がおり、年代が高いほど不満足度が上昇していた。南房総市に対する要望のテキストマイニング分析から、転入により満足度が上昇した住民は、空き家活用等による転入促進施策を求めており、不満足度が高い住民は、行政サービスの改善や生活利便施設の充実等を求めていることが明らかとなった。

  • 松下 佳広, 泉山 塁威, 小泉 秀樹
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 441-448
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は都市利便増進協定を活用している事例に着目してその代表事例を抽出し、公共空間のマネジメント状況の実態を整理し、行政と民間の公共空間マネジメントに対する認識の違いを整理することによって、都市利便増進協定を活用した公民連携による公共空間マネジメントの可能性と課題を明らかにすることを目的とした。研究の結果、採算性の高い施設を都市利便増進施設とすれば収益が得られる事業として成立する可能性が明らかとなった。また協定制度の趣旨を拡大解釈して適用したり、自治体の条例に基づく制度のなかで活用するなど、自治体や都市再生推進法人がやりたいことに応じて協定を柔軟に活用できる可能性が明らかとなった。一方で都市利便増進協定は民民協定や法人が行う事業と合わせることで成り立っているため、公共空間マネジメントの継続性が一つ目の課題となる。また行政と民間とでは、収益の使い道や事業を行うことで地域の価値を向上させること自体の評価に関する認識が異なることがわかった。この認識の不一致の要因となる、公共性の認識に対する隔たりが二つ目の課題である。

  • 大谷 直輝, 姥浦 道生, 苅谷 智大, 小地沢 将之
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 449-456
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的はCFにおけるハード整備に関する事業の実態を明らかにすることである。結果として、ハード整備CF事業は、2つの典型的事業類型によってその位置づけが異なるといえる。一つは営利団体が取り組む傾向のある、飲食店やシェアハウス・コワーキング整備を中心としたサービス収益事業であり、目標達成割合が比較的高く、基本的には民有地で行われているものの、社会的貢献性のあるフリースペースを有している事業が目標達成しやすく、情報発信も目的としており、金融機関からの融資と組み合わせて資金調達を行う傾向があった。もう一つは非営利団体が取り組む傾向のある、景観形成や歴史保全を中心とした都市環境整備・保全事業であり、目標達成割合が比較的低く、不足する事業資金を獲得するための手段としてCFを活用している傾向があった。CFは、既存の助成制度でも対象となる公益的事業に対する上乗せ的資金調達制度として一定の役割を果たしつつも、その中心は対象とならなかった収益性ある事業に対する横出し的資金調達制度としての機能であるといえる。このような性質を考慮しつつ、まちづくり活動に対する資金調達制度全体を設計することが重要である。

  • 住環境指標の視点から
    野中 健志郎, 猪八重 拓郎
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 457-463
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究の目的は,住環境評価の視点から判別分析を用いて居住誘導区域が設定された場所の要件を明らかにすることにある.はじめに,線引き都市を対象に居住誘導区域の設定状況を市街化区域の人口密度と居住誘導区域に対する市街化区域の縮小率を用いて分析し,クラスター分析により6つのtypeに分類した.その上で,そのtypeを基に代表都市として土浦市,鶴岡市,箕面市,熊本市を選出した.さらに,住環境評価の視点から居住誘導区域の設定の有無を識別するための判別モデルを構築した.最後に,構築した判別モデルを縮小率の異なる他都市に適用した.結果として,判別モデルにより縮小率の高低を住環境指標の観点から一定程度説明することができた.

  • 1986年度から2017年度までの京都市電線類地中化実績データに基づいた分位点回帰分析
    大庭 哲治
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 464-471
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,距離帯と価格帯の異質性を考慮して無電柱化事業が地価に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,京都市と連携して電線類地中化実績データを独自に整備した上で,3つの計量分析モデルで地価関数を推定した.その結果,無電柱化事業の限界効果とその特性について,平均値の価格帯のみならず,各分位点の価格帯においても明らかにした.特に,無電柱化事業の限界効果は,概ね距離減衰の傾向にある点や,無電柱化事業の実施路線から0-50mの距離帯では,地価の低価格帯よりも高価格帯で無電柱化事業の限界効果は大きく,また,その場合,完了済路線よりも抜柱済路線のほうが,38.7ポイントも限界効果が大きい点を明らかにした.

  • 長野県松本市を対象として
    丸岡 陽, 中出 文平
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 472-478
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は長野県松本市を対象に、市街化区域をDIDの形成時期によって分解した上で、8種類の生活施設に対する徒歩及び公共交通でのアクセシビリティを領域間で比較することにより、自家用車に頼らない生活環境の実現に資する市街地構造のあり方を検討することを目的とする。徒歩だけの場合と、公共交通を加えた場合の二段階の分析の結果、以下の知見を得た。(1)昭和45年DIDは多くの生活施設や公共交通乗り場に徒歩でアクセスしやすい領域であること。(2)公共交通は平成27年DID縁辺部や飛び市街化区域でのアクセシビリティの改善だけでなく、昭和45年DIDのように徒歩のアクセシビリティが高い地域でも一定時間内にアクセスできる施設の選択肢を増加させるという役割を持つこと。

  • 松井 稔, 出口 近士
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 479-485
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    1980年代より日本の土地区画整理手法の開発途上国への制度構築支援が行われている。土地区画整理は換地と保留地による開発利益還元の特徴を有する市街地整備手法である。また、近年、土地区画整理に類似する権利変換と開発利益還元の特徴を有する市街地再開発やマンション建替えの事業手法も、急速な都市化の進行する他国での都市問題解決のツールとして期待が寄せられている。2007年にモンゴル国政府はこれら3つの事業手法を含む不動産権利変換型開発手法の導入検討を開始した。そして、日本の制度構築支援により、2015年に都市再開発法が制定された。本研究では、モンゴル国の不動産権利変換型開発の制度の特徴を明らかにするとともに、今後の他の開発途上国において不動産権利変換型開発制度を構築する際の課題について考察する。

  • エネルギーシミュレーションによるエネルギー性能評価
    北川 友葵, Gondokusuma Monica I. C., 下田 吉之
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 486-492
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、戸建て住宅を中心とする新規住宅街区において、スマートコミュニティ開発が注目を集めている。スマートコミュニティでは、エネルギー面における特徴として、低炭素化や災害時のライフライン確保等を目的とした高いエネルギー性能を有する開発が行われることから、スマートコミュニティにおけるエネルギー性能と、街区を構成する多様な要素との関係を定量的に示すことで、スマートコミュニティのエネルギー性能に関係する街区計画面の課題の明確化を試みた。研究手法としては、著者らが開発した住宅用エネルギー最終需要モデルを街区規模に適用し、仮想的なスマートコミュニティ内において様々な条件でエネルギー需要を再現することによってエネルギー性能の定量化を行った。推計の結果、対象街区ではPVの大容量化と住宅方位の変更でマイナスカーボン街区を形成できることや、同じ仕様の住宅でも居住者の属性によってもエネルギー性能が変化すること、都市の省エネルギー化のためには多人数世帯のスマートコミュニティへの誘致が有効であることが示された。

  • 東京都大田区に着目して
    木村 奎太, 村木 美貴
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 493-499
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、地球温暖化の進行を背景に、CO2排出量の大幅な削減に向けたゼロエネルギーハウス(ZEH)等が求められている。ZEHは、再生可能エネルギーを活用しているため、停電等の災害時においてもエネルギー供給が可能となります。しかし、余剰電力が生じる住宅が存在するものの、電力系統の制約等から売電には限界があります。そこで、街区単位での余剰電力の電力融通が求められているものの、その具体的なあり方を明らかでない。本研究の目的は、東京都大田区を対象に、環境性・防災性の観点から、持続可能な都市の実現に向けたZEHを中心とした街区整備のあり方を明らかにすることである。その結果、ZEH街区は、二酸化炭素排出量の大幅な削減や非常時の生活機能維持に有効であることが明らかとなった。

  • 群馬県における事例研究
    下山 悠, 森本 瑛士, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 500-507
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    現在、人口減少に対応して施設等を集約した拠点の形成が目指されている。それらは地方分権により市町村が主体となり取り組まれているが、今後更なる施設撤退に伴い、市町村域を超える拠点間連携が必要になると考えられる。しかし、都市部から中山間地域までの広域的な拠点の階層性について着目されていない。本論説では今後の市町村間連携に向け、広域的観点から市町村計画(以下、計画)の拠点設定と施設立地の実態の乖離を明らかにし、広域を考慮した拠点設定に寄与することを目的とした。分析の結果、1)計画で設定されるが実態から抽出されない拠点が存在すること、2)計画と実態で階層が異なる拠点が存在すること、が明らかになった。以上より、拠点の計画と実態の間で空間的および階層的な乖離が生じており、広域的観点からの拠点設定の重要性が示唆された。

  • 都市機能誘導区域のあり方を考える
    岡野 圭吾, 小松﨑 諒子, 片山 茜, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 508-515
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    人口減少が進行する我が国において,目指すべき都市構造としてコンパクトシティが提唱されて久しい.立地適正化計画制度が創設され5年となり,多くの都市で計画が策定されコンパクトシティ政策が具体化しつつある.一方で,立地適正化計画の上位計画である都市マスでの過剰な拠点設定や,従来都市マスで設定されていた拠点と立地適正化計画で設定された都市機能誘導区域との乖離が生じており,適切な拠点設定が求められる.本研究では,拠点に立地している施設の変化と,都市マスから立適にかけての拠点の位置づけの変化を併せて把握することで,今後の拠点計画の参考情報を提供することを目的とする.分析の結果,福祉施設等の一部を除き大半の業種で拠点に立地している施設の数,割合ともに減少している現状が明らかとなった.また,都市マスで設定されていなかった立地適正化計画の拠点では,立地している施設が少ないといった状況が示された.

  • 誘導区域の類型区分と独自区域の活用に着目して
    尹 莊植, 山口 邦雄, 小島 寛之
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 516-523
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、立地適正化計画と都市計画の二層的な関係に注目し、既存都市計画上における居住・都市機能誘導区域の設定動向と独自区域の活用実態を明らかにすることを目的とする。調査結果から、線引き・非線引き都市によって誘導区域の設定可能エリアが異なるものの、いずれも用途地域を基本に誘導区域の設定を行っていること、居住誘導区域の設定では地域の特性(人口・公共交通・都市機能など)を踏まえた集約と、公共交通沿線を中心とした戦略的な集約が確認できた。また、都市機能誘導区域の設定には、誘導施設の設定範囲(高次機能・生活サービス機能)によって区域の範囲又は区域数が限定されることが確認できた。さらに、独自区域の設定では、居住誘導区域外の市街化区域内(用途地域内)の居住地を位置付けるものと、都市機能誘導区域に設定しない又はできない都市MP上の既存拠点を位置付けるものの傾向を明らかにした。

  • 浅野 純一郎, 河野 壱玖
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 524-531
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は中心市街地活性化基本計画と都市機能誘導区域指定との関係性を明らかにすることによって、地方都市の集約化を見越した将来の都心拠点強化手法の示唆を得ることを目的とする。両計画を策定する21地方都市を対象とした悉皆調査により、中心市街地活性化計画による活性化手法が主に4分類できること、都市機能誘導区域指定による拠点形成手法も主に4分類できることを実証した上で、両者の関係性を分析した。ここで先行していた中心市街地活性化基本計画と後発の都市機能誘導区域との連続性に着目することで、両者の関係性を、A.中活計画連続型、B.中活計画補足型、C.中心市街地二重型、D.中活計画転換型、E.中活計画・立地適正化計画分離型の5つに整理し、今後の可能性と課題を明らかにした。

  • 市街化区域に対する居住誘導区域の面積比率が対象的な自治体の比較を通じて
    西井 成志, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 532-538
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、居住誘導の考え方や背景を明らかにしたうえで、市街化区域に対する居住誘導区域の面積比率が対照的な自治体における居住誘導区域の特徴の差異について考察することを目的とする。研究に当たっては、これら市街化区域に対する居住誘導区域の面積比率が対象的な自治体の立地適正化計画を参照し、どのような考え方や区域設定条件で居住誘導区域が設定されているかの調査を行った。分析により、市街化区域に対する居住誘導区域の面積比は自治体によって大きく異なり、自治体によって様々な居住誘導の考え方や区域設定条件が用いられていることが分かった。また、居住誘導区域を狭く設定した自治体は、居住誘導区域内の人口を増加させることを目指していた。一方で、居住誘導区域を広く設定した自治体は、今後人口が維持される範囲を居住誘導区域として設定していた。

  • 拠点の維持に向けた基礎的検討
    森本 瑛士, 高橋 諒, 谷口 守
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 539-546
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    都市サービス施設を集約した拠点の形成が目指されている.しかし地方都市では人口減少が著しく,拠点においても施設撤退が危惧される.施設撤退は人口減少だけが要因とは限らず,郊外の大型商業施設など様々な要因があり,要因ごとに拠点の維持に向けた方策は異なる.しかし拠点の施設減少度合やその要因は明らかになっていない.そこで本研究では施設増減から拠点を簡易的に診断し,人口減少や郊外流出,他拠点流出の観点から拠点の施設減少の要因を分析する.これらを通じて,拠点ごとの維持に向けて拠点設定の見直しも視野に入れた方策の参考情報を得ることを目的とする.分析の結果,1)拠点や後背圏の人口が増加している拠点は施設数が維持・増加傾向にあること,2)拠点類型別に人口減少や他拠点への流出などの施設撤退要因が異なること,が明らかになった.

  • 南部大阪都市計画区域を事例として
    渡邉 洸輝, 佐久間 康富
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 547-554
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    準工業地域は様々な土地利用が可能であるため、様々な土地利用タイプがみられ、その土地利用は各市町村の準工業地域の指定状況や他制度活用によって異なると考えられる。そこで、本稿では、南部大阪都市計画区域を対象として、指定状況と他制度活用の関係から準工業地域の土地利用の特徴を明らかにした。結果、準工業地域の土地利用の特徴は指定状況によって大きく2つに分けられることがわかった。1つは、指定状況が「以前から準工業地域に指定されている」や「様々な土地利用が行われている状況に合わせて指定されている」地区で、混合系、住居系の土地利用が多く、特別用途地区の制度が多く活用されていて、土地利用の誘導はあまりみられない。もう1つは、指定理由が「特定の土地利用を許容・促す」地区で、公共系、工業系、商業系の土地利用が多く、土地利用の誘導が見られる。

  • 臼井 小春, 大沢 昌玄, 中村 英夫
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 555-561
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    急激な都市部への人口流入・増加に対応するため、郊外部において新たな新市街地の開発が行われた。その開発から40~50年経過し、社会経済状況の変化に伴い、事業完了時の土地利用計画から変化が生じている状況が見受けられる。具体には、人口減少に伴い小学校などの教育施設が廃校され他の用途に転換されている状況や、集合住宅用地から戸建住宅用地へ転換されているが、その実態は明らかとなっていない。立地していた施設の役割が終えた後、土地利用転換が行われ新たな施設が立地することは、都市の新陳代謝が行われていることの証左であり、都市の持続性を考える上でも土地利用転換は重要である。そこで本研究は、土地区画整理事業における郊外住宅開発地の事業完了後、社会経済状況の変化に伴い事業完了時に設定していた土地利用計画に変化が生じ土地利用転換が行われていたのか実態を解明することを目的とする。研究対象とした首都圏における郊外部住宅開発地区のうち、事業完了後の土地利用転換率は、小学校用地が18%、中学校用地が14%であり、幼稚園用地は57%と小学校・中学校を大きく上回っていた。計画住宅用地では、23%が土地利用転換されていた。

  • 大阪府南部地域を事例として
    小嶋 一樹, 松本 邦彦, 澤木 昌典
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 562-568
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、地上設置型太陽光パネル(以下、地上ソーラーとする)の市街化調整区域および農地への設置が進行している。本研究では市街化調整区域における地上ソーラーの立地実態を明らかにすることを目的に、大阪府南部地域を対象に地上ソーラーの仕様や農地転用の発生状況に着目して立地場所の立地特性を分析した。その結果、地上ソーラーの発電出力規模が大きくなるにつれて、土地条件および立地条件のより劣る傾斜地や交通利便性の低い土地に立地が進行し、発電出力400kW以上の地上ソーラーの立地場所は、他用途の開発行為の発生場所よりも土地条件および立地条件が劣る傾向がみられた。そのため、400kW以上の地上ソーラーを環境影響評価条例における対象行為に追加することが立地規制・誘導策の1つとして挙げられる。また、農地転用許可を伴った地上ソーラーは、連担する複数の農地内の土地形状が歪な農地に孤立して設置される傾向がみられたため、土地の賃借等による農地の流動化の促進や、営農型太陽光発電設置の促進により、形質や機能を変えずに農地としての連担性を確保するなどの対策が必要と考えられる。

  • 熊本市健軍エリアを対象として
    鄭 一止, 辻原 万規彦
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 569-576
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    郊外に立地する社宅街の場合、当企業が撤退すると同時に衰退するか、または住宅地として変容するのが一般的であり、これらを例にした関連研究は多く行われている。一方、熊本市健軍エリアにつくられた三菱重工業熊本航空機製作所の社宅街は、戦後すぐとも寮の跡地に店舗が立ち並ぶなど、店舗が集積する大きな商店街として成長した。工場の跡地には陸上自衛隊が駐屯し、近くに県庁も移転し、新しい需要も生まれたこともあり、1960年代から70年代にかけて商店街はピークとして繁盛した。本論文は、社宅街の形成史をまとめるとともに既存の都市基盤施設をもとに、健軍エリアが熊本市東部の中心地としてどのように成長したのかについて、土地利用の変遷に着目し、以下の点で明らかにした。 (1) 近代都市計画的な要素が多く反映された熊航と社宅街のまちづくり史をまとめた。(2) 戦時中に建設された都市基盤施設との関連に着目して、健軍エリアの戦後の変容過程をまとめた。(3) 戦後の社宅街を対象に、建物用途と街区の変遷を詳細に分析した。

  • 住宅金融公庫からみる戦後のマーケットの変遷
    澁谷 和典, 三島 幸子, 細田 智久, 中野 茂夫
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 577-584
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    この研究の目的は、住宅金融公庫の一番初めに融資された住宅として地域に与えた影響を明らかにすることである。岡ビルの建設経緯と建築的特徴の研究を通して、公庫住宅の建築史的研究の原点が明らかになった。さらに、岡ビルには当時のプランに順応している現代の人の生活や店舗と住戸の関係といった多様でフレキシブルな生活がある。そして、この研究は老朽化し、顕著に空家になっている大量の共同住宅を維持・継承することに有用な発見である。

  • 五島 寧
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 585-592
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    外地における都市計画・建築物法令の一体化について,飯沼一省の『地方計画論』の影響を受け,再評価されるべき利点を持つ,とする見解がある。本研究は法令一体化に対する『地方計画論』の影響と利点について考察した。都市計画法令と建築法令の単純な一体化は,『地方計画論』の主張には反する制度化であった。外地法令における建築許可制度の権能は内地法のそれを越えておらず、台湾における用途地域は日本本土と同様に建築法令の権能によって運営された。既存研究に於いて指摘された都市計画法令と建築法令の一体化の利点は,適用の便利さを除いて棄却された。

  • 原 洪太
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 593-599
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    1967年から1970年にかけて一楽照雄によって5編の論考として発表された農家による住宅供給を意図する農住都市構想はその後いくつかの施策として結実する。本稿では、中でも農住都市構想の概念をよく取り入れた農林省による農村住宅団地建設計画、およびその下で策定された柿生地域農村住宅団地建設基本構想を取り上げる。そして一楽照雄が提唱した農住都市構想の内容を整理し、比較可能な枠組みを作ったうえで、その構想と農林省の助成事業である農村住宅団地建設計画との関係性を、施策理念およびその実践としての具体地域での計画内容という二つの視点から見る。両者が共に農住都市構想の概念を色濃く反映する中でも、農住都市構想の要素のうち、助成事業段階では反映しきれていなかった部分まで反映する計画を立案していた地域が存在していた。

  • ハンセン病施設の保存に着目して
    筈谷 友紀子, 阿部 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 600-606
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    近年、歴史的資産を巡る評価基準は多様化しており、震災遺構や戦争遺跡などの負の遺産が、記憶の継承を目的に保存されつつある。本研究では悲劇の遺産であるハンセン病施設(重監房・十坪住宅・菊池医療刑務支所)の保存の議論を追うことで、空間の残存程度が悲劇の記憶の継承メカニズムにどのような影響を与えるのか考察した。その結果、①空間の保存をめぐる議論こそが記憶の継承のメカニズムを大きく左右する要因であること②記憶の継承においては、「空間の残存程度」と「議論による価値の共有」がそれぞれ相関関係にあることがわかった。ハンセン病施設においては、空間の保存をめぐる議論の中で、記憶を継承する素地が整えられてきたことが確認できた。

  • 神田・馬喰町駅周辺を舞台とするCentral East Tokyo(CET)プロジェクトの事例分析
    中島 弘貴, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 607-614
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、複数の社会的企業による小規模事業を通じた既成市街地再生の実態把握・評価を行うものである。神田駅・馬喰町駅周辺を舞台とする"Central East Tokyo"プロジェクトの事例分析を通して、建物の暫定利用・改修・転用や空地の利活用といった小規模事業による既成市街地再生の過程を明らかにするとともに、コレクティブ・インパクトの枠組みを用いて社会的企業を中心とした協働プラットフォームによる取組みの市街地再生への貢献を評価した。社会的企業は協働のプラットフォームや対象エリアを局面に応じて変えることで、既存の行政区にとらわれない市街地再生への貢献を実現し、その結果地域組織が主体的にエリアマネジメントを行うようになった。その過程では段階が変わるとその前の段階とは真逆の進め方を選択する必要性が生じる事柄もあり、事業進捗をモニタリングし、その段階を適切に把握する手段・方法が必要だという示唆を得た。

  • 富山市中心市街地と富山地域を事例として
    伊藤 香織
    原稿種別: 研究論文
    2019 年 54 巻 3 号 p. 615-622
    発行日: 2019/10/25
    公開日: 2019/11/06
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,海外研究の文献調査と富山市を事例とした調査分析によって,何がシビックプライドの源泉になり得るかを求め,特にシビックプライドの源泉としての都市環境の性質を捉えるために,シビックプライドの源泉とシビックプライドの各側面との関係を明らかにした.本研究の方法と得られた主な知見は以下の通りである.(1) 海外研究の文献調査から,都市環境,文化,スポーツなどがシビックプライドの源泉と捉えられており,自然環境はシビックプライドの源泉と捉えられていないことがわかった.(2) 富山の調査から,自然や食に対して「市民として誇りに思う」度合いが高いことがわかった.(3) 調査結果の因子分析により,富山におけるシビックプライドの源泉は「都市環境」「食・自然」「文化・産業」「交通」の4つの因子から成ることがわかった.共分散構造分析により,「都市環境」と「文化・産業」は「アイデンティティ」「愛着」を高ること,シビックプライドの源泉としての「食・自然」は「愛着」「持続願望」を高める反面「参画」を低めることがわかった.

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