電気は現代都市の人々にとって必要不可欠なエネルギーである。これまで電気事業の成立や技術的進展に関する研究は多く存在していたが、電気を使用する需要者の視点と実際に電気を消費する都市や建築の視点から検討した研究は稀であった。本研究はそのような問題意識を背景に、明治中期、我が国最初の電気事業者である東京電燈会社が東京市内において行なっていた電気供給と配電網、そしてその顧客であった需要者について、東京電燈会社の営業に関する文書史料を中心に復元・分析を行いその実態について明らかにしたものである。東京市内における電気供給には大口の需要者が市内各所に存在し、電気を要求する用途や機能も多岐にわたっていたことを明らかにし、そしてそれらの需要が配電網建設の要因となっていたことを示した。