現代中国にとって、近代に建てられた旧租界地区での歴史的建造物は、重要な歴史遺産であり、その多くは現在でも各都市によって保護されている。しかし、近年の経済発展に伴い、歴史的建造物の保護と都市再開発の圧力は相互に拮抗している現状があり、旧租界地区においてもその例外ではない。それら齟齬の要因の一つとして、中国の歴史的建造物の保護制度そのものに課題が内在すると考えた。
本稿では、租界のうち規模が大きく、保護条例の構成や内容が近似する上海市と武漢市を事例とし、中国における歴史的建造物の保護制度、ならびに両市が制定した保護条例を対比的に整理し、両市が保護する旧租界地区での歴史的建造物の保護状況を調査した。具体的には、「増築」、「改築」、「後付設備」、「保護標識未設置」等の外観調査から保護状況の実態を把握し、現行する保護制度と照合させることで、それら制度にある課題を明らかにした。