都市計画論文集
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55 巻, 2 号
都市計画論文集
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 錦二丁目長者町まちづくりの事例分析
    中島 弘貴, 森田 紘圭, 名畑 恵, 真鍋 陸太郎, 村山 顕人
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、地域組織や社会的企業による任意のものも含む構想・計画とその実現手段である規制・誘導・事業という地域の制度的環境が創発する小規模事業を通じて既成市街地の再生の実態把握を行うものである。名古屋市中区錦二丁目を舞台とする”長者町まちづくり”プロジェクトの事例分析を通して、不動産・公共空間の暫定活用、改修・転用といった小規模事業と市街地再開発事業という大規模な面的開発の連携した既成市街地再生の過程を明らかにするとともに、その過程で制度的環境を通じて地域の共通の方向性を有したままテーマの異なる様々な小規模事業が展開されるエリアブランディングの仕組みが構築されたことを示した。そして、小規模事業と行政計画・事業のどちらが先行するかによって、地域の制度的環境の果たす役割が異なるという示唆を得た。

  • 上海市と武漢市での現地調査を通して
    喬 文琪, 竹内 泰, 金 承協
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 94-101
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    現代中国にとって、近代に建てられた旧租界地区での歴史的建造物は、重要な歴史遺産であり、その多くは現在でも各都市によって保護されている。しかし、近年の経済発展に伴い、歴史的建造物の保護と都市再開発の圧力は相互に拮抗している現状があり、旧租界地区においてもその例外ではない。それら齟齬の要因の一つとして、中国の歴史的建造物の保護制度そのものに課題が内在すると考えた。

    本稿では、租界のうち規模が大きく、保護条例の構成や内容が近似する上海市と武漢市を事例とし、中国における歴史的建造物の保護制度、ならびに両市が制定した保護条例を対比的に整理し、両市が保護する旧租界地区での歴史的建造物の保護状況を調査した。具体的には、「増築」、「改築」、「後付設備」、「保護標識未設置」等の外観調査から保護状況の実態を把握し、現行する保護制度と照合させることで、それら制度にある課題を明らかにした。

  • 定住自立圏構想を対象として
    瀬田 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 102-114
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、都市構造の誘導における広域連携の実態について、現在の日本の最も中心的な広域連携施策の1つである定住自立圏構想を対象に検証することによって、広域連携の可能性や制度の改善の方向性について考察した。まず定住自立圏構想の制度の枠組みを詳細に分析して広域連携施策としての性質を把握し、次に独自に検討した検証方法にしたがって、都市構造の誘導における定住自立圏構想による広域連携の実態を調査し分析した。結論として、国が定住自立圏構想という制度で都市構造の誘導における広域連携を促すことは、総じて極めて難しいと結論付けられた。他方で、少ない数ではあったが、公共施設再編などの分野で都市構造の誘導における広域連携を企図する自治体があった。

  • 松中 亮治, 大庭 哲治, 住川 俊多
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 115-125
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究では,時々刻々の車両の移動や駐車と,道路状況の変化を表現する都市内交通シミュレーションを構築し,共有型完全自動運転車両(SAV)の導入により生じる都市全体の社会的便益を算出した.また,駐車場立地や都市の人口規模についてのシナリオ分析を行い,これらの変化が社会的便益に及ぼす影響を分析した.ここでSAVとは,オンデマンドで呼び出し,目的地まで移動することができる自動運転車両である.

    人口30万人の仮想都市を対象に,自家用車での移動が全てSAV利用に転換するという仮定の下シミュレーションを行ったところ,1日に都市全体で2500万円の便益が生じ,必要な車両台数は現在と比較して84%削減,必要な駐車場の面積は71%削減されるという結果となった.また,シナリオ分析の結果からは,駐車場立地は社会的便益に明確な影響を及ぼさないこと,人口規模が小さい都市ほど社会的費用の削減率が高く,SAVの導入がより効果的であることが示唆された.

  • 浅野 純一郎, 木村 巧
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 126-136
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、非線引き都市における立適計画の内容を精査し、特に人口密度維持の観点から居住誘導区域指定の特性と目標人口密度設定との関係を明らかにすることを目的とし、非線引き都市のコンパクトのとらえ方を検証するものである。2018年5月1日時点で立地適正化計画の両誘導区域を指定していた非線引き都市42市中、独自アンケート調査に回答のあった33市を対象にした調査から、・非線引き都市の特徴には用途内人口率と用途内人口密度の低さがあること、・非線引き都市各自治体の担当部局の認識では、立適計画の策定意図は市街地のコンパクト化よりも事業補助を求める傾向が強いこと、・立適計画の策定に際し、居住誘導区域指定に効果的な人口密度要件を考慮している事例は3分の1程度に留まること、・人口密度維持の観点からみた居住誘導区域指定パターンには、高密度区域限定型、必要市街地範囲設定型、市街地構造再設定型、独自の土地利用基本計画準拠型が見られること等を明らかにした。

  • 1993 年大統領令の規定内容と運用実態の分析
    石本 東生, 岡村 祐, 江口 久美
    原稿種別: 論説・報告
    2020 年 55 巻 2 号 p. 137-146
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    エーゲ海南部のサントリーニ島・イア地区を対象とした伝統的集落法「1993年大統領令」は、都市計画・建築規制はもとより、店舗やホテル等の屋外広告物、陳列台の配置、公共空間の占用、営業ルール等に対する厳しい規定項目をも明記した国内でも特殊な法令と位置付けられる。本研究では、本令制定に至る歴史的経緯・背景や、規定内容の項目や手続き等の制度的枠組みを解明し、さらにその運用実態を確認するため、現地調査を実施して考察を行った。その結果、本令が、イア地区の伝統的集落保全のみならず、景観や環境に配慮した上質な観光地形成に対しても、重要な役割を果たしていることが明らかとなった。加えて、町並み保全のコンテクストのなかで、本令により、観光事業にかかわる主体や行為を特定し、規制強化もしくは規制緩和によって、観光振興と町並み保全の両立を目指すという方法は、我が国の観光地としての町並み保全に対しても示唆に富むものであろう。

  • 日向市駅前広場で活動するイベント団体を対象として
    吉武 哲信, 瀬内 月菜, 寺町 賢一
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 147-156
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、中心市街地活性化の一翼を担うイベントが継続される要件を明らかにすることを目的として、宮崎県日向市駅前広場でイベントを開催する団体の相互関係、団体および人材の育成、団体と公的機関の関係を関係者へのアンケート調査により分析した。この結果、1)団体間・構成員間のネットワークは経年的に拡大・強化し、伝統的イベントを主催する団体がその要となっている、2)団体員獲得は勧誘・紹介等の人の繋がりが主である、3)イベント継続に関するモチベーションは、自分、使命感、子供、仲間の4種がある、4)公的機関の多様な支援は市民から評価されていること等が示された。その上で、行政が貢献しうることとして、助成や助言等の他、職員の態度や意欲が重要であること、人材育成にはインフラ整備への市民参加、人材育成講座の内容や手法等が重要であること、市民参加や人材育成事業はキーパーソンのネットワーク化の点で重要であることが示唆された。

  • 西村 愛, 瀬田 史彦
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、フランスにおける環境配慮地区の発展の経緯と特徴を明らかにすることを目的として、欧州的文脈とフランスの国内事情を背景とした展開について分析を行う。欧州における環境配慮地区は、北欧での環境技術先導型の地区整備を起源としながら持続可能な都市政策のもとで発展し、フランスにおける環境配慮地区の出現を促した。フランスでは、社会統合や地域連帯等の地域課題への対応策として地区整備の重要性が増し、環境配慮の実践もそれに統合されていった。そして、フランス政府は環境配慮地区の推進にあたり、地域に対して多様な支援措置を講じ、地域レベルで継続的に環境配慮の取組みが行われるよう推進していた。本研究は、フランスにおける環境配慮地区が地域特性と社会経済的側面の考慮を重視していることを明らかにした。

  • 会津若松市七日町通り商店街を事例として
    横塚 有貴, 川﨑 興太
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、会津若松市に位置する七日町通り商店街を対象として、来街者アンケート調査の結果に基づき、これまでの歴史を活かした景観づくりと景観形成制度の有効性と限界性について考察するとともに、今後の課題を提起することを目的とする。本研究を通じて、来街者は景観形成制度が適用された建築物等が中心となって創出している歴史的な景観を高く評価しており、景観形成制度は有効だったことが明らかになった。その一方で、来街者は、景観形成制度が対象とすることは不可能または困難な土地・建物用途に関して、景観的に悪いと評価しており、ここに七日町通り商店街における景観づくりを進める上で活用してきた景観形成制度の限界性があることが明らかになった。こうしたことを踏まえて、本研究では、土地利用・建築物の用途に関する制限の導入と、非建ぺい地における修景事業や土地利用転換事業の導入が必要であることを指摘している。

  • 河井 智弘, 福田 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の情報通信技術の発達やテレワーク制度の普及等により,労働者自身が就業場所を選択できるようになってきた.そこで,郊外に大規模サテライトオフィスのような職場環境を設置することで,鉄道混雑の激しい都心を避けて通勤する働き方を提供できる可能性や,それに伴う生活の質の向上が期待される.本研究では,首都圏鉄道通勤者を対象に,こうした都市政策によって起こり得る人々の生活行動パターンの変化について分析した.その際に,テレワーク利用意向に関する大規模アンケート調査を実施して列車混雑や通勤時間などの観点から利用意向の程度を明らかにした上で,勤務場所選択を考慮したActivity-based生活行動モデルシステムを構築した.

  • 行政界データを用いた動物形状の構成を事例として
    小貝 洸希, 田中 健一
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 55 巻 2 号 p. 182-190
    発行日: 2020/10/25
    公開日: 2020/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    隣接関係をもつ多角形の集合を所与とし,それに含まれる複数の隣接した多角形を組み合わせて入力形状(ターゲット)に類似した形状を構成する問題を考える.「隣接関係をもつ多角形の集合」の身近な例として,日本における都道府県が挙げられる.一つの都道府県を身近な対象に見立てたマスコットや,動物や乗り物などと関連付けて覚えるための教材などは数多く存在する.一方本稿のように,複数の都道府県を組み合わせて人間にとって意味のある形状を構成する問題は十分に研究されていない.この問題を,形状構成問題として数理最適化の視点から捉え,発見的解法を提案する.都道府県データを用いた動物形状の構成を事例とした数値実験から,提案解法の有効性が確認された.本研究の成果は,幼児が地理の学習をする際の学習効果を高めるための教材や,大人が趣味で結果を競い合うパズルのように,幅広い応用が考えられる.

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