本研究では,時々刻々の車両の移動や駐車と,道路状況の変化を表現する都市内交通シミュレーションを構築し,共有型完全自動運転車両(SAV)の導入により生じる都市全体の社会的便益を算出した.また,駐車場立地や都市の人口規模についてのシナリオ分析を行い,これらの変化が社会的便益に及ぼす影響を分析した.ここでSAVとは,オンデマンドで呼び出し,目的地まで移動することができる自動運転車両である.
人口30万人の仮想都市を対象に,自家用車での移動が全てSAV利用に転換するという仮定の下シミュレーションを行ったところ,1日に都市全体で2500万円の便益が生じ,必要な車両台数は現在と比較して84%削減,必要な駐車場の面積は71%削減されるという結果となった.また,シナリオ分析の結果からは,駐車場立地は社会的便益に明確な影響を及ぼさないこと,人口規模が小さい都市ほど社会的費用の削減率が高く,SAVの導入がより効果的であることが示唆された.
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