都市計画論文集
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防災街区整備地区計画が策定された密集市街地における規制緩和による建替え促進の効果
田部 友彦松本 邦彦澤木 昌典
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2020 年 55 巻 3 号 p. 1021-1026

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抄録

本研究は、容積率や斜線高さ制限の緩和を伴う防災街区整備地区計画が策定された地区において、規制緩和が適用された建築物及び敷地の空間特性、壁面後退及び壁面後退区域への設置制限による防災上の課題、防街地区計画及び規制緩和による建替えへの影響を明らかにすることで、密集市街地整備にあたっての防街地区計画の効果と課題を明らかにすることを目的とする。規制緩和が適用された建築物の空間的特性は、敷地面積が小さい、前面道路種が二項道路でその幅員が4ⅿ以下でセットバックが必要であるなど、建替えには悪条件である敷地において規制緩和の適用を受け建替えが行われていることが明らかになった。設置制限は約半数で遵守されておらず、鉢植えなど住民が設置したものだけでなく、表札用門柱など施工時から設置されているものもある。また、規制緩和を建替え理由として挙げている人はおらず、規制緩和は建替えには直接的には影響していない一方で、自宅への規制緩和の適用について居住者は認知していないが、施工主が規制緩和を利用して必要な延床面積を確保したり部屋数を増やすことで、居住者の要望を満たし建替えを促進している可能性が示唆された。

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