2022 年 57 巻 1 号 p. 65-75
今日の密集市街地整備は敷地ごとの点的更新が主である一方、それらの集積が地域全体に与える将来的な影響は不明瞭である。本研究では土地利用モデルを構築し、点的整備の集積が地域全体に与える影響の定量評価を試みた。具体的には、公表資料と実地調査から整備事業のスキームと地権者の意思決定構造をモデル化し、マルチエージェントシミュレーション(MAS)を用いて、20年後の対象地における防災性と住環境の変化について分析を行った。6つの異なる政策シナリオを実行した結果、現行政策では対象地の防災性改善には不十分であること、防災性が改善しても住環境が改善するとは限らないこと、空閑地・空き家の利活用が防災性・住環境両方の改善に有効であることが分かった。