都市計画論文集
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COVID-19パンデミックによる既存住宅取引量の傾向変化
東京圏における所有権移転登記データを用いた分析
鈴木 雅智武藤 祥郎
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2022 年 57 巻 2 号 p. 320-328

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抄録

本稿では、所有権移転登記データを用いて、COVID-19パンデミックによる既存住宅取引量の傾向変化を分析した。取引価格や市場滞留期間といった需給バランスの指標に比べ、住宅の取引件数は直接に住宅購入のボリュームを捉えることができる。東京圏では、2019年から2020年にかけての取引件数の変化には、それ以前と比べ次の傾向がみられた。①区分所有建物・一般建物ともに都心0-20km圏での取引件数の減少がみられ、さらに一般建物では20km以上の郊外部での取引の比重が高まった。②区分所有建物では駅徒歩分数が10分未満の住宅で、一般建物では15分未満の住宅で、取引件数が大きく減少した。③区分所有建物・一般建物ともに、延床面積が小さい住宅で取引件数が大きく減少した。④都心40-80km圏では、森林、海浜といった自然環境に近接する住宅で取引件数が増加する傾向がみられた。これらの新しい傾向は、COVID-19パンデミックによって中古住宅の売買に係る市場構造に少なからず変化が生じた可能性を示唆するものである。すなわち、都心の職場への通勤を前提に交通利便性を重視して住宅を選ぶのではなく、より快適性の高い、広い住宅や自然豊かな周辺環境を選ぼうとする傾向が生じつつあると考えられる。

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