都市計画論文集
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人の存在量と犯罪との関連
COVID-19緊急事態宣言を自然実験として活用した実証分析
山根 万由子雨宮 護大山 智也島田 貴仁
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 57 巻 3 号 p. 1498-1503

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抄録

人の存在量と犯罪との間の因果関係を明らかにすることは,データの限界と因果推論の困難さからこれまで困難とされてきた.これに対して本研究は,COVID-19緊急事態宣言を自然実験として用いることで,人の存在量と犯罪との間の因果関係を明らかにした.具体的には,粗暴犯,出店荒し,住宅侵入窃盗を対象に,固定効果モデルを用いたポアソン回帰分析と操作変数法を組み合わせたモデルで分析を行った.分析の結果,人の存在量が犯罪に及ぼす影響は,犯罪種別,および地区の土地利用パターンにより異なることが明らかになった.住宅地域では人の存在量の増加は,粗暴犯と出店荒し減らす一方で,住商混在地域の粗暴犯,出店荒し,住宅侵入窃盗,商業地域の粗暴犯においては,人の存在量の増加は犯罪を増やす効果を持っていた.また,昼の時間帯における人の存在量と,夜の時間帯における人の存在量とでは,犯罪に及ぼす影響の違いが確認されなかった.本研究は,操作変数法を用いて人の存在量と犯罪との間の因果関係を検討した点において新規性を持つものである.

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© (c) 日本都市計画学会
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