都市計画論文集
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岩手県A町の農業新規参入プロセスにみる就農支援の課題
岡本 夏佳三宅 諭
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 57 巻 3 号 p. 538-545

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抄録

農村部の主要産業である農業従事者の高齢化は著しく、遊休農地や耕作放棄地、空き家が増加している。一方で農業新規参入者の存在が注目されている。本研究では、岩手県A町の新規就農者の属性別の就農経緯を明らかにし、就農プロセスと現在の行政の就農支援の利用状況から求められる支援方策を明らかにすることを目的としている。本研究で得られた知見を以下に表す。1)地域内に親族など繋がりのある農業者がいると、農地を確保する際に自力で仲介者や農地提供者から農地を貸借または取得することが容易になる。2)農業をはじめる段階での独立就農意向の有無によって、情報収集、研修段階での公的機関利用の有無が変わってくる。また、20代は農業を始める段階では独立就農意向がなく、40代ははじめから独立就農を目指す傾向がある。3)野菜に比べて果樹は地域内での農地情報が充実しており、公的機関を介さなくても地域住民間で情報伝達されるため、農地確保までの期間が短い。また、行政の新規就農者受け入れ態勢の課題点も明らかになった。地域内に点在している農地情報を統括し、行政とも共有する仕組み作りが求められる。

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