2022 年 57 巻 3 号 p. 584-591
本研究は、伝統的建造物群の特性に関する専門的知見の蓄積と継承のための体制構築による修理・修景内容への影響について明らかとすることが目的である。分析では、三重県亀山市関宿伝統的建造物群保存地区における、1980年以降の伝統的建造物群の特性に関する蓄積と継承のための体制構築に着目した。専門職員採用以降の記録台帳作成と意匠提案、デザインワークショップ実施、建築士NPOとの連携、方針冊子作成など一連の取り組みの詳細を把握した上で、現地調査と行政資料から修理・修景前後の比較を行った。 分析結果として、蓄積と継承に向けた各取り組みは、修理・修景時の現場運用検討や修理・修景内容にも反映されており、伝統的建造物群の特性を踏まえた関宿のまちなみ形成に寄与していることが確認された。