都市計画論文集
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商業地域内の住環境保全を目的とした建築形態規制に関する研究
中野 卓
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2024 年 59 巻 3 号 p. 627-634

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抄録

近年、商業地域に集合住宅が多く立地するようになった。商業地域では建築形態規制の緩さに起因した建詰りにより、低質な住環境の集合住宅が増加する懸念がある一方、商業地域の住環境保全は現在まで地域の自主的取組みに委ねられてきた。本論は、こうした全国の取組事例の体系化と知見の共有化の必要を背景に、商業地域の住環境保全に係る付加的な形態規制の適用状況を整理し、その現状と課題について考察したものである。形態規制の手法として、本論では地区計画、高度地区、建築基準法第50条に基づく条例、建築協定の4つを対象に文献調査等を通じて網羅的整理を行った結果、以下の点を把握した。第一に、住環境保全を目的とした形態規制の導入事例は全国でも僅かで、その大半が指定容積率400%の商業地域だった。第二に、路線式・集団式の用途地域指定方式に拠らず形態規制の適用事例が確認されたが、広範囲の規制導入を実施できた箇所は、元々土地利用強度が低いと思われる地域に限定された。第三に、住環境保全に効果の期待される形態規制の手法として、適用例が多い順に、北側斜線制限、隣接敷地からの壁面後退、建ぺい率・容積率制限の強化の4つが本論で確認された。

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