日本土木史研究発表会論文集
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手結港の建設経緯と今後の整備に関する考察
山下 正貫島崎 武雄野倉 淳
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1983 年 3 巻 p. 83-91

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抄録

高知県夜須町にある手結港は、江戸時代初頭、承応1年 (1652) から明暦1年 (1655) に土佐藩の家老、野中兼山によって建設された掘込港湾である。経世家、野中兼山は、土佐藩の経済的基盤を整備し、殖産興業を進めるべく、土佐地域の総合的な開発事業に取り組み、物部川の山田堰、仁淀川の八田堰、鎌田堰等を設置して水路を開削し、新田開発を行なったり、その拠点として後免、土佐山田、野市、新川等の新都市を建設した。また、運河開削と一体となった津呂港、室津港等の築港事業も手掛け、陸路と連関した海上交通路の整備を進めてきた。手結港は、その一環として整備されたもので、その技術的意義、大規模性が高く評価され、しかも、特筆すべきこととして保存が良好であることが指摘される。江戸時代初頭の土木構造物が、ほぼ創建当初の状態で保存されていることは、全国でも稀有のことである。
小論では、江戸時代の建設の経緯、明治・大正・昭和期における港勢の変化と改修の経緯に関する調査結果を報告するとともに、現状の問題点、地域住民の意識と要望、今後の保存・利用・整備の方向について論及するものである。

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