抄録
天下の険として知られる親不知は、一般国道8号の新潟県西頸城郡青海町青海~ 同町市振間の総称である。ここを通る道は奈良時代、すでに令によって規定されていた古くからある道であり、江戸時代には、難所の一部区間を道普請として、開削工事を行っている記録があるものの、大部分は自然の海岸を通る道であった。
親不知の難所を、長区間にわたって改築する工事は、現在までに3回行われている。最初は明治15年~ 同16年の工事で、これにより、入力車の通行が可能になった。次は、昭和8年~ 同14年であり、幅員が5.5m~6.5mと狭いながら、自動車が通れる道として、青海・市振間がほぼ、全区間改良された。本格的な2車線道路としての改築は、昭和38年度に工事を開始し、同42年度に完成させている。
しかし、ここは、険しい地形と地質の悪さから、改築工事後も土砂崩壊、落石、波浪、冬期のなだれなどの災害との闘いが続いた。従って、昭和43年以降は防災工事を中心とした工事施工が継続して必要となり、対策として、洞門工法面保護工、海岸擁壁工を、道路の通行を確保する防災工として、施工してきている。
親不知のみち造りと維持管理は、わが国における道路建設史上、最も過酷な条件下での工事施工の一例であるといえよう。