日本土木史研究発表会論文集
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我が国で最初のマルチプルァーチダム豊稔池の建設
辻 幸和
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1986 年 6 巻 p. 42-47

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抄録
昭和5年3月に香川県三豊郡大野原町の山村に、約4年の工期、延べ15万人、約52万円の工費を費して竣工し、ずでに55年を経過した農業用かんがい用水ダムの豊稔池の建設について述べている。堤長が145m、堤高が30mと、現在では小規模なダムであるが、堰堤中央部87mの区間は、径間が9.7m、半径が6.7m、アーチの厚さが1.8~2.4mの5連のマルチプル欠円アーチと6体の梯形のピアで構成されていることに特徴がある。建設当時、土堰堤からコンクリート堰堤に移行するたけでも画期的な技術革新であった時代に、重力式ダムより理論的また施工面でも困難であったマルチプルアーチ型式を、我が国で最初に採用したダムである。また、各ピアには独特なサイフォン型式の余水吐を設置し、ダムの管理を無人化する設計も採り入れている。堰堤の築造には、当時用いられた粗石モルタルを採用し、表面部には型枠にも併用させた間知石を設置する工法を用いた。また、アーチ部の張出し部分には、施工が困難な間知石の代わりに、コンクリートブロックを積み上げていく工夫もされている。その外観は星霜を経るにしたがつて、ヨーロッパの古城を思わせる風格がでてきている。工費の負担、施工時の組織ならびに海砂の使用なと当時の施工方法等についても述べている。
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