日本土木史研究発表会論文集
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明治初期の河岸地に関する制度と利用状況について
東京・日本橋区を例として
住江 昌子
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1987 年 7 巻 p. 35-40

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抄録
都市における水辺の再生がいわれて久しい。都市の中の河川が利水や舟運機能を担っている時は、川と人の交流の中で水辺空間はおおむね良好な環境を保つが、排水機能のみに単一化されると、人と川の交流はなくなり、水辺の環境は注視されなくなる。東京においては、川や堀の湊としての機能を重視していた江戸幕府から、陸運重視の明治政府に移行すると、例えば東京市の基本財産として河岸地を下付し、東京市区改正事業の財源にあてるなど、水辺の空間は単なる資産として評価されるだけとなり、舟運の衰退とともに水辺の環境はかなりみられなくなったといわれる。
本稿は、こうした過渡期における水辺空間の利用の、実態と問題点と探ろうとするものである。今回はまず明治14~15年を中心に、河岸地の制度と利用状況について考察した。これにより、当初明治政府は、河岸地を防火対策上道路とする方針であったが、これを果たせなかったこと、河岸地は共同物揚場や土蔵地として利用する例が多いが、中には借用目的に反して居住したり、商売をしたりする場合も多いこと、少数ではあるが、河岸地を住民が植栽地として借用する例があること等がわかった。
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