土木史研究
Online ISSN : 1884-8141
Print ISSN : 0916-7293
ISSN-L : 0916-7293
鳥海山北面水系における象潟温水路灌漑整備に関する史的考察
伊藤 芳昭清水 浩志郎木村 一裕
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 10 巻 p. 223-230

詳細
抄録
出羽丘陵の一角にある鳥海霞は秋田、出形両県を南北に分断する標高2, 237mの活火山である。日本海側に突き出した岩肌は、天然の要崖として古来より人の往来を厳しく制限してきた。東に延びる尾根はそのまま人の歴史をも分断する分水嶺として、この地方の人々のくらしに深く関わり、その造営物に多大な影響を与えた。本論では、地形・地盤・土質を初めとする自然諸条件に規定される土木構造物や土木工事の特徴について鳥海山の北面に沿って流下する象潟温水路群を対象として考察する。温水路は「一般の用水路より幅を広く、水深を浅くし (50cm以下)、流水中に十分日照を与え昇温させるよう計画した水路で、昇温のため多数の落差工を施したり、または温水ため池と併用することもある」(『農学大辞典』) とされている。象潟温水路群のうち最初の長岡温水路は昭和の初期に完成し、その後30数年を経るうちに今日みられるような一大温水路群となった。土木構造物やその技術的発展は、地域のもっている歴史的な風土やその産業構造などによっても制約を受けるものと考えられ、本論では相互の関連性を把握することを目的として象潟温水路群を例に史的考察を行なう。
著者関連情報
© 社団法人 土木学会
前の記事 次の記事
feedback
Top