抄録
近年の河川改修では, 自然と融合, 更には創出することまでが目的に含まれるようになり, それを実現する工法として「多自然型河川工法」が模索的に考案されつつある, この工法は可能な限り自然を取入れた河川改修を行うためのものである.
近代以前の日本の河川工法は自然材料のみに頼らざるを得なかった. 最近では, この工法を「伝統的河川工法」と呼び, 「多自然型河川工法」への応用が試みられている, 本研究は, この動向の一助として, 近世の河川技術における自然材料, 特に植物について, その特性がどのように認識され, 利用されたのかについて調査したものである.
研究の結果, 近世の河川技術では種々の植物が利用されていたが, 大勢としては, 各工法ごとに適する植物がほぼ決まっていたことが分った. その他, 本研究に掲載した史料は, 今後, 「多自然型河川工法」での自然材料の選択や利用に際し, 有益な情報を提供すると考えられる.