抄録
鉄道林は、自然災害から線路を守り、列車の安全・安定運行を確保する目的で沿線に設置された樹林帯である。最初の鉄道林は、東京帝国大学の本多静六教授の提案により、明治26年 (1893) に日本鉄道株式会社 (当時) の東北本線水沢・青森間の41箇所 (52ha) に設置されたふぶき防止林である。これが著しい効果を発揮し、ふぶき防止林はその後急速に普及するとともに、鉄道林は逐次雪崩や土砂崩壊等に対する防護設備としても発達していった。鉄道林は、経済林としての経営条件を満たすことで良好な状態で維持されてきたが、昭和40年代の半ば過ぎからは木材価格の低迷と人件費の高騰のため、伐採収益による経済林的経営は次第に困難となった。そこで、近年では近自然的施業法の導入、防災機能の定量的評価等の試みを通じて、鉄道林を本来の防災設備として合理的に維持管理する努力を続けている。