土木史研究
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岐阜県の小里川発電所と与運橋
大正期の堅固な石造水力発電施設群
山根 巌井上 肇松島 秀夫
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1998 年 18 巻 p. 415-429

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抄録

岐阜県瑞浪市と山岡町の境を流れる庄内川水系の小里川には、中部電力の前身の一つである「多治見電燈所」が大正時代に建設した、連続した3つの小規模永路式発電所がある。これ等の水力発電所の土本施設には、「与運橋」を始め九州以外では珍しい6つの石造アーチ構造や、多様で見事な石造構造物が残っている。
これ等の水力発電所は、1906 (明治39) 年土岐市に建設された土岐川発電所と共に、多治見地方の製陶業等の地場産業の発展や、地域社会と住民生活の近代化を進めた近代化遺産である。
これ等の4つの発電所を建設された初代加藤乙三郎は、製陶原料を製造していた事業家であり、技術者ではないが、独力で土木技術を習得し、堅固な石造構造物で水力発電所を造った入である。
資料が公表されておらず、それ等の技術の詳細や源流も不明であるが、建設省が庄内川水系の防災を欝的とした小里川ダムの建設に当たり、これ等の施設の一部が水没するので、簡易な調査を実施した。この結果土木施設には、田辺朔郎の初期の小著「水力」の影響が見られる等、他の小規模発電所に比して幾つかの特徴が見られた。
この報告は、これ等の発電所が建設された歴史的技術的背景と、土本施設の調査結果及び、それ等についての若干の考察と評価を述べる。

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