抄録
本研究では, 個人の生活行動の再現を図る際に重要な制約条件であるプリズム制約を考慮した上で, 個人の生活行動に関する意思決定を時間軸上で逐次再現し, それに伴う生活行動の軌跡を生成する生活行動マイクロシミュレーションを構築をした. 本研究では, これをPCATS (Prism-Constrained Activity-Travel Simulator) と呼ぶこととした.PCATSは活動内容選択モデル, 交通機関・目的地選択モデルなどのサブモデルで構成されており, それぞれサブモデルをダイアリー調査から得られたデータに基づいて構築した. モデル推定においては, 交通行動モデルの構築にあたり, 個々の移動を独立に解析するのではなく, 一日の生活行動全般を考慮することが重要であること, ならびに, プリズム制約等の制約条件を十分に考慮することが重要であることが示された. 最後に, いくつかの条件下での仮想的な個人の生活行動を再現することで, 従来のアプローチでは評価することが困難であった, 移動時間の増減や勤務時間帯の変化等が生活行動全般に及ぼす影響を, 本研究で提案するシミュレーションアプローチに基づいて評価できることが分かった.