抄録
移動に費やす所要時間は、選択する経路の交通混雑状況によって確率的に変動する。自動車運転者は到着時刻に制約が存在する場合、遅刻によるペナルティ (損失) を充分小さくしようとし、また、早着による無駄 (損失) を最小にしようとして出発行動を決定すると考えられる。すなわち、出発行動は所要時間についての期待値のみでなく、遅刻及び早着の損失を考慮した「見込み到着余裕時間」に基づいて行っているとみなすことができる。本研究は、到着時刻に制約がある自動車運転者を対象に、「出発行動の決定」を「見込み到着余裕時間の形成」と仮定し、所要時間の不確実性に応答するためにどのように到着余裕時間を形成するかについて、出発行動の決定原理に関する2つの仮説を提示し、出発行動モデルを構築するとともに、自動車運転者へのアンケート結果からそれらのモデルの考察を行っている。