抄録
本研究では, 政府主導によりMM施策に取り組んでいるオーストラリアの現況を概観するとともに, マーケティング手法を駆使したパース都市圏のTravel Smartプロジェクトと,「会話」による丁寧なコミュニケーションを特徴とするアデレード都市圏Travel Smartプロジェクトをヒアリング調査と文献調査により紹介した. その上で, 二つの事例と我が国の現況を比較することを試みた.その結果, パースとアデレードにおけるTFPの差異とともに, 両事例の課題が明らかとなった. また, 両事例と我が国の現況の比較より, 我が国におけるMM施策は, 未だ模索中であるが, 様々な事例の良い点や学術的知見を柔軟に受け入れ, よりよいプログラムを構築する可能性を秘めていることを指摘した.