抄録
本論では,近代に創造された人の歩く道とそれを取り囲む環境に着目して,京都南禅寺福地町と京都浄土寺鹿ケ谷若王子周辺の2つの事例における特殊な景域形成の過程を確認した.いずれの事例における小径についても,周囲の開発の付属的な構成物に見えながら,景域を形成する軸となる重要な存在となった.それらはある段階で空間的意図を持って設計されたものであり,その設計意図の根幹には,単なる路面整備ではなく周囲の風景を目にする散策者の用が,強く意識されていた.豊かな新しい景域を創造するためには,周囲の自然・伝統と地形の解釈を十分に行った上で,周囲の敷地との間に緩やかな所有関係を作るよう小径が計画されるべきだろう.