本研究の目的は、個人の制御焦点傾向と世代性 (generativity) の関連を検討することで、これまでの世代性研究で用いられてきた世代性尺度の内容的妥当性について新たな課題を提言することであった。壮年期から高齢期の194名(男性120名,女性73名,無回答1名) (平均年齢 64.78 ±10.57 歳, range42-86歳)を対象に質問紙を用いた調査を行った結果、肯定的な結果を得ることに焦点を当てた行動方略である促進焦点傾向の強さが、世代性の得点に関連することが明らかとなった。 本研究の結果から、世代性の発達には予防焦点傾向ではなく促進焦点傾向の強さが関連していると考えられる一方で、本研究をはじめこれまで多くの世代性研究で用いられてきた世代性尺度が、 促進焦点傾向の強い人の行動方略や志向性のみを反映するものであるという可能性が示された。 世代性の中でも 「悪いものを継承しない」 という世代間緩衝の側面をいかに量的に抽出するかを検討することが、 今後の世代性研究にとって新たな展開となりうる。