日本世代間交流学会誌
Online ISSN : 2758-5905
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次世代に語り継ぐ生命及び人権尊重としての学童疎開
‐学童疎開研究資料から考える世代間交流の視点‐
佐々木 剛草野 篤子
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2022 年 11 巻 2 号 p. 21-30

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抄録

戦争を知らない子・孫・ひ孫世代に、祖父母世代が子供時代に体験した学童疎開について語り継ぎ、歴史的な事実として正確に伝えることの意義を、世代間交流の視点から探求する。方法としては、全国疎開児童連絡協議会の活動とその収集した資料に加えて、学童疎開体験を記述した文献および資料を検討する。 資料によると、1944(昭和19)年に実施された学童疎開では、縁故疎開が困難な国民学校3年生から6年生の学童による集団疎開が実施された。学童疎開は国策によってふぁが駆動を集団で地方に移住させるものであったが、その一方では、親、兄弟等家族を単位とする縁故疎開や疎開を行う継続的負担ができないもの、また、「集団ニ適セザル者」や虚弱を理由とする者を都会に留め置く残留疎開が行われていた。すなわち、学童疎開には、戦時下で魏の戦力となる世代を温存しつつ、戦力にならざる者を排斥する目的が隠されていた施策と読み解けた。  文献や体験記録などの資料を精査した結果、祖父母世代が戦争を知らない子・孫・ひ孫世代に、自分が体験した学童疎開体験を語り、かつ、歴史的な事実を正確に伝えることは、生命尊重や人権尊重の考え方として極めて重要な活動であることが分かった。そして、それは世代間交流研究に資するものであり、今日の課題であるSDGs“持続可能な開発目標”を形成する大切な視点でもあることが明らかになった。

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