日本世代間交流学会誌
Online ISSN : 2758-5905
Print ISSN : 2185-7946
在宅認知症高齢者の世代間交流プログラムへの継続参加によるうつ症状等の変化
前向き縦断的混合研究法ケーススタディ
目黒 斉実亀井 智子
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 8 巻 1 号 p. 51-59

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抄録

都市部世代間交流プログラムに週1回30ヵ月間継続的に参加した中等度認知症高齢者 Z氏(90歳代・女性)の初回参加時から施設入所に至る休会までのうつ症状等 (量的データ) の変化と世代間交流の観察(質的データ)を混合研究法による収斂法を用いて統合し、うつ症状の変化が生じる理由を本人の視点に立って本人の立場から状況を捉え解釈し記述した。その結果、 観察期間中に身体・認知機能は低下したが GDS-15 は入会時12点 (うつ 状態) から30ヵ月目3点(うつなし) へ改善を認めた。 世代間交流量、主観的交流感、 参加満足度の量的データではGDS-15 の変化を説明することはできなかったが、交流の観察からは、小学生との毎週の交流の積み重ねによって、なじみの関係が進み、 感情面の安定と、 場への安心感が生じたことがうつ症状の改善に寄与したと推察された。 認知症高 齢者にとっての定期的な世代間交流は、高齢者の感情面の向上と社会性を高め、地域においての有用な資源となり得ると示唆された。

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© 2018 日本世代間交流学会
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