ペット栄養学会誌
Online ISSN : 2185-7601
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原著論文
移行上皮癌罹患犬における化学療法前後の血漿遊離アミノ酸濃度
小野沢 栄里生野 佐織平松 朋子石井 聡子後藤 杏依宮島 芙美佳小田 民美呰上 大吾森 昭博左向 敏紀
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2017 年 20 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

ヒトのがん患者の研究において、化学療法前後の血漿遊離アミノ酸濃度(PFAAs)が変化することが知られているが、イヌにおいては明らかではない。そこで本研究では、移行上皮癌(TCC)罹患犬における化学療法前後のPFAAsの変化を検討することを目的とした。TCC罹患犬3頭を用いた。TCC罹患犬にミトキサントロンを診断時および診断から3週間後に静脈内投与した。また、化学療法中はピロキシカムも6週間目まで毎日投与した。そして、0(抗がん剤投与前)、1、3、6週間目に採取した絶食時の血漿を高速液体クロマトグラフィー質量分析法にて異なる30種類のアミノ酸濃度を測定した。結果として化学療法前後で血漿中のシスタチオニン濃度に有意な変化が認められた。シスタチオニンは0週目と比較し、1および3週間後で減少、6週間後に増加した。TCC罹患犬の血漿中のシスタチオニンは、腫瘍細胞で利用された可能性が考えられた。以上より、TCC罹患犬におけるPFAAsは抗がん剤投与に影響されることが示された。今後は症例数を増やし、さらに長期間にわたり調べることで、TCCとPFAAsの関係をさらに検討していく必要がある。

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