2023 年 26 巻 1 号 p. 1-7
回復しても生涯に亘りウイルスキャリアとなることの多いネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)や、ネコカリシウイルス(FCV)などを原因とするネコの上部気道感染症は、ワクチンでもウイルス感染の防御においては十分に機能せず、感染拡大が問題となっている。ネコの健康推進に期待されるプロバイオティクスの1つとして、Enterococcus faecalisに加熱殺菌処理後、高密度濃縮した乳酸菌素材がある。そこで乳酸菌素材の抗ウイルス能を調査するため、polymerase chain reaction(PCR)検査後によりFHV-1またはFCVの陽性のネコ11頭(1頭重複感染有)を供試ネコとした。この供試ネコから、乳酸菌素材投与群を試験群(n=6)、乳酸菌素材非投与群を対照群(n=5)として試験を行った。これら2群に対し、PCR検査の陽性率を調査した。その結果、FHV-1またはFCVのウイルス性疾患合計の最終陽性率は、試験群16.7%(1/6)、対照群80%(4/5)となった。また、最終陽性スコアでは、有意差は得られなかったものの、対照群に対するオッズ比が2.0となった。以上により乳酸菌素材はFHV-1またはFCVに対し一定の抗ウイルス能のある可能性が示唆された。