ペット栄養学会誌
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26 巻, 1 号
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原著論文
  • 浮田 紗弥, 縄井 愛理, 佐藤 逸郎, 村上 彬祥, 大島 誠之助, 小沼 守
    2023 年 26 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2023/04/10
    公開日: 2023/05/25
    ジャーナル フリー

    回復しても生涯に亘りウイルスキャリアとなることの多いネコヘルペスウイルス1型(FHV-1)や、ネコカリシウイルス(FCV)などを原因とするネコの上部気道感染症は、ワクチンでもウイルス感染の防御においては十分に機能せず、感染拡大が問題となっている。ネコの健康推進に期待されるプロバイオティクスの1つとして、Enterococcus faecalisに加熱殺菌処理後、高密度濃縮した乳酸菌素材がある。そこで乳酸菌素材の抗ウイルス能を調査するため、polymerase chain reaction(PCR)検査後によりFHV-1またはFCVの陽性のネコ11頭(1頭重複感染有)を供試ネコとした。この供試ネコから、乳酸菌素材投与群を試験群(n=6)、乳酸菌素材非投与群を対照群(n=5)として試験を行った。これら2群に対し、PCR検査の陽性率を調査した。その結果、FHV-1またはFCVのウイルス性疾患合計の最終陽性率は、試験群16.7%(1/6)、対照群80%(4/5)となった。また、最終陽性スコアでは、有意差は得られなかったものの、対照群に対するオッズ比が2.0となった。以上により乳酸菌素材はFHV-1またはFCVに対し一定の抗ウイルス能のある可能性が示唆された。

  • 酒居 幸生, 古家 優, 鳩谷 晋吾, 金城 綾二, 鍋谷 知代, 島村 俊介
    2023 年 26 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 2023/04/10
    公開日: 2023/05/25
    ジャーナル フリー

    イヌの慢性腸症(CE)と消化器型リンパ腫(AL)は早期の鑑別が重要である。しかし、その鑑別では一般的に全身麻酔下での組織生検を必要とする。血漿中アミノ酸濃度は通常一定に保たれているが、疾患の存在により特徴的な変化を示す。また、採血は組織生検に比べて侵襲性が極めて低い。そこで本研究では、イヌのCEとALの鑑別における血中アミノ酸濃度の有用性を検討した。CEまたはALに罹患するイヌから血漿を採取し、36種類のアミノ酸濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法により測定した。2群における各アミノ酸濃度の相関比を算出し、相関比の大きい順にアミノ酸を選択して判別分析を行った。CE群とAL群にはそれぞれ6頭のイヌが組み入れられた。2群間で年齢や性別、不妊手術の実施状況、症状の重症度、ステロイド投与歴に有意差は認められなかった。測定したアミノ酸のうち、26種類が全頭で評価可能であった。これらの中からシトルリン、グルタミンおよびオルニチンを組み合わせて2群の判別式を作成したところ、その相関比は0.8228、判別的中率は100%、誤判別の確率は2.5%であった。以上のことから、血漿中アミノ酸濃度によりイヌのCEとALを簡易かつ正確に判別できる可能性が示された。

  • 糸永 真奈美, 橋本 詩織, 大石 亮, 鈴木 武人, 勝俣 昌也
    2023 年 26 巻 1 号 p. 19-27
    発行日: 2023/04/10
    公開日: 2023/05/25
    ジャーナル フリー

    成去勢雄ネコに試験飼料3種(プレバイオティクス資材として、セルロースを成分の主体とした候補資材CEL(資材CEL)、フラクトオリゴ糖(FOS)、難消化デキストリン(IDD)のそれぞれを添加した飼料)とプレバイオティクス資材を含まない対照飼料を30日間給与した。糞の重量、総DNAと短鎖脂肪酸の濃度を測定するとともに、16S rRNAコード領域のシーケンスによって細菌叢を解析した。FOSあるいはIDDの給与で糞の重量が高くなった(P<0.05)。一方、いずれのプレバイオティクス資材を給与しても糞のDNAと短鎖脂肪酸の濃度は変化しなかった。また、給与したプレバイオティクスのちがいはBifidobacterium属、Clostridium属、Catenibacterium属の割合に影響を及ぼし(P<0.05)。それぞれFOS、資材CEL、IDDの給与で平均値が高くなった。一方、IDDの給与でClostridium属の平均値が低くなった。以上のように、資材CELとIDDはネコの腸内細菌叢に影響を及ぼし、糞量を増やす効果も認められたことからIDDは新規プレバイオティクス資材として活用可能だということが示唆された。

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