ペット栄養学会誌
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ドライキャットフードへのL-シスチン添加による尿の酸性化
大島 義之和田 沙依子田村 充宏後藤 健金子 政弘舟場 正幸入来 常徳波多野 義一阿部 又信
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2003 年 6 巻 2 号 p. 64-73

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抄録

ネコにおけるシスチンの尿酸性化効果と有害作用の有無について検討した。健康な成ネコ6頭(平均3.3kg)を2頭ずつ3群に分け,1期8日間の3×3ラテン方格法により,L-シスチンを0,2.4,4.8%添加した3種類の実験食を各群に割り当てた。実験期間を通して実験食と飲水は不断給与し,各期最終5日間に増体量,摂食量,飲水量,尿量,糞量を測定した。また,毎朝新鮮尿を採取し,直ちにpHとストルバイト結晶数を測定した.残りの尿はMg,P,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,遊離アミノ酸濃度の測定に用い,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]によりストルバイト活性積を求めた。一方,各期最終日には頚静脈より採血し,ヘマトクリットと血漿中の総蛋白質,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,および遊離アミノ酸濃度を測定した。尿および血漿のクレアチニン濃度を指標として糸球体濾過量も求めた。その結果,L - シスチンには等S量のDL-Metに匹敵する尿酸性化効果がある一方,DL-Metのような強い毒性はないことが明らかとなった。しかし体重の有意な減少なしに摂食量が減少したことから,インバランスは生じ得ることが示唆された。L-シスチンの適正投与水準はドライフード当たり2.4%以下と考えられたが,この問題に関しては今後さらに検討の余地がある。L-シスチンの投与がシスチン尿症または同尿石症を増加させるとの証拠はなかったものの,二塩基性アミノ酸- 特にシスチン, リジン,アルギニンーの尿中排泄に関するネコの特異性が示唆された。

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