2014 年 21 巻 1 号 p. 20-22
60歳台男性,1年前に会社を退職。3ヵ月前からの咽頭違和感と食欲不振,体重減少(10kg)を主訴に受診。各種検査で異常はなく,器質的疾患が否定され,機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)と診断。FDに対する治療を行うも症状改善せず,メンタルクリニックを受診。検査により身体的な異常がないにも関わらず,重篤な身体的疾患が存在することへの頑固なとらわれが強く,身体疾患や異常が存在しないことを頑なに拒否することから心気症が疑われた。その後,うつ病の中でも抑うつが目立たず身体性症状が前景に立つ仮面うつ病と診断された。抗うつ薬を中心とした薬物精神療法を行い,改善傾向がみられたが副作用のため治療の継続が困難であり,その後の治療に難渋した。体重減少が進行したため治療継続の必要性があると判断し,精神科病院へ転院となった。消化器症状を主訴に発症し,診断と治療に難渋した仮面うつ病を経験したので報告する。