消化器心身医学
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Print ISSN : 1340-8844
ISSN-L : 2188-0549
総説
心的外傷後ストレス障害における腸内細菌叢の変化
高城 健岡田 義清白壁 和彦古橋 廣崇榎本 真悟谷知 正章丸田 紘史安武 優一栗原 千枝戸田 裕之東山 正明渡辺 知佳子髙本 俊介冨田 謙吾清水 邦夫永尾 重昭三浦 総一郎穂苅 量太
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2016 年 23 巻 1 号 p. 2-5

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抄録

近年,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の関連性が指摘されており,一方で精神疾患と腸内細菌との関連性が指摘されている。また,IBSでは腸管粘膜における脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)の発現が増加するとの報告もある。今回我々は,本学で開発されたPTSD動物モデルを用い,腸内細菌叢や腸管粘膜におけるBDNF発現の変化について検討した。シャトル箱を用いてラットに逃避不能の電撃を負荷すると,後の行動観察でラットはPTSD,学習性無力(learned helplessness: LH),indeterminateのいずれかの行動パターンを呈することが判明した。行動パターンによって腸内細菌叢の構成が異なり,PTSD群ではBacteroidetes,LH群ではProteobacteriaの割合が増加する傾向がみられた。またLH群では,近位結腸のBDNF発現が増加する傾向がみられた。これらの変化がmicrobiota-gut-brain axisに関連し,行動変化や消化管機能に影響を与えている可能性がある。

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© 2016 消化器心身医学研究会
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