消化器心身医学
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総説
  • 高城 健, 岡田 義清, 白壁 和彦, 古橋 廣崇, 榎本 真悟, 谷知 正章, 丸田 紘史, 安武 優一, 栗原 千枝, 戸田 裕之, 東 ...
    2016 年 23 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー

    近年,心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder: PTSD)と過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome: IBS)の関連性が指摘されており,一方で精神疾患と腸内細菌との関連性が指摘されている。また,IBSでは腸管粘膜における脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor: BDNF)の発現が増加するとの報告もある。今回我々は,本学で開発されたPTSD動物モデルを用い,腸内細菌叢や腸管粘膜におけるBDNF発現の変化について検討した。シャトル箱を用いてラットに逃避不能の電撃を負荷すると,後の行動観察でラットはPTSD,学習性無力(learned helplessness: LH),indeterminateのいずれかの行動パターンを呈することが判明した。行動パターンによって腸内細菌叢の構成が異なり,PTSD群ではBacteroidetes,LH群ではProteobacteriaの割合が増加する傾向がみられた。またLH群では,近位結腸のBDNF発現が増加する傾向がみられた。これらの変化がmicrobiota-gut-brain axisに関連し,行動変化や消化管機能に影響を与えている可能性がある。

原著
  • 大島 忠之, 三輪 洋人
    2016 年 23 巻 1 号 p. 6-9
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー

    IL-33は血管内皮や上皮細胞に発現する新規サイトカインの一つで細胞外からは炎症性サイトカインとして働くが,核に局在する場合には炎症の制御に関わっているとされてきた。IL-33の逆流性食道炎などの食道における役割は全く明らかとなっておらず,今回,健常者と逆流性食道炎患者におけるIL-33の発現局在とその役割を検討した。食道生検組織におけるIL-33 mRNAレベルは逆流性食道炎で高く,IL-8やIL-6のmRNAレベルと有意に相関した。in vitroでは,ヒト正常食道上皮細胞を用いて独自に開発した三次元培養モデルで検討すると,IFNγがIL-33の発現を増加させた。IL-33は,食道上皮基底層の核内で増加し,上皮層からは放出されなかった。IL-33 siRNAでその発現を抑制すると,IFNγによるIL-8やIL-6の放出増加が抑制された。逆流性食道炎でIL-33の発現は核内で増加することが明らかとなり,核内IL-33の発現が,炎症性サイトカイン産生を介して食道炎の増悪に関与していることが示唆され,核内IL-33の発現制御による炎症制御が新たな治療法の一つになると考えられた。

  • 楠 裕明, 神崎 智子, 山下 直人, 本多 啓介, 柏原 直樹, 石井 学, 塩谷 昭子, 塚本 真知, 眞部 紀明, 畠 二郎, 春間 ...
    2016 年 23 巻 1 号 p. 10-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/09/01
    ジャーナル フリー

    適応障害患者(AD)はストレスとの関連性が明確であり,腹部症状を訴えるADは腹部症状とストレスとの関連性を研究する対象として注目されている。今回われわれは,腹部症状を訴えるADの胃十二指腸運動機能と腹部症状を,体外式超音波(US)と症状質問票を用いて評価した。【対象と方法】腹部症状を訴えて当科を受診したAD7例(男性1例、女性6例;16~41歳,中央値23歳)を対象とし,USを用いた機能検査で近位胃拡張率(AR),胃排出率(GE),前庭部運動能(MI),十二指腸胃逆流(RI)の4つの項目を評価し、GSRS、HADSの質問票を実施した。【結果】7例全員が何らかの機能異常を有し,内訳はARが3例,GEが5例,MIが2例,RIは6例であった。腹部症状は,それぞれの機能異常に合致するものであったが,HADSの異常は見られなかった。【結語】上腹部症状を有するADは運動機能異常を有し,それによる腹部症状が受診の契機となっている。

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