2025 年 14 巻 1 号 p. 22-27
アセチルシステインによるインスリンへの影響を検討した.ヒトインスリンのアミノ酸配列には,3箇所のジスルフィド結合が存在している.アセチルシステインは,ジスルフィド結合を開裂することが知られており,我々は,インスリンアスパルトにアセチルシステインを添加した際の反応について検討した.アセチルシステインは,100 mmol/L濃度と1,000 mmol/L濃度の溶液を準備し,インスリンアスパルト200 µLとアセチルシステイン溶液200 µLの混合液から,10 µLを採取して,高速液体クロマトグラフィーでインスリンアスパルト量を測定した.インスリンアスパルト及びアセチルシステインを反応させてから,1時間毎にインスリンアスパルトの量を測定した.測定は6時間まで行った.アセチルシステイン100 mmol/Lでは,インスリンアスパルトの低下は4時間以降に認められた.1,000 mmol/Lでは,1時間以降で有意な低下が認められた.アセチルシステインは,アセトアミノフェン中毒の際の解毒薬として用いられるが,肝機能が低下していない患者に添付文書に記載された用法用量でアセチルシステインを経口投与した際には,インスリンアスパルトに影響を与える可能性が低いことが示唆された.