くすりと糖尿病
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原著論文
成人および小学生を対象とした自己注射用注射針ハブの色彩に関する印象と好みに関する調査
朝倉 俊成名取 和幸江森 敏夫
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2025 年 14 巻 1 号 p. 28-33

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抄録

自己注射療法は幅広い年齢層に導入されているが,心理的障壁や医療費,スティグマに関連した問題から経口薬に比べ導入が難しい現状がある.特に注射針ハブの色彩は,小児に与える印象に大きく影響する可能性がある.そこで,糖尿病自己注射用注射針ハブの色彩が小児および成人に与える印象について調査を行った.調査は首都圏在住の小学生150名と成人150名を対象に,5種の異なる色彩の注射針ハブ(透明,白,ピンク,オレンジ,水色)を用いてオンラインアンケートを実施した.その結果,『透明』の注射針ハブは特に小学生に「こわい」という印象を与えることが明らかになった.『白色』は清潔感があると感じる小学生が多かった一方,『ピンク』は「かわいい」という印象が強く,恐怖感を低減する効果が見られた.『水色』は透明と似た印象ながらも,「目立つ」「かわいい」「きれい」といったポジティブな評価が高く,特に小学生に「こわい」という印象を与える割合が低いことが確認された.自由意見の分析では,『透明』は「清潔感」「目立たない」という医療用具に対する好印象が多く,『ピンク』や『水色』は「かわいい」「きれい」といった感覚的な評価が多いことがわかった.このことから,清潔感や目立たないことを重視する場合は『透明』や『白色』,感覚的な評価やモチベーション向上を重視する場合は『ピンク』や『水色』が適していると示唆された.総合的に,『ピンク』や『水色』は恐怖感の低減とポジティブな印象の向上に有効であり,今後の製剤開発において重要な考慮点となると考えられた.しかし,色弱者への対応では『水色』が推奨される.今後は実地試験を通じた評価や他の年齢層・地域での印象の違いを検討し,包括的なデザインガイドラインの策定が期待される.

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© 2025 一般社団法人日本くすりと糖尿病学会
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