2016 年 5 巻 2 号 p. 180-187
当研究室ではこれまでに,α–リノレン酸(αLA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等のω-3系多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)をマウス結腸に投与することにより,グルカゴン様ペプチド–1(GLP-1)およびインスリン分泌を介した糖尿病治療効果が認められることを明らかにしてきた.しかしながら,水溶液中でのn-3 PUFAの溶解度が著しく低いため,その投与量を高め治療効果をさらに増強させることは困難である.従って本研究では,脂質微粒子キャリアの一種であるリポソームを用いてn-3 PUFAを高用量含有する製剤を調製し,n-3 PUFAによる糖尿病治療効果を向上させることを試みた.αLAを高用量含有したリポソームを調製した結果,約100nmの粒子径が長期間安定に保持されることが確認された.このαLA封入リポソームを高血糖マウスの結腸部位に投与した結果,αLA含有量依存的な血糖降下作用が認められた.また,この作用がGLP-1およびインスリン分泌促進作用を介した血糖コントロールに起因していることが示唆された.このように,リポソームを利用することにより高用量のn-3 PUFA製剤の調製が可能になり,有効かつ安全な糖尿病治療戦略の構築につながることが期待される.