実践英語音声学
Online ISSN : 2435-5003
論文
イングランド北部英語における母音の諸特徴
リバプール,マン島,プレストン,ブラッドフォードを比較して
三浦 弘
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2020 年 1 巻 p. 19-41

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抄録
イングランド北部 4 地域で英語方言の現地調査を行って収録した音声を分析し,各地域方言に見られる母音の特徴について報告する。(1)「NURSE 母音と SQUARE 母音の融合」は,リバプール英語の特徴と言われているが,実際に完全に融合していた。それも訛りの強い話者の音素は /ɛː/,訛りの軽い話者の音素は /ɜː ~ ɛː/ と分けられた。この融合はプレストン(ランカシャー)にも見られた。(2)「THOUGHT 母音と NORTH 母音と FORCE 母音の融合」は,リバプールでは CURE 母音までも含 めて円唇後舌半狭母音 /oː/ で融合していたが,その傾向はマン島とプレストンでも同様であった。 ブラッドフォード(ヨークシャー)でも融合していたが,その音素は後舌半広母音の /ɔː/ であった。(3)プレストンとブラッドフォードのNEAR 母音は現在でも 2 音節の母音とみなせると思われる。第 1 要素が長く,第 2 要素のシュワーが短い。プレストンの音素は /iːə ~ i(ɹ)/ で,ブラッドフォードは /iːə/ だけであった。(4)CURE 母音では,プレストンの音素は /uːə ~ ʊə ~ oː ~ u(ɹ)/ で,ブラッドフォードの音素は /ɔː ~ ɑː ~ ɜː/ であった。
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© 2020 日本実践英語音声学会
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