大学体育スポーツ学研究
Online ISSN : 2434-7957
原著論文
大学初年次男子学生の気分状態と生活習慣の関係
小田 啓之七山(田中) 知佳石道 峰典中村 友浩西脇 雅人
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 18 巻 p. 75-83

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抄録

【背景】大学初年次学生の生活習慣や運動習慣は,大学生活への慣れや学業成績の改良において重要であることが良く知られている.限られた小規模な研究では,メンタルヘルスや気分状態が生活習慣または運動習慣に影響を与え得ることを報告しているが,同一大学の同一学年(すなわち,同質の対象)の大学生に対する大規模な研究における強固な知見は不足している.【目的】本研究の目的は,大学初年次学生の気分状態と生活習慣の関連について検討することを目的とした.【方法】本研究は,1030人の男子大学初年次学生を対象とした横断研究であった.気分プロフィール検査(POMS検査)によって気分プロフィールを,質問紙調査によって生活習慣や運動習慣を評価した.【結果】ネガティブの指標であるPOMSの総合スコアを基に,対象者をネガティブな気分状態が「低い」,「平均的」,「高い」,「非常に高い」の4群に割り振った.「睡眠時間」,「睡眠の質」,「朝食の摂取頻度」,「スポーツの好き嫌い」,「スポーツの経験年数」,「体力スコア」において,統計学的に有意な差が認められた.特に,他の群に比して,「低い」群では,「睡眠の質」と「体力スコア」が有意に低く,「スポーツの経験年数」が有意に高い値を示していた.また,「睡眠時間」,「睡眠の質」,「朝食の摂取頻度」,「スポーツの好き嫌い」,「スポーツの経験年数」,「体力スコア」において,統計学的に有意なトレンドが認められた.すなわち,ネガティブのレベルが高まるにつれて,「低い」群と比較し,これらのスコアが「高い」群と「非常に高い」群で悪化していた.また,全ての変数を対象としたステップワイズ法による重回帰分析によって,睡眠の質(β = 0.251),スポーツの好き嫌い(β = 0.196),朝食摂取頻度(β = -0.081)の3つの変数がネガティブな気分状態に影響を与える有意な独立変数であることが認められた.【結論】したがって,これらの結果は,ネガティブな気分状態と日常の生活習慣や運動習慣が関連していることを示すものであり,ネガティブな気分の状態と悪い生活習慣や運動習慣が関連している可能性があった.

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