大学体育スポーツ学研究
Online ISSN : 2434-7957
研究ノート
大学体育授業時間外の日常身体活動促進の実態:
文献調査および質問票調査から
松浦 稜 木内 敦詞加畑 碧
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 21 巻 p. 123-132

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抄録

体育科目は,授業内の身体活動だけでなく,授業時間外の日常生活における身体活動を促す役割も期待されているが,その実態は明らかではない.本研究の目的は,大学体育授業を通した授業時間外の日常生活の身体活動促進に関する取り組み実態を,先行研究に基づく文献調査および教員と学生対象の質問票調査から明らかにすることであった.文献調査は,スコーピング・レビューのための報告ガイドラインに基づいて実施された.日本の大学体育授業で日常生活の身体活動促進のための取り組みを行ない,授業時間外の身体活動量を測定している研究を,CiNiiとJ-STAGE上で「身体活動OR運動AND体育AND日常生活AND大学生」をキーワードに検索した.質問票調査は,首都圏のA大学とB大学で教養体育を担当している教員13名と受講学生284名を対象に実施された.結果として,大学体育授業を通した日常生活の身体活動促進に関する以下の課題が明らかになった.1)本研究の調査対象となった論文は11編であり,その学術的な報告が極めて少ないこと,2)その中で日常生活の身体活動を促進する取り組みすべてが「知識ベース」で,身体活動促進のための具体的な運動を実践する「実技ベース」の取り組みがないこと,3)大学体育授業で日常生活の身体活動促進のための取り組みがあると回答した教員は69%に対し,学生は28%であり,学生と教員の認識に大きな差異があること.今後は,活動的な日常生活に直接繋がるような実践的な運動教材を授業内で扱うとともに,その実践内容や学修成果に関する学術的な情報の集積が望まれる.

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© 2024 全国大学体育連合

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