抄録
アデニンヌクレオチド輸送体(ANT)は細胞核によってコードされるミトコンドリアタンパク質であり,ミトコンドリア内膜でATPとADPを交換輸送する役割がある.多くの生物はいくつかのANTパラログを有しており,その機能の違いはよくわかっていない.本研究ではカメムシ目の,チャバネアオカメムシ,ホソヘリカメムシ,エンドウヒゲナガアブラムシ,フジコナカイガラムシにおいてANTパラログ遺伝子を同定した.チャバネアオカメムシにはPsANTI1とPsANTI2の二つの遺伝子がある.前者は調べた全ての発育ステージや組織で一定に発現していたのに対し,後者の発現量は1齢幼虫や成虫の触角で著しく低かった.遺伝子発現抑制実験の結果,PsANTI1の抑制は致死に至り,PsANTI2の抑制は成長に影響がなかった.よって,PsANTI1が殺虫剤の新規作用点となる可能性があると期待される.