抄録
光分解は水系環境における農薬の最も重要な非生物的変換の一つで,太陽光の高エネルギーにより,結合切断,環化反応,転位反応といった加水分解や微生物分解ではあまり見られない特徴的な反応が起こる.本総説では農薬の基本的な光化学の知見を得る為に,自然,人工太陽光の吸収による励起で始まる直接光分解を対象とし,溶存有機物による増感反応や活性酸素種による酸化といった間接光分解は対象から除いている.直接光分解における反応機構の観点から理論計算と共に分光学的手法を含む実験上の様々な取組みを最初に考察し,典型的な農薬の光反応を化学系統や官能基によって纏めた上で反応機構に関連して考察する.