抄録
ホスフィン (PH3) の電子伝達系における阻害部位をラット肝とコクゾウのミトコンドリアを用いて検討した. PH3は, アスコルビン酸+TMPDを基質として, イオンポンプ (Ca2+, グラミシジン), State 3および脱共役 (DNP) 呼吸を完全に阻害した. しかし, State 4呼吸に対しては強い阻害効果を認めなかった. PH3を添加したミトコンドリアは, チトクロームaのα吸収帯 (コクゾウでは600nm, ラット肝では602nm)とγ吸収帯 (445nm) に明瞭な差スペクトルを生じた. このことは, PH3はチトクローム酸化酵素に強く作用していることを証明するものである. しかし, 両吸収帯のピークの位置は青酸や嫌気条件のものとは異なっていた。また, Ca2+は, 低濃度 (100μM) のPH3のスペクトル発現を助長した. 一方, PH3によるミトコンドリア中のチトクローム酸化酵素の活性阻害を, 還元チトクロームcの酸化速度より観察し, 低濃度のPH3の強い阻害効果を確認した.