Journal of Pesticide Science
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有機ヒ素剤 ferric methanearsonate の土壌中における代謝運命
小田中 芳次土屋 則子俣野 修身後藤 真康
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1985 年 10 巻 1 号 p. 31-39

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抄録
湛水条件下の土壌 (阿蘇, 菊川, 佐賀) にMAF (ferric methanearsonate) を乾土当りヒ素濃度として10ppmとなるよう施用し, ヒ素化合物の動態について調査した. MAFはメチル化および脱メチル化の両方向の代謝変換を受けながら徐々に減衰してゆく現象が認められた. メチル化体の dimethyl ヒ素や trimethyl ヒ素は一時期ある程度の増加をみた後, 再び消失するのに対し, 脱メチル化体の無機ヒ素は継続的に増加した. 代謝物に相当する sodium arsenate, dimethylarsinic acid (DMAA), trimethylarsine oxide (TMA=O) の動態を同条件下の土壌で調査した. DMAAないしTMA=Oは無機ヒ素まで脱メチル化されるのに対し, arsenate は外観上ほとんどメチル化されないことから, MAF由来のヒ素成分は総体として無機ヒ素に変換されることが予測された. 各種土壌条件下におけるMAFの動態について調査した. 極端な嫌気的条件下の土壌で揮発性ヒ素の発生が認められた. Disodium methanearsonate (DSMA) の動態について同条件下の土壌で調査しMAFと比較した. MAFは畑地条件下の土壌でDSMAよりも分解されにくい傾向を示した.
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© 日本農薬学会
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