抄録
新規選択性除草剤 quizalofop-ethyl の第一次作用点についての知見を得ることを目的として, 鏡像異性体 (R)-(+)-および (S)-(-) 体に対する数種植物組織の反応を比較した. 感受性種のイネ, エンバクおよびトウモロコシ幼植物の生長は, 個体当り6.25μgかそれ以下の (R)-体の葉面処理によって完全に, または著しく阻害されたが (S)-体では100μg処理で弱い抑制が観察されたにすぎなかった. 同様にしてトウモロコシおよびタイヌビエによる14C標識標品の吸収・移行を比較した結果, 14Cの移行パターン, とくに処理葉から茎基部 (生長分裂組織帯) への14C移行には両異性体間に有意な差異は認められなかった. 以上の結果は, (R)-および (S)-体間の顕著な活性差は異性体に固有の活性 ―作用点における立体特異性―に起因するものであることを示唆している. この推論は, (S)-体が (R)-体の拮抗体として不活性である事実によっても支持された. また, トウモロコシ茎基部切片からの電解質漏出を指標とした細胞傷害, イネカルスの増殖阻害および抵抗性種ダイズ, タバコカルスの増殖促進活性を比較した結果からも (R)-体に対して特異性の高いキラルな受容体の存在が推測された.