抄録
Fenvalerate[(RS)-α-cyano-3-phenoxybenzyl (RS)-2-(4-chlorophenyl)isovalerate] の4光学異性体の加水分解をマウスの数種の組織ミクロゾームを用いて検討した. 腎臓, 脾臓, および脳は同じ立体選択性を示し, 4異性体中の (2R,αS)-体だけを加水分解した. 肝臓は (2S,αS)-および (2S,αR)-体よりも (2R,αS)-および (2R,αR)-体をより多く加水分解した. 一方, 血清は (2S,αS)-および (2R,αS)-体に比較して (2S,αR)-および(2R,αR)-体を速やかに加水分解した. マウスにおける in vivo での4異性体の加水分解の立体選択性は肝臓ミクロゾームによる in vitro の選択性と同様であった. 4異性体中の(2R,αS)-体からのみ脳, 腎臓, 脾臓および肝臓ミクロゾーム中で cholesteryl (2R)-2-(4-chlorophenyl) isovalerate (CPIA-cholesterol ester) が生じたが, 血清からは生成しなかった. 肝臓における CPIA-cholesterol ester の生成速度は他の組織よりも小さかった. マウス腎臓ミクロゾーム中での (2R,αS)-体からの CPIA-cholesterol ester および酸側成分のCPIAの生成のpH依存性はほぼ等しく, 至適pH7.4~9.0であった.