1977 年 2 巻 4 号 p. 405-411
セスジツチイナゴの角膜および円錐晶体を含む複眼の組織は280nmまでの近紫外線および可視光線を, 牛の眼のレンズは380nmまでの可視光線のみを透過した. このことから, 280~380nmの近紫外線は昆虫の視覚にとっては重要な意義を持っているが, 脊椎動物の視覚には無意味であることが明らかとなった. 昆虫眼の紫外線受容複合体のモデルとしてのレチニル-チアゾリジン-4-カルボン酸の光反応および暗反応から, L-システインおよびヒドロキシルアミンはレチナールとの暗反応により昆虫眼における近紫外線の機能に異常を起こすモデル物質であり, 一方, これらの化合物とレチナールから生成された近紫外線感受性複合体は光吸収および光化学反応により昆虫の眼の構造と機能に選択的害作用を及ぼすモデル物質であることが示された. なお, この選択性を新しい昆虫制御剤の作用機構に利用する可能性も提案された.