抄録
シロネズミで, 間接二瓶法により5種類のタリウム塩の識別閾値, 絶対拒否閾値を測定すると, 亜急性中毒のために実験途中で死亡するものが多く, この方法でタリウム塩の味覚効果を明らかにすることはできなかった. 直接二瓶法で硫酸タリウムの摂取性を調べると, それは低濃度で良好であったが, 濃度が高くなると (>0.125%), 硫酸タリウムよりも蒸溜水のほうがより多く選好され, 総摂取量は正常値に近い値を示した. しかし, 広い濃度範囲で80%の高い死亡率が得られた.
硫酸タリウム0.13%以上でシロネズミの鼓索神経を介して明白な味覚効果が認められ, 5種類のタリウム塩は等モル濃度でほぼ等しい味覚効果を与えることが明らかとなった. 高濃度のタリウム塩がネズミに識別される過程における, その味覚効果の役割について論議された. クマリン核を共通にもつ5種類のタリウム塩に対するシロネズミ鼓索神経の電気生理学的反応からタリウム塩の味覚効果は主としてタリウムイオンによるものである.