抄録
目的 高齢者の QOL に対する身体活動の意義や効果を明らかにすることを目的に,高齢者の身体活動や運動習慣の実態を把握し,これらの多寡やその変化が,QOL や身体症状に及ぼす影響について横断的および縦断的に検討した。
方法 名古屋市近郊の一地域に在住する63, 68, 73, 78, 83歳のすべての高齢者を対象とし,運動,身体活動習慣と QOL(6 分野)に関する自記式アンケート調査を行った。3 年後に同様の調査を行い,両年ともに回答の得られた958人を解析対象とした。
対象者の身体活動,運動習慣および QOL 各分野について 3 年間の変化を観察した。次いで初回の身体活動別に,同年および 3 年後の各 QOL を比較した。さらに身体活動習慣の変化が QOL に対する影響をみるため,前者の変化を説明変数の一つに用い,QOL 等の変化を目的変数としたロジスティック回帰分析を行った。
成績 対象者の日常身体活動は比較的よく保たれていたものの,3 年間でほとんどの習慣の実践割合は数~10%程度低下しており,低下の程度は高齢になるほど大きかった。しかし 3 年間で身体活動習慣の増加した高齢者も20~30%あった。横断的,縦断的いずれの検討においても,身体活動習慣の多い者ほど各 QOL は高かった。ロジスティック回帰分析の結果から,ほとんどの QOL 分野の変化に対して初年時の身体活動習慣は正の寄与を示した。また身体活動の変化も同様の寄与が認められた。
結論 高齢期においても日常身体活動はある程度維持されており,身体活動習慣の増加する者もあった。身体活動の多い者は QOL が高く維持されていた。身体活動を維持,増加させることは,高齢者の QOL の維持,向上に寄与することが示唆された。