日本公衆衛生雑誌
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原著
  • 吉田 都美, 三品 浩基, 竹内 正人, 川上 浩司
    2021 年 68 巻 10 号 p. 659-668
    発行日: 2021/10/15
    公開日: 2021/10/06
    [早期公開] 公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    目的 喫煙曝露が子の喘息やアレルギー性疾患の罹患と関連することが知られているが,母体喫煙を含めた受動喫煙の影響については十分に検討されていない。本研究では,神戸市より提供を受けた母子保健情報を用いて,妊娠期の母体喫煙や生後の受動喫煙が子の喘息やアトピー性皮膚炎罹患に与える影響を検討した。

    方法 2004年4月1日から2013年3月31日に神戸市の乳幼児健診対象となった児のうち,曝露とアウトカムに欠損のない53,505人を最終的な解析対象者とした。妊娠届出書より母親と同居家族の喫煙状況,4か月児健診の問診票より生後の受動喫煙状況を特定し,これらの情報をもとに児への喫煙曝露を排他的に8群に分類した。アウトカムは,喘息あるいはアトピー性皮膚炎の3歳までの罹患とし,3歳児健診の問診票より特定した。統計解析においては,妊娠期の母体喫煙,妊娠期の受動喫煙,生後の受動喫煙と3歳までの喘息,アトピー性皮膚炎罹患との関連について,一般化線形混合モデルによりオッズ比と95%信頼区間(confidence interval:CI)を推計した。なお,調整因子の欠損値は多重補完を行った。

    結果 解析対象者となった53,505人のうち,男児27,210人(50.9%),女児26,218人(49.0%)であった。3歳までの喘息罹患者は5,810人(10.9%),アトピー性皮膚炎罹患者は4,964人(9.3%)であった。喘息罹患に関しては,喫煙曝露いずれもなし群に対して,妊娠期の母体喫煙のみある群のオッズ比が2.04(95%CI:1.38-3.01)で最も高かった。また妊娠期の母体喫煙がなく,受動喫煙のみがある場合は,オッズ比1.12(95%CI:1.01-1.25)であったが,妊娠期の母体喫煙がある場合は,オッズ比が1.86(95%CI:1.42-2.44)と上昇していた。一方で,アトピー性皮膚炎の罹患については,いずれの喫煙曝露も有意な関連は見られなかった。

    結論 本検討より,妊娠期の喫煙や生後の受動喫煙は子の喘息罹患と関連することが確認された。妊娠中の女性の禁煙を推進するだけでなく,同居家族を含めた禁煙指導の推進が必要であると考えられた。

  • 鈴木 有佳, 仙田 幸子, 本庄 かおり
    2021 年 68 巻 10 号 p. 669-676
    発行日: 2021/10/15
    公開日: 2021/10/06
    [早期公開] 公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー

    目的 出産を経ても就業を継続する女性の割合が増加している。欧米では,女性の特定の職種が出産時・出生後の児の死亡リスクと関連することが報告されているが,日本ではこの関連を検討した疫学研究はない。そこで本研究は,全国調査データを用い,母親の職種による妊娠12週以降出生までの児の死亡リスク(解析1),出生から出生1年後までの児の死亡リスク(解析2)について検討することを目的に実施した。

    方法 1995, 2000, 2005, 2010, 2015年度人口動態職業・産業調査(出生票,死産票)ならびに1995-96,2000-01,2005-06,2010-11,2015-16年度人口動態調査(死亡票)を用いた。解析1では生まれた児のうち,5,355,881人を対象とし,解析2では同期間に出生した児のうち,5,290,808人を対象とした。説明変数は母親の職種(管理・専門・技術,事務,販売,サービス,肉体労働,無職),目的変数は自然死産(自然死産なし=出生)(解析1),新生児・乳児死亡(新生児・乳児死亡なし=出生1年後生存)(解析2)とし,ロジスティック回帰分析を用いて解析した。また,有職者における職種に起因した自然死産の人口寄与危険割合を算出した。

    結果 自然死産は61,179人(1.1%),出生した児のうち新生児・乳児死亡は12,789人(0.2%)だった。出産時の母親の職種が管理・専門・技術と比較した,事務,販売,サービス,肉体労働,無職の,自然死産に関する調整オッズ比(95%信頼区間)は,1.24(1.20-1.29),1.48(1.41-1.56),1.76(1.69-1.83),1.54(1.46-1.61),0.95(0.92-0.98)だった。母親の職種と新生児・乳児死亡の関連は見られなかった。また,有職者における母親の職種が事務,サービスの自然死産に対する人口寄与危険割合は7.4%,12.3%だった。

    結論 本研究の結果,母親の職種により自然死産リスクに差が認められた。とくに,母親の職業がサービス職である場合,自然死産のリスクならびに人口寄与危険割合が最も高かった。一方,母親の職種と出生後の新生児・乳児死亡リスクには関連がみられなかったことから,母親の職種は妊娠期において児の状態に影響する可能性がある。本研究結果により,妊娠期の母親の職業に注意を払う必要が示唆される。

Public health report
資料
  • 片岡 葵, 村木 功, 菊池 宏幸, 清原 康介, 安藤 絵美子, 中村 正和, 伊藤 ゆり
    2021 年 68 巻 10 号 p. 682-694
    発行日: 2021/10/15
    公開日: 2021/10/06
    [早期公開] 公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    目的 2020年4月に改正健康増進法と東京都受動喫煙防止条例が施行された。現行の法律や条例では,喫煙専用室や飲食可能な加熱式たばこ喫煙専用室を認めている他,客席面積や従業員の有無で規制の対象外となる,客席での喫煙が引き続き可能な飲食店(既存特定飲食提供施設)が存在するため,飲食店の禁煙化に地域差が生じる懸念がある。また日本では,路上喫煙防止条例がすでに多くの自治体で施行されているため,店舗外での喫煙が困難となり,店内の禁煙化が妨げられる可能性がある。本研究では,既存特定飲食提供施設を対象として,法律や条例施行前の飲食店の屋内客席喫煙ルールと施行後のルール変更に関する意向を把握し,法律や条例制定による屋内客席喫煙ルールへの影響を地域ごとに検討することとした。

    方法 東京都,大阪府,青森県の20市区町村で営業している飲食店6,000店舗に対し,2020年2~3月に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,法律や条例の施行前および施行後に変更予定の屋内客席喫煙ルール,業種,客席面積,従業員の有無,客層や客数,禁煙化に関する不安,国や行政に期待する内容とした。解析は,屋内客席喫煙ルールを「全面禁煙」「分煙」「喫煙可」に分け,変化の推移を割合で算出した。解析対象は既存特定飲食提供施設とした。

    結果 回答は879店舗より得られ,既存特定飲食提供施設は603店舗であった。分煙・喫煙可能から禁煙化にする予定の店舗は,東京都で5.2%(3/58),大阪府で23.1%(31/134),青森県で17.2%(57/326)であった。現在すでに全面禁煙であり,法律や条例施行後も変更予定がない店舗を加えると,法律や条例施行後に全面禁煙となる予定の店舗は,東京都で46.6%(55/118),大阪府で49.6%(113/228),青森県で48.6%(125/257)であった。

    結論 既存特定飲食提供施設において,分煙・喫煙可能から禁煙化にする予定の店舗は17.6%(91/518)であった。禁煙化に踏み切らない背景として,顧客数や売り上げ減少への不安,喫煙者からのクレームなどの懸念が考えられるため,禁煙化による営業収入の変化についての知見の蓄積を行うとともに,店内を禁煙にした場合の喫煙者への対応や,公衆喫煙所などの環境整備が禁煙化の促進に必要と考える。

  • 高橋 英章, 本田 光, 居林 基, 斉藤 佳代子, 秋野 憲一
    2021 年 68 巻 10 号 p. 695-705
    発行日: 2021/10/15
    公開日: 2021/10/06
    [早期公開] 公開日: 2021/07/15
    ジャーナル フリー

    目的 札幌市における地域検診および個人・職域を含めたがん検診受診の実態を独自調査によって明らかにすること,がん検診受診率が低い集団を特定し,がん検診受診率を向上させるための施策の基礎資料とすることを目的とした。

    方法 札幌市在住の40~69歳の男性3,000人および20~69歳の女性4,000人を対象にした自記式質問票による調査を実施した(有効回収率:32.4%)。調査内容は,国民生活基礎調査の健康票のうちがん検診受診に関するものを引用したほか,基本属性,がん関連属性とした。χ2検定またはロジスティック回帰分析を用い,がん検診受診率と基本属性,がん関連属性との関連を解析した。

    結果 本研究の胃がん検診受診率は男性67.4%,女性48.7%,大腸がん検診受診率は男性59.2%,女性47.7%,肺がん検診受診率は男性66.1%,女性53.4%,子宮がん検診受診率は52.7%,乳がん検診受診率は56.1%だった。

     男女ともにすべてのがん種において,就労していない者または国民健康保険に加入している者の受診率が有意に低かった。属性とがん検診受診に関して,就労なしに対する就労ありのオッズ比は,男性3.00~3.09 (肺がん3.00 95%信頼区間:2.09-4.32,大腸がん3.03 95%信頼区間:2.09-4.38,胃がん3.09 95%信頼区間:2.09-4.57),女性1.41~2.46だった。医療保険が国民健康保険の人に比べ,それ以外の保険の人の受診オッズ比は,男性3.47~4.26,女性1.47~2.52だった。また,男女ともに札幌市がん検診の認知度とがん検診受診に女性の胃がん検診を除いて有意な関連がみられ,認知度ありのオッズ比は,男性1.41~1.74,女性1.24~1.48だった。

    結論 がん検診受診率が50%を下回ったがん種は,女性の胃がんと大腸がんのみであり,とくに男性は胃・大腸・肺すべてのがん検診受診率が50%を超えていた。男女ともに就労していない者,国民健康保険に加入している者,札幌市がん検診(地域検診)を認知していない者のがん検診受診率が低い傾向にあり,国民生活基礎調査のみでは示されなかった札幌市における低受診者集団の特徴が明らかとなった。

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