日本公衆衛生雑誌
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原著
  • 北岡 かおり, 門田 文, 由田 克士, 岡見 雪子, 近藤 慶子, 原田 亜紀子, 奥田 奈賀子, 大久保 孝義, 岡村 智教, 三浦 克 ...
    2026 年73 巻2 号 p. 139-146
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    目的 全国の一般地域住民を対象に,随時尿で評価した推定食塩摂取量,推定カリウム摂取量,尿ナトリウム/カリウム比(Na/K比)について,性・年齢群別および地域別にベースラインと10年後の調査結果を比較した。

    方法 平成22年国民健康・栄養調査参加者を対象としたコホート研究であるNIPPON DATA2010の2020年度追跡調査対象者2,244人を対象とした。尿検査への参加同意者798人に自己採尿キットを送付して採尿した。推定食塩摂取量(g/日),推定カリウム摂取量(mg/日)は田中の式を用いて算出,また尿Na/K比(mmol/mmol)を算出した。2010年時と2020年時の両方の尿検査結果がある者は667人(ベースライン時平均年齢54.8±13.4歳,女性59.1%)であった。ベースライン時点の年齢で男性60歳未満,男性60歳以上群,女性60歳未満群,女性60歳以上群の4群に分類,地域は7地域に分類した。ベースラインと10年後の比較は対応のあるt検定を用いて評価した。

    結果 ベースライン時と10年後の性・年齢区分による比較では,推定食塩摂取量はすべての群において有意差を認めなかった。推定カリウム摂取量は男性60歳以上群,女性60歳未満・60歳以上群で有意に高値を示し,男性60歳未満は10年後が高い傾向を示した。尿Na/K比は男性60歳以上群:ベースライン4.14±2.57,10年後3.38±2.10(P=0.002),女性60歳未満群:ベースライン4.05±2.23,10年後3.44±1.91(P<0.001),女性60歳以上群:ベースライン3.76±1.79,10年後3.03±1.78(P<0.001)であったが男性60歳未満では有意な差を認めなかった。地域区分別では,尿Na/K比が東北,関東,近畿で10年後に有意に低値を示した。

    結論 全国の一般住民において,ベースラインと10年後の尿検査値を比較した結果,女性および60歳以上男性は推定カリウム摂取量が有意に高値,尿Na/K比が有意に低値を示した。本研究において特定の性,年齢群や地域における対策強化の必要性が示唆された。

  • 吉田 明日香, 平野 美千代
    2026 年73 巻2 号 p. 147-155
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的 社会的孤立は退職など生活環境が変化する高齢者において対応すべき課題であり,社会的孤立の予防には,ソーシャルインクルージョン(Social Inclusion:SI)や地域の人々とのつながりの構築が重要である。とくに,高齢者の場合,主観的な地域の人々とのつながりについて明らかにすることは,地域のつながりの構築に向けて重要である。そこで本研究は,高齢者における地域の人々とのつながり観とその関連要因を明らかにすることを目的とする。

    方法 対象は,都市部に在住する70歳代,80歳代の男女800人とした。2024年2月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,属性,地域の人々とのつながり観,ソーシャルネットワーク(Social Network:SN),SI,地域の関係性とした。分析は,従属変数は地域の人々とのつながり観,独立変数はSN,SI,地域の関係性,共変量を属性とした強制投入法による重回帰分析を行った。

    結果 回収数は338部,有効回答数は316部(有効回答率39.5%)であった。対象の平均年齢は79.0±5.4歳,男性172人(54.4%)であった。地域の人々とのつながり観の平均点は83.4±17.6点,最低点は36点,最高点は131点であった。重回帰分析の結果,地域の人々とのつながり観と有意に関連したのは,SN(標準偏回帰係数(β)=0.124,P=0.012),SIの「つながり」(β=0.132,P=0.023),SIの「参加」(β=0.100,P=0.047),地域の関係性(β=0.469,P<0.001)であった。

    結論 高齢者の主観的なつながりにはSNやSIの「つながり」「参加」という客観的なつながりが関連していた。地域住民全体がつながっているという地域の関係性のとらえ方が高齢者における地域の人々とのつながり観に関連することが示唆された。地域の人々の行動などの地域全体への伝播や地域の質の向上が,地域の人々とのつながり観へ関連したことが推察される。

  • 有馬 和代, 伊藤 美樹子
    2026 年73 巻2 号 p. 156-166
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/11/04
    ジャーナル フリー

    目的 パンデミック時の行政保健師による電話を用いたCOVID-19患者の在宅療養支援に対する対応技術を明確化する。

    方法 府県,政令指定都市,中核市を含む5つの保健所から,COVID-19患者の在宅療養経験がある管理職保健師,新任期保健師各5人に面接調査を実施し,Braun & Clarkeらを参考に質的研究を行った。

    結果 分析より,電話対応時に必要な対応技術として68コードが得られ,内10コードは管理職保健師のみから得られた。全コードから8カテゴリーに統合され,最終的に3つの主要な対応技術に統合された。3つの主要対応技術は『非協力的,攻撃的な人をも含む面識のないCOVID-19患者との継続的な支援関係の構築技術』と,『変化に即応した最適な感染症の療養環境の構築技術』,『COVID-19患者や家族のセルフケア能力を高める支援技術』である。パンデミック下で在宅療養中のCOVID-19患者への電話での療養支援では,表出された言語だけでなく,多角的な根拠情報を得るため,更なる言語的な表出の促しや非言語的な情報収集も行っていた。また応答拒否や処遇への非難,叱責,強い要求への対応も含まれていた。管理職保健師のみから語られていた内容のカテゴリーは,【まん延防止措置に対する反発を受止めつつ,行政権限を行使する保健所職員の立場を自覚し,COVID-19患者の応諾を得るために説明を尽くそうと努める】,【COVID-19患者や家族,その地域に生活する人の視点からコロナの脅威を理解し,啓発活動に繋げる】であり,それ以外のサブカテゴリーでは[患者に意図的に指示を出し,体位や動作反応から精度の高いバイタル情報を引き出す]であった。管理職保健師は,豊富な経験値から患者や家族の様子を想像しやすく,感情的知性を発揮して効果的な会話を行うことができており,これが「異常」を察知する力にも繋がっていた。

    結論 本研究は,COVID-19患者への電話での在宅療養支援の経験で用いた判断や態度,考え方を含む対応技術が抽出され,感染症における公衆衛生上の特有な問題に対処する技術が見出されていることから,今後の感染症対応に強い保健師の育成に有益な知見と考える。

公衆衛生活動報告
  • 妹尾 優佳里, 藤井 秀樹, 金 弘子, 桑原 祐樹, 金城 文, 尾﨑 米厚
    2026 年73 巻2 号 p. 167-175
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/11/04
    ジャーナル フリー

    目的 アルコール等依存症者家族の実態把握と必要な支援の検討を行う。

    方法 鳥取県西部で活動する依存症者家族の自助グループ会員に対し,2023年7月1日~同年9月10日,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査にあたり鳥取県福祉保健部倫理審査委員会の承認を得た。

    活動内容 調査票は105部配布し57部回収した(回収率54.3%)。回答者(家族)は57人,回答者(家族)が答えた当事者は59人だった。

    調査結果から,家族が相談した時の当事者の特性と状況では,当事者の依存対象は,アルコール25人,ギャンブル17人,その他17人だった。うち,12人(20%)には依存対象が複数重複しているクロスアディクションがあった。アルコール依存症者では,家族が相談に至る以前に20人(61%)が医療機関にかかっており,うち12人(60%)が内科を受診していた。加えて,16人(49%)が健診を受けており,うち10人(63%)が肝機能障害の指摘を受けていた。また,当事者の34人(58%)は経済的に困難な状況だった。

    回答者(家族)の特性は,女性48人(84%),男性8人(14%),無回答1人(2%)であり,年齢は50代20人(35%)が最も高い割合だった。回答者(家族)の相談時の状況では,家族が相談に至った理由は,「どうしようもない状態になった41人(72%)」が最も高い割合だった。さらに,相談時の家族の42人(74%)は依存症を病気だと思っていなかった。加えて,家族の32人(56%)が経済的に苦しい状況だった。

    家族が今後求める支援では,「相談窓口の周知(75%)」,「相談窓口同士の連携(68%)」が見られた。さらに自由記載で若者を対象とした普及啓発への要望が複数見られた。

    アンケート結果を受けて当所では,以下の新たな取組を行った。1)保健所内の様々な担当課や市町村の既存事業と連携することで一次・二次予防の対象者の拡大を進めた。2)地域住民に向けた依存症啓発チラシを作成し,管内市町村の自治会組織への回覧や民生児童委員などの地域の人材を活用した啓発活動を行った。3)医療機関や法律専門家に向けて,依存症者の早期発見を目的に,作成した住民向け啓発チラシの活用を依頼した。

    結論 今回の調査を通して,アルコール等依存症者家族の実態を把握することにより,必要とされる支援が抽出され新たな取組に繋がった。

資料
  • 三澤 奈菜, 竹原 健二
    2026 年73 巻2 号 p. 176-187
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    目的 子育てにおける経済的な負担感が社会的に注目を集めている。しかし,子育て費用全般に関する大規模な調査は,2009年に内閣府がWeb調査で実施して以来,ほとんど行われてこなかった。今回,第一子が0歳~18歳で,未就学・小学生・中学生・高校生の年間子育て費用と18年間の合計子育て費用および2009年からの変化を明らかにし,今後の子育て世帯の経済的支援に役立てることを目的として調査を行った。

    方法 2024年11月に日本在住の第一子が0歳~18歳で,未就学・小学生・中学生・高校生の母親を対象に子育て費用のウェブ調査を実施した。子育て費用は内閣府の調査と比較できるように配慮しつつ,13カテゴリー(A:衣類,B:食費,C:生活用品費,D:医療費,E:保育費,F:学校教育費,G:学校外教育費,H:学校外活動費,I:携帯料金,J:おこづかい,K:お祝い行事関係費,L:預貯金・保険,M:レジャー・旅行費)で収集した。年齢・学年別に各項目の年単位の費用の平均値,標準偏差(SD)を求め,3SD外の数値を除いた平均値を計算した。これら合算し,年齢・学年別のカテゴリー別の総計,年間子育て費用を算出した。また,内閣府による2009年調査の結果と本研究の結果を比較した。

    結果 0歳~18歳の各年齢の母親246人~350人,合計6,408人の回答があり,有効な回答は4,166人であった。0歳~高校3年生の18年間に要する子育て費用の合計は25,701,956円で,預貯金・保険を除くと21,727,154円であった。0歳~18歳(高校3年生)の年間子育て費用は,年齢とともに増加し,また,中学校と高校に進学する年に教育費の負担が大きかった。また,0歳~中学3年生の15年間の合計費用は2009年の内閣府による調査では18,995,250円,本研究では19,530,626円で同程度であった。しかし,0歳~中学3年生の年間子育て費用における生活費の割合は増加していた。

    結論 本研究により,収入が低い世帯ほど生活費が収入に占める割合が高く,高校生の在学期間や進学する年における費用負担がとくに大きいことが明らかとなり,子育て世帯の経済的実態が示された。このようなデータに基づき,子育て世帯に対する経済的な支援のあり方が検討されることが望ましい。

  • 山田 秀彦, 岩佐 一, 石井 佳世子, 井高 貴之, 安村 誠司
    2026 年73 巻2 号 p. 188-198
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/10/15
    ジャーナル フリー

    目的 女性労働者は就労上で月経に関する様々な困難感を抱えている。先行研究では5割の女性労働者は,職場が月経による体調不良者への理解がないことなどを報告している。一方,男性労働者における女性の月経に伴う症状への知識の現状等を明らかにした知見は多くない。本研究では,男性労働者における女性の月経に伴う症状等への知識と基本属性(年代,職位,配偶者・パートナーの有無)との関連および産業保健実践の示唆を検討することを目的とした。

    方法 2023年8月7~28日に福島県内の製造業である2つの事業所に勤務する男性労働者へ無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,月経に関する知識(月経前や月経中に出現する症状,月経異常に関すること,月経に関する社会の動向)で,知っているまたは知らないの2件法で尋ねた。対象者の基本属性と月経に関する知識の有無を記述統計で把握し,月経に関する知識の有無と基本属性との関連をχ2検定および残差分析で検討した。

    結果 2つの事業所をあわせて311人へ配布し,190人(回答率61.1%)より回答があり,165人を分析対象とした。月経前や月経中に出現する症状および月経異常に関する知識は,「怒りっぽくなる」「大量の出血」「倦怠感」「気分の落ち込み」「下腹部痛」「月経不順・無月経」を7割以上が知っていた。一方,「かゆみ」「発汗」「ホットフラッシュまたはのぼせ」を知っている人は,約2割であった。月経異常は,「過長月経」を知らない人が約7割であった。「月経に関する社会の動向」は,9割前後の人が知らなかった。月経に伴う症状等の知識と基本属性との関連は,10歳代では「食欲の増進」,20歳代では「胸の張り」「眠気」「食欲の増進」を知っていた。一方,50歳代では「眠気」「食欲の増進」,60歳代では「胸の張り」「食欲の増進」を知らなかった。管理職では,「怒りっぽくなる」「大量の出血」「下腹部痛」「集中力の低下」「発汗」を知っていた。配偶者・パートナーがいる方が「ホットフラッシュまたはのぼせ」を知っていた。

    結論 月経前や月経中に出現しやすい症状は知っている人が多かったが,出現しにくい症状や月経異常,月経に関する社会の動向は知らない人が多かった。男性労働者の月経に関する知識向上に向けて,社内研修における月経に関する情報提供が考えられるが,効果的な方策について更なる検討が必要である。

  • 横山 芳乃, 中尾 杏子, 上村 晴子, 井出 博生, 古井 祐司
    2026 年73 巻2 号 p. 199-208
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/03/04
    [早期公開] 公開日: 2025/11/04
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的 特定健診の効果を最大化するには受診率の向上が不可欠であり,各自治体は様々な工夫をしている。しかしそれらは明文化されることなく暗黙知のまま散逸していることが多い。このような背景のもと,本研究では受診率向上に向けた各自治体の工夫を明文化し実態を明らかにすること,また,その工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率との関連を検討することを目的とした。

    方法 山形県の全35市町村国民健康保険を対象とし,35市町村からは共通様式「保健事業カルテ」にて,加えて2市町からはヒアリングで受診率向上に向けた工夫を収集した。次いで収集された工夫を専門家チームが業務フロー別に6カテゴリーに分類した。この6カテゴリー47項目で構成されたアンケートを県内全35市町村を対象に実施した。アンケートにより把握された工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率をFisherの正確確率検定にて比較し,規模による工夫の違いと受診率を上げる要素を検討した。有意水準は両側5%とした。

    結果 アンケートの回答率は100%であった。カテゴリー別では,受診勧奨の工夫が最も多く(19項目),次いで周知の工夫(10項目)が多かった。特定健診対象者数の中央値(2,463人)を基準に市町村を2群に分けて工夫の実施状況を比較したところ,「医師会と事業の進捗や課題に関して定期的に会議・意見交換をしている」については,対象者数の多い市町村の方が多く実施しており,有意差を認めた。受診率についても同様に中央値(52.9%)を基準に群間の差を検定したところ,「対象者を絞って受診勧奨をしている」,「勧奨業務(郵送)を外部委託している」,「受診勧奨通知を2回以上送付している」の3項目について有意差を認めた。いずれも受診率が低い群の方が各工夫を実施している割合が高かった。一方,調査対象としたすべての工夫において受診率との有意な正の関連を認めなかった。

    結論 特定健診の受診率向上に向けて市町村が行っている工夫を明文化し事業内容の実態を明らかにすることができた。対象者数の規模による工夫の違いも明らかとなり,今後自治体の規模に応じた取組を検討する上での参考となる。一方,受診率が高い市町村が多く実施する工夫の識別はできなかった。今回は一県の限られたデータであることから,受診率向上のために今後は他県を含めて継続的に調査し知見を集積していく必要がある。

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