日本公衆衛生雑誌
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特別論文
  • 古屋 好美, 中瀨 克己, 武村 真治, 長谷川 学, 冨尾 淳, 片岡 克己, 佐藤 修一, 永田 高志, 久保 達彦, 小坂 健, 寺谷 ...
    原稿種別: 特別論文
    2020 年 67 巻 8 号 p. 493-500
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的 健康危機管理における実務活動の側面から現状と課題を明らかにし,必要な学術的検討を提言するとともに施策への反映を図る。

    活動方法 公衆衛生モニタリング・レポート委員会健康危機管理分野のグループ活動として,2017年度から2019年度にかけて,産学官危機管理調整システム普及サブグループにおいて,日本公衆衛生学会における実務活動に関する学術論文・発表の分析,日本公衆衛生学会総会シンポジウム活動による論点整理を実施した。

    活動結果 保健医療行政が行った健康危機管理の事後評価は熊本地震以降増えており,また,地域保健の現場にも健康危機管理の改善を目指す多くの芽生えといえる取り組みがあった。一方で多分野間連携システムに関する論文は公衆衛生領域には少なかった。被災自治体は危機管理の主体であり,マネジメントの責務を負うため,平時からマネジメントや受援の準備が必要であることが示唆された。健康危機管理においてもあらゆる災害(all hazards)に対応できる体制を構築するために,危機管理の基本である情報集約・分析・判断・実行・評価のサイクルの確立(危機管理調整システム)と危機管理の実務を支える学術基盤の強化が望まれる。2019年の日本公衆衛生学会シンポジウムでは,災害時にも機能する地域包括ケアを担う人材のコンピテンシーの明確化,公衆衛生分野での災害対応人材の充実およびシステム改善の具体策として危機管理体制変更におけるキーパーソンへの働きかけが必要であると方向づけられた。産学官3分野の実践例を踏まえ,また,当モニタリンググループの学術的基盤強化サブグループによる検討とあわせて考えると,健康危機管理手法の標準化により,対応事例の検証や経験の共有が容易となり,科学的な蓄積を通じて,健康危機管理に必要な組織の強化や運用,実務の改善も共に進展する蓋然性は高い。

    結論 健康危機管理を実務活動面から見た結果,健康危機管理の共通基盤および公衆衛生以外の分野を含む分野横断的な連携の必要性が明確となった。健康危機管理について共通の考え方・手法を確立することにより,学術研究と実務とを両輪とした健康危機管理の発展のため,本学会内における研究へのリーダーシップを図るとともに他学会等への働きかけを日本公衆衛生学会として組織的に実施する必要がある。

原著
  • 黒崎 宏貴, 吉村 健佑
    原稿種別: 原著
    2020 年 67 巻 8 号 p. 501-508
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的 第3期医療費適正化計画では「糖尿病の重症化予防」,「特定健康診査・特定保健指導の推進」,「後発医薬品の使用促進」,「医薬品の適正使用」により1人当たり外来医療費の地域差縮減を目指している。この目標を達成するためには都道府県単位での具体的な取組目標を設定することが重要となる。厚生労働省はレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を構築し公表している。これまでNDBオープンデータを活用して糖尿病医療費の地域差について解析した研究は行われていない。本研究では,NDBオープンデータを活用し,入院外糖尿病医療費について,ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬の処方箋料の地域差およびスルホニル尿素薬(SU薬),グリニド薬,ビグアナイド薬,α-グルコシダーゼ阻害薬,チアゾリン誘導体薬の後発医薬品の使用割合の地域差,都道府県別の糖尿病透析予防指導管理料の地域差について解析した。そして,都道府県差が示されている人口当たり糖尿病医療費との相関を解析することで地域差の要因について解析し,地域差縮減に向けたデータを提示する。

    方法 第2回NDBオープンデータ(集計対象:平成27年度レセプト情報および平成26年度特定健康診査情報)を使用した。本研究では,糖尿病についての入院外医療費のみを研究対象とした。NDBオープンデータより各要因を抽出し,人口当たり糖尿病医療費との関係を評価するためにピアソンの積率相関係数rを算出した。相関係数の検定にはStudentのt検定を用いてP値を算出した。P値は0.05未満の場合を有意水準とした。

    結果 人口当たりDPP-4阻害薬処方箋料が高い都道府県では糖尿病医療費が高い傾向にあることが明らかになった(r=0.40, P=0.0048)。また,SU薬の後発医薬品の使用割合が高い都道府県では糖尿病医療費が低い傾向にあることが分かった(r=−0.43, P=0.0023)。糖尿病の重症化予防という点について,糖尿病透析予防指導管理料は糖尿病医療費との相関は認められなかった(r=−0.096, P=0.52)。

    結論 本研究では,NDBオープンデータを用いることで,DPP-4阻害薬処方箋料やSU薬後発医薬品の使用割合に地域差があり,人口当たり糖尿病医療費に関与している可能性が示唆された。本研究により,糖尿病医療費の都道府県差縮小に向けた政策立案にNDBオープンデータが有用であることが示唆された。

  • 田谷 元, 桑原 和代, 東山 綾, 杉山 大典, 平田 あや, 佐田 みずき, 平田 匠, 西田 陽子, 久保 佐智美, 久保田 芳美, ...
    原稿種別: 原著
    2020 年 67 巻 8 号 p. 509-517
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的 非特異的なストレス指標であるThe Kessler 6-Item Psychological Distress Scale(K6)スコアの将来的な悪化を予測できる健康関連要因を探索する。

    方法 がんや循環器疾患の既往歴がなく,高血圧,糖尿病,脂質異常症の治療中でない,健康な都市住民を対象としたコホート研究であるKobe Orthopedic and Biomedical Epidemiological study(KOBE study)のベースライン調査(2010~2011年度)に参加した1,117人にK6日本語版による質問紙調査を実施した。本研究ではK6≧5点をストレスあり群,K6<5点をストレスなし群と定義した。4年後の追跡調査が2014~2015年度に実施され,1,004人が参加した(追跡率90%)。欠損値がある39人,ベースライン調査時にK6≧5点であった185人を除く780人を本研究の解析対象とした。K6スコアのほかに性別,年齢,家族状況(単身/同居),運動・レクリエーションによる身体活動量,平均睡眠時間,screening version of the Hearing Handicap Inventory for Elderly(HHIE-S)日本語版,Oswestry Disability Index(ODI)日本語版を調査項目とした。4年後追跡調査時のK6≧5点を従属変数,ベースライン調査時の各因子を独立変数としたロジスティック回帰分析を行った。

    結果 解析対象者780人のうち,4年後追跡調査時にストレスあり(K6≧5点)となったのは132人(16.9%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,年代(40歳代/70歳代)(オッズ比3.38, 95%信頼区間1.45-7.86),家族状況(単身/同居)(オッズ比1.98, 95%信頼区間1.07-3.68),ODIスコア(1%)(オッズ比1.05, 95%信頼区間1.01-1.09)の項目でストレスと有意な関連が見られた。

    結論 年齢,家族状況,腰痛・関節痛による機能障害の程度が将来的なストレスに関連していることが示唆された。

公衆衛生活動報告
  • 西田 和正, 河合 恒, 解良 武士, 中田 晴美, 佐藤 和之, 大渕 修一
    原稿種別: 公衆衛生活動報告
    2020 年 67 巻 8 号 p. 518-527
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的 我々は,フレイル高齢者では,地域における役割がないことが,社会からの離脱を早め,二次的に心身機能維持の意欲が低下していると考え,地域保健モデルであるコミュニティアズパートナー(Community As Partner:CAP)に基づく介入によって地域における役割期待の認知を促す,住民主体フレイル予防活動支援プログラムを開発した。本報告では,このプログラムを自治体の介護予防事業等で実施できるよう,プログラムの実践例の紹介と,その評価を通して,実施可能性と実施上の留意点を検討した。

    方法 プログラムは週1回90分の教室で,「学習期」,「課題抽出期」,「体験・実践期」の3期全10回4か月間で構成した。教室は,ワークブックを用いたフレイル予防や地域資源に関する学習と,CAPに基づく地域診断やグループワークを専門職が支援する内容とした。このプログラムの実践を,地域高齢者を対象としたコホート研究のフィールドにおいて行った。基本チェックリストでプレフレイル・フレイルに該当する160人に対して案内を郵送し参加者を募集し,プログラムによる介入と,介入前後にフレイルや地域資源に対する理解度や,フレイル予防行動変容ステージについてのアンケートを行った。本報告では,参加率やフレイルの内訳,脱落率,介入前後のアンケートをもとにプログラムの実施可能性と実施上の留意点を検討した。

    結果 参加者は42人で(参加率26.3%),プレフレイル25人,フレイル17人であった。脱落者は10人であった(脱落率23.8%)。介入前後でフレイルの理解は5項目中4項目,地域資源の理解は,11項目中6項目で統計的に有意な向上を認めた(P<0.05)。フレイル予防行動変容ステージは,維持・向上したものが26人(81.2%)だった。

    結論 住民によるグループワークを専門職が支援するプログラムであっても,専門職が直接介入する従来型プログラムと同程度の約3割の参加率があった。一方,脱落率はやや高く,事前説明会で参加者に教室の特徴を理解させることや,教室中はグループワークに参加しやすくするための専門職の支援が重要であると考えられた。また,アンケート結果から,プログラムによってフレイルや地域資源への理解度が向上し,フレイル予防行動の獲得も示唆された。

資料
  • 上田 進久
    原稿種別: 資料
    2020 年 67 巻 8 号 p. 528-533
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2020/09/01
    ジャーナル フリー

    目的 阪神・淡路大震災から25年になる。被災地では多くの建物が倒壊し,大量のアスベストが飛散した。震災に関連したアスベストによる健康被害者は,マスコミによって公表された6名であるが,国や自治体による実態調査は行われておらず詳細は不明である。アスベストによる環境汚染の状況を検証し,健康リスクを評価するために,被災地で実施された調査資料を検討した。

    方法 震災直後から環境庁が実施したアスベスト濃度測定の調査資料を検討した。

    結果 倒壊した建物からは最も危険とされている青や茶石綿が飛散し混合曝露の状態であったが調査では白石綿濃度だけの測定であった。これがアスベスト濃度として表記されており,白石綿濃度だけに基づく健康リスクは実際よりも低く評価されていると考えられる。

    結論 被災地におけるアスベストによる環境汚染は多角的な角度からの検証が重要であり,混合曝露による健康リスクを正しく評価しなければならない。作業員の他にも住民やボランティアなどのハイリスクの人達への注意喚起が求められる。さらに,二次災害としての健康被害者の拡大を防止するために,実態調査や追跡調査が重要であり,その受け口としての検診体制の構築が急務である。

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