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加藤 佳子, 小島 亜未, 古屋敷 智之, 篠原 正和
原稿種別: 原著
論文ID: 24-110
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/22
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電子付録
目的 少子高齢社会を背景に健康寿命の延伸が目ざされる中,生活習慣の改善により,メタボリックシンドローム(MetS)を予防し健康に関する生活の質(HR-QOL)を保つことは重要な課題である。そこでプリシード・プロシードモデルに基づき,生活習慣およびMetSの状況のHR-QOLに対する関係や生活習慣のMetSの状況に対する関係を検討することを目的として研究を行った。
方法 S県職員1,393人(男性1,077人48.7±9.2歳,女性316人45.4±8.6歳)を分析対象者とした。SF-12を用いHR-QOLの身体的要素(PCS),心理的要素(MCS),社会的要素(RCS)を評価し,MetS判定およびMetS関連指標(腹囲,BMI,血圧測定値,空腹時血糖値,HbA1c,中性脂肪,HDLコレステロール,LDLコレステロール)のHR-QOLに対する関係をみた。その上で20歳の時からの体重増加,食習慣(食べる速さ,3食以外の間食の程度,就寝前の2時間以内の夕食および週に3回以上の朝食欠食の有無),咀嚼状況,身体活動・運動(汗をかく運動習慣の有無,日常的歩行等の身体活動,歩く速度),睡眠などの生活習慣のMetSの状況(MetS判定およびMetS関連指標)に対する関連も確認した。また生活習慣のHR-QOLに対する関連について,MetSの状況による影響もみながら検討した。
結果 HR-QOLのPCS,MCSに,MetS判定,腹囲,HbA1c,中性脂肪が,関連していた。その上で生活習慣とMetSの関連をみたところ,MetS判定あるいはMetS関連指標に20歳の時からの体重増加,食習慣,咀嚼状況,身体活動・運動習慣が,関連していた。また主にPCS,MCSに生活習慣は関連していたが,いくつかの生活習慣からHR-QOLへの有意な関連においては,Met判定あるいはMetS関連指標を中間変数とすることにより,その関連が有意ではなくなった。
結論 MetSの状況と生活習慣は,HR-QOLに関連している可能性が示された。またMetSの状況を介して,生活習慣がHR-QOLに関連していることも示唆された。生活習慣改善によるHR-QOL向上が期待できる。
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野藤 悠, 横山 友里, 中村 由佳, 野中 久美子, 上野 貴之, 阿部 巧, 村山 洋史
原稿種別: 原著
論文ID: 25-049
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/22
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目的 高齢期の就労は,経済的自立のみならず,心身の健康や社会的つながりの維持,生きがいづくり等,多様な意義があり,社会参加の重要な選択肢の一つになっている。一方で,高齢者の就労促進には,高齢者自身が希望する働き方を踏まえることが必要であるが,就労ニーズには複数の要因があり,それらの要因を集約したニーズは十分に明らかにされていない。本研究では,高齢者が希望する働き方を複数の要因から類型化し,各タイプの特徴を示すことを目的とした。
方法 本研究では,埼玉県和光市に住む65歳以上の男女を対象とした和光コホート研究のデータを用いた。郵送調査の有効回答者6,429人のうち,就労希望がある1,053人を分析対象とした。希望する就労日数・時間,身体を使う仕事や単純作業に対する好み,仕事を選ぶ際に重視すること(給料,経験やスキルの活用,社会貢献を実感できること)から,非階層クラスター分析にて対象者を分類し,性別,年齢階級,暮らし向き,最長従事職,現在の就労状況,フレイル,希望する職種について,カイ二乗検定による3群間比較と多重比較を行った。
結果 クラスター分析の結果,その特徴から高齢者の就労ニーズは3つに分類された。「低頻度・短時間スキル活用型就労」(35.2%)は,週1–4日で1–4時間未満/日の仕事を希望し,身体を使う仕事や単純作業を好まず,経験やスキルを活かせること,人や社会の役に立つと思えることを重視するという特徴があった。この群は他群に比べて暮らし向き良好者や元専門/技術職の割合が高かった。「低頻度・短時間マニュアル型就労」(25.6%)は,週1–4日で1–4時間未満/日の仕事を希望し,単純作業を好むという特徴があった。この群は他群に比べて未就労者やフレイル者の割合が高かった。「中頻度・中時間体力型就労」(39.1%)は,週3–4日で4–7時間未満/日の身体を使う仕事を好むという特徴があった。この群は他群と比べて男性や65–69歳,現役勤労者,元ブルーカラー職の割合が高かった。
結論 3タイプの就労ニーズの特徴と各クラスターの背景要因が明らかになった。本知見は就労機会の創出やマッチングに活用できる可能性がある。
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吉岡 みずき, 岡田 知佳, 中村 美詠子
原稿種別: 資料
論文ID: 25-061
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/22
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目的 本調査は,ICT(Information and Communication Technology)を利活用した健康づくりのための環境整備に向けて,全都道府県における健康増進アプリ(以下,健康アプリ)の導入の有無とその内容を明らかにすることを目的とした。
方法 全都道府県を対象とし,2024年8月6日から9月3日までの間に,都道府県の公式ホームページ及び都道府県が運営する健康増進事業や健康アプリの特設サイトから情報を収集した。調査項目は,2024年度における健康アプリの導入の有無,導入期間,開発主導者,対象者,利用実績,機能とし,機能は行動記録,健康管理,健康情報取得,競争性,ゲーム性,インセンティブの6つに分類して整理した。
結果 健康アプリを導入していたのは34都道府県(72.3%)であった。健康アプリの導入開始年は2014年度から2024年度であった(期間限定事業を除く)。アプリの開発主導者は,自治体と民間企業に分かれ,開発主導者が自治体の場合は,歩数や健康管理に加えて,健診受診やイベント参加等を含む幅広い機能を有する傾向にあった。一方,民間企業の場合は,単一または少数の機能を有するアプリを自治体が活用する傾向にあった。民間企業のアプリでは,利用者が居住地等の該当する自治体を設定して利用する仕組みを設けている場合が多く,自治体がアプリ内のイベントやキャラクター,インセンティブのような主要機能以外の一部を,独自の仕様にできる工夫が採用されていた。機能に関しては,行動記録では歩数(33都道府県)が最も多く採用され,次いでイベント参加(21都道府県),健診受診(18都道府県)であり,健康管理では,体重(28都道府県)が最も多く,次いで消費カロリー(22都道府県),血圧(19都道府県)が多く,取得できる健康情報の内容では,運動の方法(11都道府県)が最も多かった。また,行動変容やアプリ利用継続の動機付けを図るために,歩数やポイントのランキングといった競争性(28都道府県)や,キャラクター等を収集や育成といったゲーム性(13都道府県),優待や抽選,その他条件付(ランキング上位者に限る)によるインセンティブ(30都道府県)を取り入れている都道府県があった。
結論 本調査は,全都道府県における健康アプリ導入の実態を,機能の内容も含めて明らかにした。今後の自治体でのICTを活用した健康づくり施策の検討において参考になることが期待される。
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助友 裕子, 藤野 善久, 近藤 尚己
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 25-069
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/22
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目的 本報告では,ヘルスケア産業において提供されている疾病予防・健康づくりサービスを,購入者がその品質を見極めるためのチェックリスト開発のために費やしたステークホルダーとの合意形成プロセスを明らかにすることを目的とした。
方法 チェックリスト開発には,ステークホルダーとして開発者,購入者,産業保健ならびに健康教育・ヘルスプロモーションの専門家,そして研究者を含む事務局が関与した。事務局は,それ以外の四者からインタビュー,ワークショップ,質問紙のいずれかにより収集した意見を集約し,定性的な分析を行い,チェックリストの素案を作成し合意が得られるまで繰り返し修正を行った。
活動結果 開発者へのインタビューからは,4つのサービス開発に際して留意していること(エビデンスに基づいたサービス,各分野におけるRCTの枠組みの変化,日常生活に根差したサービス,ヘルスケアマーケットの現状と課題についての議論)が抽出された。購入者を対象としたワークショップからは,第1回目では8つ(全般(レイアウト),全般(言葉遣い),全般(初期設定),対象者,効果・有用性,安全性,持続性,個人情報・倫理性),第2回目では3つ(管理と運営,コミュニケーションと部門間連携,費用対効果の見きわめ),第3回では3つ(経営,事業,サービスの効果),第4回目では3つ(チェックのしやすさ,チェックリストの普及,サービス導入後のイメージ)のカテゴリからそれぞれ構成される意見が抽出された。産業保健の専門家によるエキスパートレビューにおける意見は,8つのカテゴリ(運用上の実態(導入判断),運用上の実態(複数名判断),事業計画との整合性の重要性,チェックの順番,追加項目の提案,具体例の提示,定義や例示,選択肢の改善)で整理された。健康教育・ヘルスプロモーションの専門家からの意見は,3つのカテゴリ(チェックリストの修正に関すること,ラウンドテーブルに参加しての感想,チェックリスト使用者のターゲティング)で整理された。これらの結果をふまえ,チェックリストが完成した。
結論 本活動では,専門家によるエキスパートレビューでチェックリストが妥当であると判断されたものの,今後は適切な手法で本チェックリストの妥当性の検証を行う必要がある。
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千葉 由美子, 林 芙美
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 25-077
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/22
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目的 地域飲食店においてナッジを活用し,栄養バランスに配慮した食事(T定食)の提供および情報提供を実施した。本研究では,メニューの利用状況の変化を検証するとともに,その選択理由を明らかにすることを目的とした。
方法 埼玉県戸田市Tレストラン1店舗にて,前後比較デザインの介入研究を行った。介入期間は,2024年9月~10月の8週間とした。介入内容は,①スマートミールⓇの基準に準じたT定食の提供(2種類ずつ各4週間),②メニュー表を用いた情報提供(1・2週目/5・6週目を介入A期間,3・4週目/7・8週目を介入B期間とし,介入A期間はメニュー名と価格のみのメニュー表,介入B期間は料理の写真等を追加したメニュー表の提示)を行った。T定食メニューおよびメニュー表の作成には,ナッジの枠組みであるCAN(C=便利,A=魅力的,N=日常的・当たり前)を活用した。評価は,メインアウトカムとして,メニュー区分ごとに①介入期間とその前後1か月,②介入A・B期間での食数・構成比の変化を評価した。次に,T定食の選択理由を明らかにするため,5週目と7週目にインターネット調査を実施し,初回の回答者のみを解析対象とした。対象者特性,T定食選択理由等を調査し,T定食選択者,非選択者の2群で比較した。サブ解析として,T定食選択者を介入A期間(5週目),介入B期間(7週目)の2群に分け,T定食選択理由を比較した。
結果 メニュー構成比の変化では,1~4週目はT定食以外のすべてのメニュー区分で事前(介入前)と比べて有意に減少した。しかし,5~8週目には再びグランドメニュー(定食)の構成比が増加し,介入前と同程度に戻った(5~8週目27.6%,介入前30.6%)。介入A・B期間の比較では,1~4週目には介入B期間でT定食の構成比が有意に増加し,5~8週目には介入B期間で有意に減少した。T定食の選択理由では,「女子栄養大学とのコラボだから」「野菜が多いから」「見た目が美味しそうだから」「価格が手ごろだから」を選択した者の割合が介入B期間で有意に多かった。
結論 メニューやメニュー表にナッジを活用し,見た目の彩りや価格のお得感を訴求することで,選択に繋がる可能性が示された。一方,料理自体が利用者に馴染みにくい場合や,嗜好に合っていない場合には,情報提供にナッジを活用しても選択に繋がらないことが示唆された。
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Anzu YAKUSHIJI, Ayumi MORISHITA, Koki IDEHARA, Louis Patrick WATANABE, ...
原稿種別: Original Article
論文ID: 25-018
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/17
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Objective Patients with high treatment satisfaction are known to have better treatment compliance and persistence, and the Treatment Satisfaction Questionnaire for Medication (TSQM) is a questionnaire widely used to assess treatment satisfaction. A Japanese version of this questionnaire is available; however, its application is limited. In this study, we aimed to culturally adapt and assess the psychometric properties of a newly developed Japanese version of the TSQM in patients with diabetes or migraine who were prescribed oral and injectable medications in Japan.
Methods The study included two phases; phase I, retranslation and cultural adaptation of the Japanese TSQM, and phase II, psychometric validation of the updated Japanese TSQM. Japanese patients with diabetes or migraine receiving oral and/or injection treatment were involved in the cognitive debriefing interview and psychometric validation. The retranslation and cultural adaptation of the Japanese TSQM were conducted following the process recommended by the ISPOR Task Force. The updated Japanese TSQM, finalized after amendments based on cognitive debriefing interviews, was distributed to patients for psychometric validation. The psychometric properties of the finalized Japanese TSQM were assessed using classical test and Rasch measurement theories.
Results Minor modifications were made to the Japanese TSQM after cognitive debriefing interviews with eight patients. In total, 512 patients completed the final version of the Japanese TSQM. All versions of the Japanese TSQM had moderate reliability, with Cronbach’s alpha ranging 0.6–0.9 for each domain and intraclass correlation coefficients for test-retest reliability between 0.5 and 0.6 for most domains. High item-convergent and item-discriminant validity were observed, in which all items had higher correlations with their respective domains than with other domains of the Japanese TSQM. The Rasch measurement theory added additional support to the reliability and validity of the measures as they fit the Rasch models. Additionally, high internal consistency reliability, unidimensionality of the domains, and scale invariance were supported by the values of the person separation index, Chi-square value of each domain, and differential item functioning across patient subgroups, respectively.
Conclusion The Japanese TSQM was successfully updated by revising the complex wording and removing wording specific to oral medications, making it usable for patients regardless of medication type. The updated Japanese TSQM had sufficient reliability and validity and could be used regardless of the disease and mode of administration of medication.
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三浦 雅子, 田中 克俊, 松永 晶太, 小森 哲夫, 今井 富裕
原稿種別: 資料
論文ID: 25-038
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/17
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目的 小児慢性特定疾病(以下,小慢)から指定難病への制度移行については様々な課題が指摘されているものの,これまでその実態についてはほとんど調査が行われていない。そこで,制度移行支援の実態と課題に関する行政担当者の認識と移行期医療支援センター(以下,センター)の設置有無による制度移行の差を明らかにすることを目的として調査を行った。
方法 2023年9月25日~10月20日に,全国1,772部署の保健所,保健センター,保健福祉事務所等の小慢担当者と難病担当者に,Web調査を実施した。行政担当者の基本属性,小慢・難病の担当の有無,センターの認知度,2022年度中の制度移行できなかった患者の割合の他,自由記述も含めて制度移行できない小慢患者が直面している課題や制度移行支援における実態と課題についての行政担当者の認識を調査した。また,センターの設置有無による制度移行割合についても比較検討した。
結果 回収数は1,026人(回収率58.0%)であった。行政担当者のセンターの認知度は194人(18.9%),センターが設置されていない都道府県の行政担当者の認知度は73人(12.4%)であった。制度移行できなかった患者の割合は,約53.0%と推定された。この割合は,センターが設置されていない都道府県(54.8%)の方が設置されている都道府県(49.7%)に比べて有意に高かった(t=2.67,P=.008)。制度移行できない小慢患者が直面する課題についての行政担当者の認識として割合が高かった項目は,「制度移行できないことによる医療費の負担の増加」(82.8%),「成人医療機関への継続的受診が困難となり十分な成人移行支援が受けられないこと」(71.5%),「医療機関だけでなく行政や教育機関からの自律・自立支援を受ける機会が不足すること」(65.4%)であり,専門職は事務職より課題として認識していた。
結論 本研究では,小慢から指定難病に制度移行できない患者の割合が約半数である可能性が示唆された。また,センターの設置があることで患者の制度移行を促進させている可能性が示唆された。制度移行について,行政担当者の多くは課題を感じる一方,センターが設置されていない都道府県の行政担当者はセンターの存在や機能を十分に認知していないことが明らかとなった。センターの認知向上とともにセンターの設置を検討する都道府県が増えることが期待される。
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井上 史也, 安齋 麻美, 三浦 郁修, 木下 諒, 新井 智, 神垣 太郎, 鈴木 基, 米岡 大輔
原稿種別: 総説
論文ID: 25-048
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/17
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目的 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対応する中で,下水サーベイランスの有用性が再び注目されている。下水サーベイランスは,不顕性感染も含めて社会に循環する病原体を把握し,アウトブレイクの早期警告を可能にする。しかし,COVID-19に下水サーベイランスを適用する際には,いくつかのエラー要因を考慮する必要がある。本研究では,COVID-19の下水サーベイランスにおける主要なエラー要因の検討と,日本国内における今後の実用性について議論した。
方法 COVID-19における下水サーベイランスに関する研究を対象として,PubMedおよびGoogle Scholarを用いた文献検索を行い,その結果を基にナラティブレビューを実施した。検索には,「wastewater(廃水)」,「sewage(下水)」,「COVID-19(新型コロナウイルス)」,「SARS-CoV-2」,「fecal/urine(糞便/尿)」および「surveillance/survey/detection(監視・サーベイランス/調査/検出)」といったキーワードを使用した。
結果 PubMedでは2,108件の文献が抽出され,そのうち19件をレビューの対象とした。また,Google Scholarから抽出した,6件の学術論文に加えて,2件の政府機関による報告書・ガイドラインをレビューの対象とした。下水サーベイランスにおけるエラー要因として,サンプリング方法や下水の温度・流下時間・流量などの環境要因とその標準化の困難さが挙げられた。また,対象地域のCOVID-19有病率,人口規模,人口の移動などもデータ解釈に影響を与える。さらに,下水サーベイランスは年齢や性別などの患者の背景情報や症例の発生場所に関する情報が不明確であることが多く,臨床検査によるサーベイランスと比較してデータ解釈が難しくなる可能性がある。一方,大規模な臨床検査によるサーベイランスと比較すると,下水サーベイランスは比較的安価かつ迅速に行うことが可能であり,継続的なモニタリングに適している。統計解析の観点からは,サンプル間や地域間,時期間での正確な比較を行うために,サンプルの正規化が重要である。またCOVID-19の下水サーベイランスではシグナル:ノイズ比が小さいため,実務的に有用なシグナルを検出するためには適切な平滑化が必要となる。
結論 COVID-19の下水サーベイランスには多くのエラー要因が存在するが,臨床検査に比べて低コストで広範な地域を継続的にモニタリングできる利点を有している。臨床検査によるサーベイランスと下水サーベイランスのそれぞれの利点と限界を理解し,両者を適切に組み合わせることでCOVID-19の感染制御に有用であると考えられる。
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村山 洋史, 横山 友里, 野藤 悠, 上野 貴之, 阿部 巧, 野中 久美子
原稿種別: 原著
論文ID: 25-067
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/12/17
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目的 従来,安定的で強固なサポート源や生活の場として機能してきた家族および家庭だが,近年ではその役割に大きな変化が生じている。本研究では,「同居家族や同居者がいるにもかかわらず,家庭内で交流が著しく乏しい状態」を家庭内孤立と定義し,地域在住中高年者における家庭内孤立と精神的健康との関連を検討した。
方法 2023年に埼玉県和光市在住者を対象に実施した和光コホート研究のベースライン郵送調査のデータを用いた。郵送調査は,40–64歳と65歳以上を対象とした2つの調査で構成されており,有効回答はそれぞれ2,395票と6,429票であった(計8,824票)。家庭内孤立は,同居家族がいる者の中で,平日,週末・休日ともに同居家族との会話時間が15分未満/日で,家の中にいる時に一人で過ごすことが多い者とした。精神的健康は,主観的健康感,うつ状態,ウェルビーイング,孤独感を測定した。解析は,人口統計学的要因,社会経済的要因,健康行動,健康状態,家庭外でのネットワークを調整した修正ポアソン回帰分析,または重回帰分析を行った。
結果 対象者は,男性が44.7%,平均年齢は70.0歳(標準偏差:12.7)であった。家庭内孤立は,独居者も含めた対象者全体の中では4.7%(40–64歳:3.2%,65歳以上:5.3%),同居者がいる者に限定すると5.8%(40–64歳:3.7%,65歳以上:6.7%)であった。年代が高いほど家庭内孤立者の割合は高く,概ねどの年代でも女性よりも男性の方が家庭内孤立者の割合が高かった。多変量解析の結果,家庭外でのネットワーク等の共変量を調整しても,家庭内孤立している者は,独居者や家庭内孤立していない者よりも主観的健康感,うつ状態,ウェルビーイング,孤独感が不良であった。性別,年代,家庭外でのネットワークとの交互作用を検討したところ,65歳以上で家庭内孤立とうつ状態との関連が強く,近所付き合いが密なほど,同居家族以外との交流頻度が多いほど,家庭内孤立と孤独感との関連が弱かった。
結論 同居家族や同居者がいたとしても,家庭内での交流状況のいかんによって精神的健康悪化のリスクが高まる可能性が示唆された。家庭外での交流だけでなく,家庭内での孤立状況についても注意深くアセスメントする必要がある。
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茂木 りほ, 佐伯 和子, 大木 幸子, 平野 美千代
原稿種別: 資料
論文ID: 24-130
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/11/04
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目的 公衆衛生看護技術の習得には,技術全体を網羅し命名することが重要である。本研究では,技術の中でも介入技術に焦点を当て,公衆衛生看護の介入技術の項目と構造を体系化すること,さらにIntervention Wheel(ミネソタ州で体系化された公衆衛生看護の介入モデル)をふまえて本邦の介入技術の特徴を検討することとする。
方法 公衆衛生看護の介入技術の体系化は,原案の作成,妥当性の検証,公衆衛生看護の介入技術体系作成の3段階で行った。公衆衛生看護の実践・研究経験を有する研究者4人で,約2時間の32回の会議で検討し作成した。原案は,①公衆衛生看護の介入技術を公衆衛生看護学の教科書やIntervention Wheel等から抽出し帰納的に整理,②Intervention Wheelを活用し演繹的に技術項目を検討,③公衆衛生看護の持つ機能的側面についてIntervention Wheelをふまえて介入技術の構造を検討,④公衆衛生看護の介入技術のモデルを図示,の段階を経て作成された。次に,公衆衛生看護の実践・教育・研究者10人への専門家へのインタビューにより,原案の介入技術とその構造について,妥当性の検証を行った。最後に,研究者で討議と修正を重ね,本邦における公衆衛生看護の介入技術体系を作成した。
結果 本邦における公衆衛生看護の介入技術として,Intervention Wheelと比して特徴的な技術である社会資源の開発・管理,ケアシステム構築,事業の委託と質のモニタリング,システムマネジメント,コミュニティマネジメント,ケースマネジメントを含めた21の主要な技術を特定した。また,健康課題解決のために,システムレベル,コミュニティレベル,個人/家族レベルでこれらの技術が機能を発揮しているという構造を示した。さらに,介入技術は3つのレベルで機能を発揮すると捉えるが,システムまたは個人/家族レベルに対して機能を持たないと考えられる介入技術があることを整理した。
結論 本邦において,健康課題解決のための公衆衛生看護の主要な21の介入技術が特定され,システム・コミュニティ・個人/家族の3つのレベルで異なる機能を発揮し相互に補完して用いられていることを整理し体系化した。
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加藤 ちえ, 木村 尚史, 鵜川 重和, 中村 幸志, 岡田 恵美子, 佐々木 幸子, 玉腰 暁子
原稿種別: 原著
論文ID: 24-138
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/11/04
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目的 本研究の目的は,労働力世代の夕食開始時刻の規則性および夕食開始時刻から就床時刻までの経過時間(夕食からの経過時間)の違いと主観的睡眠の質との関連を明らかにすることにある。
方法 2015年に北海道寿都郡寿都町にて実施したDOSANCO Health Studyの質問紙調査データを用いた。介護施設入居者を除く3歳以上の全住民2,638人のうち,質問紙調査に協力した20~69歳1,262人から除外基準に該当しない773人を解析対象とした。夕食開始時刻の規則性を「規則的」,「不規則」の2群とし,規則的群を夕食からの経過時間により「2時間以下(“≦2 h”)」,「2時間1分–3時間(“2 h<,≦3 h”)」,「3時間1分–4時間(“3 h<,≦4 h”)」,「4時間1分–5時間(“4 h<,≦5 h”)」,「5時間1分以上(“5 h<”)」の5群に区分した。主観的睡眠の質の評価はピッツバーグ睡眠質問票日本語版(PSQI)を用い総合得点6点以上を「主観的睡眠の質不良」とし,log-binomial回帰分析にて有病率比(PR)と95%信頼区間(95%CI)を男女別および年代別(20–39歳,40–59歳,60–69歳)に算出した。解析にはSAS software(version 9.4; SAS Institute Inc.)を使用した。
結果 夕食開始時刻規則的群を基準とした不規則群の主観的睡眠の質不良のPR(95%CI)は男性1.71(1.28–2.28),女性1.50(1.12–2.00)と有意に高かった。規則的群における夕食からの経過時間“3 h<,≦4 h”群を基準とした比較では,主観的睡眠の質不良のPR(95%CI)は,女性で経過時間が長い群ほど高い傾向で“5 h<”1.81(1.17–2.80)と有意に高く,40–59歳の年代でよりその傾向がみられた。
結論 夕食開始時刻が不規則であることや夕食開始時刻が規則的でも夕食開始から就床までの経過時間が長い生活習慣は,主観的睡眠の質不良と関連する可能性がある。
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妹尾 優佳里, 藤井 秀樹, 金 弘子, 桑原 祐樹, 金城 文, 尾﨑 米厚
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 25-005
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/11/04
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目的 アルコール等依存症者家族の実態把握と必要な支援の検討を行う。
方法 鳥取県西部で活動する依存症者家族の自助グループ会員に対し,2023年7月1日~同年9月10日,無記名自記式質問紙調査を実施した。調査にあたり鳥取県福祉保健部倫理審査委員会の承認を得た。
活動内容 調査票は105部配布し57部回収した(回収率54.3%)。回答者(家族)は57人,回答者(家族)が答えた当事者は59人だった。
調査結果から,家族が相談した時の当事者の特性と状況では,当事者の依存対象は,アルコール25人,ギャンブル17人,その他17人だった。うち,12人(20%)には依存対象が複数重複しているクロスアディクションがあった。アルコール依存症者では,家族が相談に至る以前に20人(61%)が医療機関にかかっており,うち12人(60%)が内科を受診していた。加えて,16人(49%)が健診を受けており,うち10人(63%)が肝機能障害の指摘を受けていた。また,当事者の34人(58%)は経済的に困難な状況だった。
回答者(家族)の特性は,女性48人(84%),男性8人(14%),無回答1人(2%)であり,年齢は50代20人(35%)が最も高い割合だった。回答者(家族)の相談時の状況では,家族が相談に至った理由は,「どうしようもない状態になった41人(72%)」が最も高い割合だった。さらに,相談時の家族の42人(74%)は依存症を病気だと思っていなかった。加えて,家族の32人(56%)が経済的に苦しい状況だった。
家族が今後求める支援では,「相談窓口の周知(75%)」,「相談窓口同士の連携(68%)」が見られた。さらに自由記載で若者を対象とした普及啓発への要望が複数見られた。
アンケート結果を受けて当所では,以下の新たな取組を行った。1)保健所内の様々な担当課や市町村の既存事業と連携することで一次・二次予防の対象者の拡大を進めた。2)地域住民に向けた依存症啓発チラシを作成し,管内市町村の自治会組織への回覧や民生児童委員などの地域の人材を活用した啓発活動を行った。3)医療機関や法律専門家に向けて,依存症者の早期発見を目的に,作成した住民向け啓発チラシの活用を依頼した。
結論 今回の調査を通して,アルコール等依存症者家族の実態を把握することにより,必要とされる支援が抽出され新たな取組に繋がった。
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横山 芳乃, 中尾 杏子, 上村 晴子, 井出 博生, 古井 祐司
原稿種別: 資料
論文ID: 25-052
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/11/04
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目的 特定健診の効果を最大化するには受診率の向上が不可欠であり,各自治体は様々な工夫をしている。しかしそれらは明文化されることなく暗黙知のまま散逸していることが多い。このような背景のもと,本研究では受診率向上に向けた各自治体の工夫を明文化し実態を明らかにすること,また,その工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率との関連を検討することを目的とした。
方法 山形県の全35市町村国民健康保険を対象とし,35市町村からは共通様式「保健事業カルテ」にて,加えて2市町からはヒアリングで受診率向上に向けた工夫を収集した。次いで収集された工夫を専門家チームが業務フロー別に6カテゴリーに分類した。この6カテゴリー47項目で構成されたアンケートを県内全35市町村を対象に実施した。アンケートにより把握された工夫の実施状況と対象者数の規模および受診率をFisherの正確確率検定にて比較し,規模による工夫の違いと受診率を上げる要素を検討した。有意水準は両側5%とした。
結果 アンケートの回答率は100%であった。カテゴリー別では,受診勧奨の工夫が最も多く(19項目),次いで周知の工夫(10項目)が多かった。特定健診対象者数の中央値(2,463人)を基準に市町村を2群に分けて工夫の実施状況を比較したところ,「医師会と事業の進捗や課題に関して定期的に会議・意見交換をしている」については,対象者数の多い市町村の方が多く実施しており,有意差を認めた。受診率についても同様に中央値(52.9%)を基準に群間の差を検定したところ,「対象者を絞って受診勧奨をしている」,「勧奨業務(郵送)を外部委託している」,「受診勧奨通知を2回以上送付している」の3項目について有意差を認めた。いずれも受診率が低い群の方が各工夫を実施している割合が高かった。一方,調査対象としたすべての工夫において受診率との有意な正の関連を認めなかった。
結論 特定健診の受診率向上に向けて市町村が行っている工夫を明文化し事業内容の実態を明らかにすることができた。対象者数の規模による工夫の違いも明らかとなり,今後自治体の規模に応じた取組を検討する上での参考となる。一方,受診率が高い市町村が多く実施する工夫の識別はできなかった。今回は一県の限られたデータであることから,受診率向上のために今後は他県を含めて継続的に調査し知見を集積していく必要がある。
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有馬 和代, 伊藤 美樹子
原稿種別: 原著
論文ID: 25-079
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/11/04
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目的 パンデミック時の行政保健師による電話を用いたCOVID-19患者の在宅療養支援に対する対応技術を明確化する。
方法 府県,政令指定都市,中核市を含む5つの保健所から,COVID-19患者の在宅療養経験がある管理職保健師,新任期保健師各5人に面接調査を実施し,Braun & Clarkeらを参考に質的研究を行った。
結果 分析より,電話対応時に必要な対応技術として68コードが得られ,内10コードは管理職保健師のみから得られた。全コードから8カテゴリーに統合され,最終的に3つの主要な対応技術に統合された。3つの主要対応技術は『非協力的,攻撃的な人をも含む面識のないCOVID-19患者との継続的な支援関係の構築技術』と,『変化に即応した最適な感染症の療養環境の構築技術』,『COVID-19患者や家族のセルフケア能力を高める支援技術』である。パンデミック下で在宅療養中のCOVID-19患者への電話での療養支援では,表出された言語だけでなく,多角的な根拠情報を得るため,更なる言語的な表出の促しや非言語的な情報収集も行っていた。また応答拒否や処遇への非難,叱責,強い要求への対応も含まれていた。管理職保健師のみから語られていた内容のカテゴリーは,【まん延防止措置に対する反発を受止めつつ,行政権限を行使する保健所職員の立場を自覚し,COVID-19患者の応諾を得るために説明を尽くそうと努める】,【COVID-19患者や家族,その地域に生活する人の視点からコロナの脅威を理解し,啓発活動に繋げる】であり,それ以外のサブカテゴリーでは[患者に意図的に指示を出し,体位や動作反応から精度の高いバイタル情報を引き出す]であった。管理職保健師は,豊富な経験値から患者や家族の様子を想像しやすく,感情的知性を発揮して効果的な会話を行うことができており,これが「異常」を察知する力にも繋がっていた。
結論 本研究は,COVID-19患者への電話での在宅療養支援の経験で用いた判断や態度,考え方を含む対応技術が抽出され,感染症における公衆衛生上の特有な問題に対処する技術が見出されていることから,今後の感染症対応に強い保健師の育成に有益な知見と考える。
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室橋 彩佳, 太田 亜里美, 村山 伸子, 坂本 達昭, 小林 知未, 堀川 千嘉, 西岡 大輔
原稿種別: 資料
論文ID: 24-142
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/15
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目的 生活困窮者の自立を支援する上で重要な一つの側面に健康支援があるが,その地域における取組実態や行政内外との具体的な連携先の実態は十分に明らかになっていない。本研究では,生活保護制度の実施主体である福祉事務所と生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業における主な実施機関である社会福祉協議会を対象に,初回面談時の事業対象者の健康状態や食事状況の確認,それらの状況を評価するためのアセスメントシートの活用状況,行政内外との連携状況および食生活支援内容について明らかにすることを目的とした。
方法 2024年1月に全国1,250の福祉事務所および全国612の社会福祉協議会に対しアンケート調査を行った。事業対象者への健康・食生活支援実施状況として初回面談時の事業対象者の健康状態や食事状況の確認,それらの状況を評価するためのアセスメントシートの活用状況,行政内外との連携状況および食生活支援内容について回答を求めた。
結果 福祉事務所および社会福祉協議会の50%以上が事業対象者との初回面談時に確認していた項目は,健康状態では「体調」「定期的な通院・服薬状況」「移動手段」,食事状況では「外食,中食,自炊状況」「食事回数」であった。健診受診状況を確認していた団体は福祉事務所,社会福祉協議会ともに30%程度であった。福祉事務所の50%以上はアセスメントシートを使用していなかった。社会福祉協議会はアセスメントシートを使用していたが,とくに食事状況の確認項目がなかった。他団体との連携状況は,福祉事務所では保健医療部門との連携がみられ,社会福祉協議会では幅広い団体との連携がみられた。フードバンク等の食品提供支援と合わせた食生活への助言,子ども食堂等の情報提供等を行っている団体は未実施の団体より連携団体合計数の平均値が有意に高かった。
結論 支援対象者の健康状態や食事状況を評価するアセスメントシートの活用や,保健医療専門職を含めた他団体と連携を進め支援をつなげていくことが,今後重層的な健康・食生活支援を推進するために必要となると考えられた。
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山田 秀彦, 岩佐 一, 石井 佳世子, 井高 貴之, 安村 誠司
原稿種別: 資料
論文ID: 25-010
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/15
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目的 女性労働者は就労上で月経に関する様々な困難感を抱えている。先行研究では5割の女性労働者は,職場が月経による体調不良者への理解がないことなどを報告している。一方,男性労働者における女性の月経に伴う症状への知識の現状等を明らかにした知見は多くない。本研究では,男性労働者における女性の月経に伴う症状等への知識と基本属性(年代,職位,配偶者・パートナーの有無)との関連および産業保健実践の示唆を検討することを目的とした。
方法 2023年8月7~28日に福島県内の製造業である2つの事業所に勤務する男性労働者へ無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,基本属性,月経に関する知識(月経前や月経中に出現する症状,月経異常に関すること,月経に関する社会の動向)で,知っているまたは知らないの2件法で尋ねた。対象者の基本属性と月経に関する知識の有無を記述統計で把握し,月経に関する知識の有無と基本属性との関連をχ2検定および残差分析で検討した。
結果 2つの事業所をあわせて311人へ配布し,190人(回答率61.1%)より回答があり,165人を分析対象とした。月経前や月経中に出現する症状および月経異常に関する知識は,「怒りっぽくなる」「大量の出血」「倦怠感」「気分の落ち込み」「下腹部痛」「月経不順・無月経」を7割以上が知っていた。一方,「かゆみ」「発汗」「ホットフラッシュまたはのぼせ」を知っている人は,約2割であった。月経異常は,「過長月経」を知らない人が約7割であった。「月経に関する社会の動向」は,9割前後の人が知らなかった。月経に伴う症状等の知識と基本属性との関連は,10歳代では「食欲の増進」,20歳代では「胸の張り」「眠気」「食欲の増進」を知っていた。一方,50歳代では「眠気」「食欲の増進」,60歳代では「胸の張り」「食欲の増進」を知らなかった。管理職では,「怒りっぽくなる」「大量の出血」「下腹部痛」「集中力の低下」「発汗」を知っていた。配偶者・パートナーがいる方が「ホットフラッシュまたはのぼせ」を知っていた。
結論 月経前や月経中に出現しやすい症状は知っている人が多かったが,出現しにくい症状や月経異常,月経に関する社会の動向は知らない人が多かった。男性労働者の月経に関する知識向上に向けて,社内研修における月経に関する情報提供が考えられるが,効果的な方策について更なる検討が必要である。
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吉田 明日香, 平野 美千代
原稿種別: 原著
論文ID: 25-014
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/15
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目的 社会的孤立は退職など生活環境が変化する高齢者において対応すべき課題であり,社会的孤立の予防には,ソーシャルインクルージョン(Social Inclusion:SI)や地域の人々とのつながりの構築が重要である。とくに,高齢者の場合,主観的な地域の人々とのつながりについて明らかにすることは,地域のつながりの構築に向けて重要である。そこで本研究は,高齢者における地域の人々とのつながり観とその関連要因を明らかにすることを目的とする。
方法 対象は,都市部に在住する70歳代,80歳代の男女800人とした。2024年2月に郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った。調査項目は,属性,地域の人々とのつながり観,ソーシャルネットワーク(Social Network:SN),SI,地域の関係性とした。分析は,従属変数は地域の人々とのつながり観,独立変数はSN,SI,地域の関係性,共変量を属性とした強制投入法による重回帰分析を行った。
結果 回収数は338部,有効回答数は316部(有効回答率39.5%)であった。対象の平均年齢は79.0±5.4歳,男性172人(54.4%)であった。地域の人々とのつながり観の平均点は83.4±17.6点,最低点は36点,最高点は131点であった。重回帰分析の結果,地域の人々とのつながり観と有意に関連したのは,SN(標準偏回帰係数(β)=0.124,P=0.012),SIの「つながり」(β=0.132,P=0.023),SIの「参加」(β=0.100,P=0.047),地域の関係性(β=0.469,P<0.001)であった。
結論 高齢者の主観的なつながりにはSNやSIの「つながり」「参加」という客観的なつながりが関連していた。地域住民全体がつながっているという地域の関係性のとらえ方が高齢者における地域の人々とのつながり観に関連することが示唆された。地域の人々の行動などの地域全体への伝播や地域の質の向上が,地域の人々とのつながり観へ関連したことが推察される。
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北岡 かおり, 門田 文, 由田 克士, 岡見 雪子, 近藤 慶子, 原田 亜紀子, 奥田 奈賀子, 大久保 孝義, 岡村 智教, 三浦 克 ...
原稿種別: 原著
論文ID: 25-021
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/15
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目的 全国の一般地域住民を対象に,随時尿で評価した推定食塩摂取量,推定カリウム摂取量,尿ナトリウム/カリウム比(Na/K比)について,性・年齢群別および地域別にベースラインと10年後の調査結果を比較した。
方法 平成22年国民健康・栄養調査参加者を対象としたコホート研究であるNIPPON DATA2010の2020年度追跡調査対象者2,244人を対象とした。尿検査への参加同意者798人に自己採尿キットを送付して採尿した。推定食塩摂取量(g/日),推定カリウム摂取量(mg/日)は田中の式を用いて算出,また尿Na/K比(mmol/mmol)を算出した。2010年時と2020年時の両方の尿検査結果がある者は667人(ベースライン時平均年齢54.8±13.4歳,女性59.1%)であった。ベースライン時点の年齢で男性60歳未満,男性60歳以上群,女性60歳未満群,女性60歳以上群の4群に分類,地域は7地域に分類した。ベースラインと10年後の比較は対応のあるt検定を用いて評価した。
結果 ベースライン時と10年後の性・年齢区分による比較では,推定食塩摂取量はすべての群において有意差を認めなかった。推定カリウム摂取量は男性60歳以上群,女性60歳未満・60歳以上群で有意に高値を示し,男性60歳未満は10年後が高い傾向を示した。尿Na/K比は男性60歳以上群:ベースライン4.14±2.57,10年後3.38±2.10(P=0.002),女性60歳未満群:ベースライン4.05±2.23,10年後3.44±1.91(P<0.001),女性60歳以上群:ベースライン3.76±1.79,10年後3.03±1.78(P<0.001)であったが男性60歳未満では有意な差を認めなかった。地域区分別では,尿Na/K比が東北,関東,近畿で10年後に有意に低値を示した。
結論 全国の一般住民において,ベースラインと10年後の尿検査値を比較した結果,女性および60歳以上男性は推定カリウム摂取量が有意に高値,尿Na/K比が有意に低値を示した。本研究において特定の性,年齢群や地域における対策強化の必要性が示唆された。
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三澤 奈菜, 竹原 健二
原稿種別: 資料
論文ID: 25-023
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/15
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目的 子育てにおける経済的な負担感が社会的に注目を集めている。しかし,子育て費用全般に関する大規模な調査は,2009年に内閣府がWeb調査で実施して以来,ほとんど行われてこなかった。今回,第一子が0歳~18歳で,未就学・小学生・中学生・高校生の年間子育て費用と18年間の合計子育て費用および2009年からの変化を明らかにし,今後の子育て世帯の経済的支援に役立てることを目的として調査を行った。
方法 2024年11月に日本在住の第一子が0歳~18歳で,未就学・小学生・中学生・高校生の母親を対象に子育て費用のウェブ調査を実施した。子育て費用は内閣府の調査と比較できるように配慮しつつ,13カテゴリー(A:衣類,B:食費,C:生活用品費,D:医療費,E:保育費,F:学校教育費,G:学校外教育費,H:学校外活動費,I:携帯料金,J:おこづかい,K:お祝い行事関係費,L:預貯金・保険,M:レジャー・旅行費)で収集した。年齢・学年別に各項目の年単位の費用の平均値,標準偏差(SD)を求め,3SD外の数値を除いた平均値を計算した。これら合算し,年齢・学年別のカテゴリー別の総計,年間子育て費用を算出した。また,内閣府による2009年調査の結果と本研究の結果を比較した。
結果 0歳~18歳の各年齢の母親246人~350人,合計6,408人の回答があり,有効な回答は4,166人であった。0歳~高校3年生の18年間に要する子育て費用の合計は25,701,956円で,預貯金・保険を除くと21,727,154円であった。0歳~18歳(高校3年生)の年間子育て費用は,年齢とともに増加し,また,中学校と高校に進学する年に教育費の負担が大きかった。また,0歳~中学3年生の15年間の合計費用は2009年の内閣府による調査では18,995,250円,本研究では19,530,626円で同程度であった。しかし,0歳~中学3年生の年間子育て費用における生活費の割合は増加していた。
結論 本研究により,収入が低い世帯ほど生活費が収入に占める割合が高く,高校生の在学期間や進学する年における費用負担がとくに大きいことが明らかとなり,子育て世帯の経済的実態が示された。このようなデータに基づき,子育て世帯に対する経済的な支援のあり方が検討されることが望ましい。
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中澤 眞生, 堀 愛, 井坂 ゆかり, 市川 政雄
原稿種別: 総説
論文ID: 24-135
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/13
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目的 日本では外国人労働者の増加に伴い,彼らが被災する労働災害が増えている。外国人労働者は2013年には72万人であったが,10年間で2倍以上に増え,2023年には過去最高の200万人に達した。それに伴い外国人労働者の労働災害も増加し,2023年には死傷者が5,672人となった。外国人労働者の労働災害を予防するには,従事する産業に配慮した対策の強化が求められる。そこで,本研究ではスコーピングレビューに基づき,外国人労働者の労働災害にみられる問題を産業別に整理した。
方法 レビューの対象は,1990年から2023年(検索を行った10月まで)に出版された文献である。学術文献の検索にはCiNii Research,医中誌Web,PubMedを用いた。また,広範囲から情報を収集するために,公益財団法人国際人材協力機構の総合情報誌「かけはし」,厚生労働省・公益財団法人国際人材協力機構のウェブページも検索の対象とした。検索後は2人が各自タイトル・要旨を確認し,外国人労働者の労働災害について記載がある文献を選抜した。それから本文(本文がない場合は要旨)を各自通読し,採用する文献を決定した。1事例に基づく報告は事例報告,複数の事例をもとにデータ分析したものは調査報告と区分した。また,特定の産業を取り扱った文献は日本標準産業分類に沿って分類した。
結果 重複した文献を差し引いた885件を2人が確認し,73件(調査報告37件,事例報告36件)がレビューの対象となった。調査報告を産業別にみると「農業・林業」が3件,「建設業」が2件,「製造業」が3件,「運送業・郵便業」が1件,その他28件は特定の産業を対象にした調査ではなかった。産業別にみた問題として,農業・林業では外国人労働者が農業機械の取り扱いを十分に理解していない,忘れてしまうこと,建設業では外国人労働者が建設現場における安全の基本を理解していないこと,製造業ではプレス機械の安全装置の不備,機械の誤操作,安全教育の不足が指摘され,農業・林業,建設業では問題に応じた対策が行われていた。一方,産業によっては特有の問題が示されていなかった。
結論 外国人労働者の労働災害を予防するには,それぞれの産業で不足している情報を収集することが不可欠である。
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坂田 裕介
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 25-015
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/13
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目的 日本国内におけるレジオネラ症の集団発生事例では,感染源の大部分が浴槽水である。本報告では,公衆浴場や宿泊施設にある浴槽の監視に役立つ知見を得るため,衛生管理状況とレジオネラ属菌の検出との関連,アデノシン三リン酸(以下,ATP)を事前検査として使用する手法の課題を検討した。
方法 2017年度から2024年度に,富山県高岡市内の公衆浴場や宿泊施設にある浴槽を対象に監視を実施した。監視では,聞き取り調査と簡易水質検査を行った。浴槽水のATPが80 RLU(Relative Light Unit)以上あった場合はレジオネラ属菌の検査を行った。レジオネラ属菌の検査を行った浴槽を対象とし,6つの衛生管理項目とレジオネラ属菌の検出との関連を分析した。また,ATPとレジオネラ属菌の検出との関連を分析した。
活動内容 分析対象とした浴槽は94件で,そのうち29件でレジオネラ属菌が検出された。採水時の遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒については,レジオネラ属菌が検出された浴槽と検出されなかった浴槽で,基準の適合率に20.7~23.2%の差があった。採水時の遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒の両方が基準に適合していなかった場合の検出率は85.7%(6/7件)と最も高かった。循環式で水道水を使用している浴槽での検出率は85.7%(6/7件)であった。しかし,同じ循環式でも地下水を使用している浴槽での検出率は25.0%(19/76件)であった。非循環式で地下水を使用している浴槽での検出率は36.4%(4/11件)であった。
結論 遊離残留塩素濃度の管理だけではレジオネラ属菌の増殖を防ぐことは難しく,集毛器の洗浄・消毒は1週間に1回以下になると,レジオネラ属菌の増殖リスクが高まる恐れがある。とくに遊離残留塩素濃度と集毛器の洗浄・消毒の両方が基準に適合していない場合,早急な改善が必要と考えられる。ATPを事前検査として使用するには,地下水を使用している浴槽での検出率を向上させる方法を検討する必要がある。
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朝長 諒, 姜 英, 藤本 俊樹, 山根 崇弘, 本多 世麗, 横谷 俊孝, 大和 浩
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 25-031
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/10/13
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目的 改正健康増進法(2020年)では,屋外や家庭においても「望まない受動喫煙」をなくすことが努力義務とされた。これに伴い,都市部では屋外喫煙所の設置が進む一方,その効果や基準に関する評価は十分ではない。本研究は,屋外喫煙所の周囲で微小粒子状物質(PM2.5)濃度の測定により,受動喫煙の曝露状況を評価し,屋外喫煙所設置時の留意事項を明確にすることを目的とする。
方法 2021年4月から2024年12月にかけて,四方を壁で囲み,出入り口がクランク状の屋外喫煙所34か所およびコンテナ型の屋外喫煙室10か所の内部と周囲のPM2.5濃度をデジタル粉じん計を用いて測定を行った。そのうち典型的な屋外喫煙所4か所とコンテナ型屋外喫煙所1か所について報告する。
活動内容 以下の4点について検討を行った。①壁の高さの効果については,壁高3.2 mでは,内部のPM2.5濃度は平均41 µg/m3,風下方向の平均濃度は5.4 µg/m3で,壁高2.5 mでは,内部濃度は平均38 µg/m3,風下方向の平均濃度は9.5 µg/m3に抑制された。②クランクの形状については,クランクの重なりが不十分で喫煙可能区域が外部から見通せる場合,喫煙所外での濃度が上昇した。③壁下部の隙間からの拡散については,隙間が2~5 cmであっても,隙間からの漏れにより,外部濃度が瞬間的に164~400 µg/m3まで上昇した。また,壁下部を完全に塞いだ場合,泥等の堆積を認めた。④コンテナ型喫煙室(HEPAフィルターを用いた空気清浄機を設置)については,HEPAフィルターを通じて排気された空気中のPM2.5濃度は,内部環境が平均548 µg/m3に対して,平均9.3 µg/m3であった。
結論 以下の点を踏まえた屋外喫煙所の適切な設計と基準は受動喫煙防止に効果的であることが示された。①4方向を十分な高さ(2.5 m以上,可能な範囲で高く)の壁で囲う。②出入口は十分な重なりがある二重クランクとする。③壁と路面の間の空間は泥等の堆積を防ぐため1 cm程度とし,一部のみ開放する。④コンテナ型喫煙室ではHEPAフィルターを用いた空気清浄機を用いる。
非喫煙者を受動喫煙から保護し,喫煙者には喫煙所の内部に禁煙外来などの啓発的な情報を掲示し,喫煙率の低下に寄与することが根本的な対策と考えられた。
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佐藤 陽香, 細野 晃弘, 門内 一郎, 堀江 徹, 須藤 章, 平野 雅穏, 村上 邦仁子, 劔 陽子, 矢野 亮佑
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 24-103
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/09/08
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目的 日本は国際保健の経験を積み重ねており,低中所得国では少ない資源を有効に活用する保健衛生政策の立案・実施・評価が求められることから,国際保健の経験から得られた知見が国内の地域保健にも応用できる可能性がある。本調査では国際保健の経験者が持つコンピテンシーや知見とその獲得プロセスを明らかにし,これらが日本国内の地域保健にどのように応用可能かについて考察することを目的とした。
方法 調査は日本国内で地域保健に従事し,かつ国際保健の経験を持つ5人の公衆衛生医師を対象に,対面またはオンラインでのインタビューを実施した。インタビュー項目には,基本属性,国外勤務を開始した経緯と業務内容,国外勤務の経験内容とコンピテンシー形成との関連,日本の地域保健に関する仕事をする上で重要と考える能力やコンピテンシー,国外保健と国内の地域保健をつなげるために重要なことを含めた。コンピテンシーについてはM-GTA(Modified Grounded Theory Approach)手法を用いて分析を行った。
活動内容 インタビュー対象者は,男性3人,女性2人であり,調査時には国内の行政機関に勤務していた。国際保健経験者のコンピテンシーとして,【進取の気性】,【誠実性】,【適応力】,【構築力】,【課題分析と解決戦略】の5つが特定された。コンピテンシー獲得のプロセスでは,【進取の気性】,【誠実性】,【適応力】が基盤となり,国際保健の経験から【構築力】,【課題分析と解決戦略】が強化されていった。
結論 国際保健経験者のコンピテンシーのうち【適応力】と【誠実性】は思考パターン,【構築力】と【課題分析と解決戦略】は行動パターンを示すと考えた。国際保健経験者は,好奇心や積極性などの【進取の気性】が強く,海外での経験を通じて【適応力】と【誠実性】が向上していた。また,現地では地域の現状や課題を客観的に分析し,地域住民を巻き込んで問題を解決するアプローチを身につけており,国際的な保健活動における持続可能なアプローチや健康格差の解消に向けた視点も養われていた。そのような視点は日本の地域保健にも必要な視点であり,健康格差の解消に役立つ可能性がある。今後,インタビュー調査は,対象を保健師など他職種にも広げ,国内外の地域保健の向上に資する人材のコンピテンシーの解明を進めたい。
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三輪 静華, 水谷 真由美, 谷村 晋, 西出 りつ子
原稿種別: 原著
論文ID: 25-011
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/09/08
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目的 新任期保健師の実践能力向上は喫緊の課題であり,管理期保健師が改善しうる組織要因を明らかにすることは,組織における効果的な人材育成のために重要である。そこで本研究は,「行政保健師の総合的キャリア発達尺度第2版」による10種類の新任期保健師実践能力に対する管理期保健師の育成困難認識とそれに関連する組織要因を明らかにすることを目的とした。
方法 2023年11月に,東海北陸7県210市町村の管理期保健師(1,196人)のうち,各市町村の上席者5人を対象に,郵送またはインターネット調査法による無記名自記式質問紙調査を実施した。10種類の新任期保健師実践能力について,育成困難と認識する割合を算出した。育成困難認識割合が半数以上の実践能力に対して,管理期保健師が育成困難と認識するか否かを目的変数,組織要因18項目(自治体特性3項目,教育人材3項目,教育体制12項目)を説明変数,対象属性8項目を調整変数とした回帰モデルにデータを当てはめ,Prevalence Ratio(PR)およびAdjusted Prevalence Ratio(APR)を推定した。
結果 326人の管理期保健師から回答を得(回収率31.0%),解析対象とした。対象者の経験年数は平均25.2年,配属部署は保健部門が68.5%であった。育成困難認識割合が高かった実践能力は,地域の健康危機管理に対応できる能力(57.3%),複雑困難な個人や家族の健康問題解決の支援ができる能力(52.1%),セルフヘルプグループや地域組織を支援できる能力(50.0%)であった。それらの3種類に対し,組織要因4項目(教育人材2項目:新任期保健師にプリセプター配置,人材育成責任者の設置;教育体制2項目:保健師全体で育ち合う職場風土,職場全体に人材育成への関心の高まり)との関連を認めた。このうち,「保健師全体で育ち合う職場風土」は,ない場合に「セルフヘルプグループや地域組織を支援できる能力」が育成困難であると認識していた(APR 1.52, 95% CI 1.12–1.93)。他の3項目は,教育人材や教育体制がある場合に育成困難と認識していた。
結論 新任期保健師の「セルフヘルプグループや地域組織を支援できる能力」に対する管理期保健師の育成困難認識に関連する組織要因は,保健師全体で育ち合う職場風土がないことであった。この組織要因を強化することが新任期保健師の人材育成に資する可能性が示唆された。
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