日本公衆衛生雑誌
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早期公開論文
早期公開論文の21件中1~21を表示しています
  • 江頭 勇紀, 渡邊 亮, 吉田 穂波, 鄭 雄一, 西海 昇, Byung-Kwang YOO
    論文ID: 22-039
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 COVID-19の感染流行に伴うまん延防止措置法等の適用に際し,都道府県は科学的根拠に基づいた政策立案を求められたが,国の支援と都道府県の政策需要の乖離が課題であった。そのため,神奈川県立保健福祉大学と神奈川県庁は,共同でEBPM(Evidence Based Policy Making)プロジェクトを立ち上げ,COVID-19感染予測モデルを開発し,政策判断へ活用した。そこで,本事例の成果および課題を検討し,今後の公衆衛生行政への示唆を提示する。

    方法 Google社が開発した新型コロナウイルス感染者予測モデル『COVID-19感染予測(日本版)』(Google AI)の推計と公開データを組み合わせた「簡易モデル」,二次医療圏の日別データを使用した「主要モデル」を開発した。主要モデルの開発では,神奈川県庁内で散逸したデータを統合データプラットフォームに格納し,二次医療圏ごとに療養者,入院者,重症者を予測した。予測は,パネルデータ推計にGoogle AIの推計を外挿することで,新規感染者数のピーク値を反映させた。

    活動内容 約50種類のデータを統合データプラットフォームに格納し,神奈川県立保健福祉大学の学術チームによる,データの質の評価後,使用データを選定した。推計結果は,平均絶対パーセント誤差(MAPE),平均二乗誤差の平方根(RMSE),平均二乗対数誤差(RMSLE)により評価した。主要モデルで最も精度が高かったのは,2021年9月5日を基準日としたモデルであった。

    結論 統合データプラットフォームを用いて二次医療圏の日別データを用いることで,高い精度で予測できたため,政策判断の際に活用された。官学連携の際,専門家とともに,行政側の意思決定プロセスに精通した者をアカデミア側に参画させることにより,円滑な連携が行えることがわかった。一方,諸外国と比較し,本邦では,公開データの粒度の粗さ,限定された研究主体,継続的な予測モデルの開発が課題であることが明らかとなった。

  • 田中 宏和, 田淵 貴大, 片野田 耕太
    論文ID: 22-061
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/11/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 新型コロナウイルスワクチン接種状況と,旅行や飲食店利用など経済活動の活性化に向けた接種証明書(ワクチンパスポート)の活用に関して人々の意識を明らかにすることを目的とした。

    方法 2021年9-10月に実施された「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」のデータから,最終学歴および職業ごとのワクチン接種率と接種率比を算出した。また,「ワクチン接種済み(2回)」群と「ワクチンの接種を希望しない」群に分けて「ワクチンを接種した(しない)理由」をそれぞれ分析した。さらに,ワクチンパスポートを「経済回復のために活用すべきだ」と考える割合と性・年齢階級・職業・最終学歴や政府のワクチン情報の信頼などとの関連を分析した。

    結果 27,423人の調査参加者(20-79歳;女性13,884人,男性13,539人)のうち,「ワクチン接種済み(2回)」が20,515人(74.8%),「接種したくない(接種希望なし)」が1,742人(6.3%)であった。ワクチン接種率は性で差がなく,『大学・大学院卒業者』は『高校卒業者』に比べて有意に接種率が高かった(調整済み接種率比,1.09;95%信頼区間:1.07-1.12)。職業別では『事務職』に対する『専門・技術職』の調整済み接種率比は1.05(95%信頼区間:1.01-1.09)であった。「ワクチン接種済み(2回)」群のうち,接種した理由で最も多かったのは「家族や周りの人に感染させたくないから」の53.0%だった。一方で,接種したくない理由で最も多かったのは「副反応が心配だから」の44.5%だった。ワクチンパスポートについて「経済回復のために活用すべき」と答えたのは「ワクチン接種済み(2回)」群で41.8%であり,「接種したくない」群で12.2%であった。職業別では『営業販売職』(40.4%)で最も高かった。この割合は,「政府のワクチン情報を信頼している」群(49.5%)では「どちらでもない」群(27.5%)に比べて有意に高かった(P<0.01)。

    結論 学歴や職業でワクチン接種率に差があること,政府のワクチン情報を信頼する人ほどワクチンパスポート活用に肯定的であることが明らかになった。しかし,経済活動の活性化のためのワクチンパスポート活用に関して,人々の期待や関心は社会全体では高くないことが示唆された。

  • 大野 佳子, 三瓶 舞紀子, 長谷川 文香, 松隈 誠矢, 半谷 まゆみ, 森崎 菜穂
    論文ID: 21-144
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/11/08
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 コロナ禍の学校では感染対策に伴い行動が制限されるなか,こどもはどのような意見を持っているのか,そのテキスト(語られた言葉)の構造および保護者の心理・社会経済状況による特徴を明らかにすることを目的とした。

    方法 2020年9~10月に実施されたWeb調査「コロナ×こどもアンケート第3回調査」の回答者(小・中・高校生相当の男女)2,111人のうち,自由記述による有効回答が得られた1,140人のテキストデータを対象とした。質問内容は「いま気になることや言いたいこと[本音]」および「どのようにすればいいと思いますか?誰がどのようなことをしてくれたらいいと思いますか?[実行案]」であった。保護者の属性には年齢,仕事の有無,心理的苦痛尺度(K6),経済状態等を保護者から情報収集し,分析にはテキストマイニングソフトによる頻度分析,特徴分析,ことばネットワーク(単語関連図)作成を行った。

    結果 [本音]と[実行案]のテキストは総行数(回答者数)531,1,017であり,平均行長(文字数)21.5,31.5であった。係り受け頻度分析では[実行案]が「話-聞く」等であり,[本音]では「行事-無くなる」「マスク-外す」等が多かった。ことばネットワークでは[実行案]で最もノードの大きい「私」に「動く」「話しかける」等が強く共起のネットワークを形成していた一方,[本音]では「COVID-19」に「終息+?」「無くなる+したい」等が強く共起していた。保護者の属性による特徴的な単語(補完類似度)は,[実行案]では仕事あり群で「話(35.9)」,K6良い群で「話(26.6)」であり,K6不良群で「分かる+ない(23.5)」,経済状況悪群で「分かる+ない(17.3)」であった。一方,[本音]では仕事あり群および精神的健康度の高い群で「COVID-19(28.1,27.5)」であった。

    結論 こどもの本音ではCOVID-19に対する不快感や怖れを持っている一方で,実行案を問うと「私」が主体となって動き,他者に話しかけると同時に,誰かに話を聞いてもらいたい意思のあることが明らかになった。保護者の心理的苦痛と経済状況が良くないこどもの実行案の特徴として“分からない”が多かった。

  • 寺内 祐美, 林 裕栄, 関 美雪, 延原 弘章, 柴田 亜希
    論文ID: 22-022
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/11/08
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 本研究では女性における中高年向け運動教室の参加者と非参加者の医療費について比較検証する。

    方法 運動教室参加前1年間の年齢・医療費(本研究では医科入院外医療費・薬局調剤医療費を合計した医科入院外薬局調剤医療費と医科入院医療費とする)を参加群と対照群でマッチングし,参加群では2年間運動教室に参加した後,1年間の参加群と対照群の医療費を計4年間分析した。対象集団は首都圏A市にて2011年4月1日から2015年3月31日まで国民健康保険被保険者であり,2011年4月1日現在,60歳から69歳までの女性6,576人とした。筋力の向上に有効であることが示されているA市主催の中高年向けの運動教室(以下,運動教室とする)参加者のうち運動教室参加前1年間の医科入院医療費が0円の者かつ医科入院外薬局調剤医療費が50万円未満の者であり,2012年度,2013年度とも運動教室に参加している者を参加群416人とした(男性を除く)。対照群は参加群と性別・年齢・医療費を1対1でマッチングさせ416人とした。その上で4年間の1人当たりの医療費をもとに参加群と対照群の医療費をウィルコクソンの符号付順位検定を用いて比較検討した。比較方法としては,各群内の年度間の比較と各年度内の両群間の比較,参加群のうち運動教室に両年度とも15回以上参加した者と対照群を全年齢・65歳未満・65歳以上に分けた上での両群間の各年度内の比較を行った。なお有意水準は5%未満とした。

    結果 1.医療費の年度間の比較では両群ともに2011年度に比べ2014年度に有意な増加がみられた。2.ベースライン調整後の各年度内の医療費では両群間に有意差はみられなかったが対照群に比べ参加群の医療費が低く推移していた。3.運動教室に両年度とも15回以上参加した者の医療費は65歳未満で2012年度と2013年度の参加群の医科入院外薬局調剤医療費が有意に低かった。一方65歳以上で参加群と対照群の医療費に有意差はみられなかった。また医科入院医療費は全年齢と65歳未満で2014年度の参加群が有意に低かった。

    結論 運動教室の参加の有無に関わらず加齢とともに医療費は増加していくが,運動教室に継続的に参加することで医療費増加を抑制できる可能性が示唆された。また65歳未満では運動教室の継続的な参加が運動教室参加中やその後において医療費抑制の効果が期待できると示唆された。

  • 瀬戸 順次, 鈴木 恵美子, 山田 敬子, 石川 仁, 加藤 裕一, 加藤 丈夫, 山下 英俊, 阿彦 忠之, 水田 克巳, 中谷 友樹
    論文ID: 22-072
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/11/08
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 感染症の流行状況を的確に示すためには,時・場所・人の3つの情報の要約が求められる。本報告では,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が山形県において「いつ・どこで・どのように」広がっているのかを可視化したCOVID-19時空間三次元マップ(時空間マップ)を用いて実施した公衆衛生活動の概要を紹介することを目的とした。

    方法 山形県および山形市(中核市)のプレスリリース情報を基に感染者の疫学情報をリスト化し,無料統計ソフトを用いて時空間マップ(自由に回転,拡大・縮小が可能な3次元グラフィクスを含むhtmlファイル)を作成した。時空間マップの底面には,山形県地図を配置した。各感染者は,XY平面の居住地市町村(代表点から規定範囲でランダムに配置)とZ軸の発病日(推定を含む)の交点にプロットした。また,色分けにより,感染者の年齢群,感染経路を示した。さらに,県外との疫学的関連性を有する感染者には,都道府県名等を挿入した。完成した時空間マップは,山形県衛生研究所ホームページ上で公開し,随時更新した。

    活動内容 2020年8月に時空間マップの公開を開始し,以降,山形県で経験した第六波までの流行状況を公開した。その中で確認された,第一波(2020年3~5月)から第五波(2021年7~9月)までに共通していた流行の特徴をまとめ,ホームページ上に掲載した。あわせて,その特徴を踏まえた感染対策(山形県外での流行と人の流れの増加の把握,飲食店クラスターの発生抑止,および家庭内感染の予防)を地域住民に提言した。2022年1月以降の第六波では,10歳未満,10代,そして子育て世代の30代の感染者が増加し,保育施設・小学校におけるクラスターも増えていたことから,これら施設においてクラスターが発生した際の家庭内感染の予防徹底を呼びかけた。

    結論 時・場所・人の情報を含むCOVID-19流行状況をまとめた図を作成・公開する中で得られた気づきを基に,地域住民に対して具体的な感染対策を提言することができた。本報告は,自治体が公表している感染者情報を用いた新たな公衆衛生活動の方策を示した一例と考えられる。

  • 鈴木 るり子, 坪田(宇津木) 恵, 佐々木 亮平, 下田 陽樹, 藤野 善久, 伊香賀 俊治, 狩野 徹, 坂田 清美
    論文ID: 21-146
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 「住まい」は人が最も長く曝露を受ける場である。厚生労働省は地域包括ケアシステムの取り組みの中で,土台としての高齢者のプライバシ—と尊厳が十分に守られた住環境,すなわち騒音やカビ等の「住まい(以下「物理環境」)」,住居状況や社会的支援等の関わりの「住まい方(以下「社会環境」)」の重要性を基本的要素として掲げている。本研究は,災害公営住宅への移転も進んだ2018年度の被災高齢者を対象に,現在の住居形態と「物理環境」「社会環境」の関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 2011年度に岩手県沿岸部で実施した大規模コホート研究(RIAS Study)に参加した65歳以上のうち,2018年度調査票の回答者3,856人を対象とした。現在の住居形態に関する設問から住居形態は以下の分類とした:“震災前と同じ(同所再建含)”,“仮設・みなし仮設”,“災害公営住宅”,“新所新築”,“その他”。「物理環境」については,国土交通省が行うスマートウェルネス住宅等推進調査事業における住宅健康チェックリストを用い,「社会環境」については,RIAS調査票より,独居,ソーシャルネットワーク,ソーシャルキャピタルについて評価した。“震災前と同じ(同所再建含)”と比較した他の住居形態と,「物理環境」「社会環境」の各項目の関連を,多変量ロジスティック回帰分析,重回帰分析より検討した。

    結果 最終的な解析対象は3,856人(男性39.1%,平均年齢74.6歳)であった。住居形態と「物理環境」の関連では,震災前と同じ群と比較し,新所新築,災害公営住宅,その他の群で住まいの健康度が高く,仮設・みなし仮設群の健康度が低かった。一方,「社会環境」との関連では,震災前と同じ群と比較し,災害公営住宅群で独居者が有意に多く,災害公営住宅,新所新築群でソーシャルキャピタルが有意に低かった。また,ソーシャルネットワークでは,震災前と同じ群と比較し,災害公営住宅群で有意に低く,サポートの内訳では,災害公営住宅群では家族からのサポート,新所新築群では友人からのサポートが有意に低かった。

    結論 高齢者においては,特に既存コミュニティの有無にかかわらず新たな土地でソ—シャルキャピタルやソーシャルネットワークを築くことが難しいことが示された。地域に出るきっかけづくりを含む,長期的な高齢者支援のあり方について早急な取り組みが求められる。

  • 佐々木 晶世, 叶谷 由佳, 柏﨑 郁子, 榎倉 朋美
    論文ID: 21-154
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 要介護者の介護を含む多重介護を担う家族介護者の現状と課題を明らかにすること。

    方法 6都府県の居宅介護支援事業所3,123件の介護支援専門員を対象とし,無記名自記式質問紙を送付し,497件から返送,490件を有効回答とした。

    結果 83.1%の介護支援専門員が多重介護を支援していた。多重介護事例の被介護者数は「2人」215件(53.3%)が最も多かった。多重介護の課題解決に主介護者の生活も守る視点・介護者ケアが必要と回答する者が多かった。被介護者の最大事例は6人だった。対象者が担当した被介護数の多い事例の主介護者は50代,女性,既婚が最も多く,通院者が36.9%いた。被介護者は80代が多く,被介護者数が多くなるにつれ,18歳以下の子育てや世話も含まれた。回答者が印象に残った多重主介護者の困難・問題は『介護に対する認識による影響』『主介護者の生活が守られない状況』『今後の人生設計の見通しの立たなさ』『サポートネットワークからの孤立』『制度のアクセシビリティとユーサビリティの課題』だった。

    結論 従来の被介護者ベースの支援だけでなく,多重介護を担う家族介護者の視点での支援体制を検討する必要性が示唆された。

  • 谷 直道, 竹内 研時, 福田 治久
    論文ID: 22-038
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 近年,糖尿病と歯周病には双方向の関連性があることが多数報告されている。しかしながら,歯周ポケットの深さと糖尿病の新規発症に関する縦断的な関連性についてはさらなる議論の余地がある。従って,本研究は地域住民における成人歯科健診データを用いて,歯周ポケットの深さと糖尿病の新規発症の関連性を検証することを目的とした。

    方法 本研究は,東京都某区で2016年4月から2019年3月までに成人歯科健診を受診した20歳以上の成人5,163人(57.4±13.9歳,女性66.3%)を対象として,歯科健診の歯周ポケットコードを用いて歯周ポケット健全群,4~5 mm群,6 mm以上群の3群に分類し2020年3月末日まで追跡を行った。さらに同区の国民健康保険および後期高齢者医療保険の医科レセプトデータ傷病名から,疑い病名を除く糖尿病のICD10コードを抽出し,歯科健診の受診日以降に発症した者を糖尿病ありと定義してアウトカムに用いた。糖尿病発症率の比較にはログランク検定及びCox比例ハザード回帰分析を用いた生存時間分析と感度分析を行った。

    結果 ログランク検定の結果,3群間の糖尿病累積発症率は有意に異なっていた(P<0.01)。また,性別,年齢,喫煙習慣,現在歯数,口腔清掃状態を調整したCox比例ハザード回帰分析の結果,歯周ポケット健全群に対する6 mm以上群の調整ハザード比(95%信頼区間)は1.44(1.04-2.00)倍の有意な関連性が認められた。さらに40歳以上を対象とした感度分析の調整ハザード比(95%信頼区間)は歯周ポケット健全群に対して6 mm以上群が1.55(1.11-2.16)倍,40歳以上の男性では1.72(1.04-2.85)倍の有意な関連性を認めた。しかし,40歳以上の女性には有意な関連性は認められなかった(1.39[0.89-2.18])。

    結論 本研究の結果,地域住民において歯周ポケットの深さと糖尿病の発症に関する縦断的な関連性が示唆された。特に,40歳以上の男性においてその関連性が顕著であったことから,40歳未満の若年層とりわけ若い男性に対して適切な歯科保健指導を実践し口腔状態を良好に保つことは口腔衛生の観点のみならず,将来的な糖尿病予防の観点からも重要であると考えられる。

  • 岩佐 一, 石井 佳世子, 吉田 祐子
    論文ID: 22-047
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 「健やか親子21(第2次)」では,父親の育児参加の促進が目標のひとつにあげられており,積極的な促進が望ましい。父親の育児参加の関連要因を明らかにすることによって,父親の育児参加を促進するための施策に資する知見を提出できることが考えられる。本研究では,子育て期の父親を対象として調査を実施し,性別役割分業観ならびに母親からのソーシャルサポートと父親の育児参加の関連について検討することを目的とした。

    方法 インターネット調査会社に委託し,3か月~6歳の子どもを養育する父親360人(25~50歳,全て常勤職員)を対象としてインターネット調査を実施した。目的変数として,「父親の育児・家事参加尺度」(11項目,4件法,例「子どもの世話」,「料理」)における「育児」得点,「家事」得点を,説明変数として,性別役割分業観(「夫は外で働き,妻は家庭を守るべきである」,4件法)ならびに母親(父親の配偶者・パートナー)からのソーシャルサポート(評価的サポート,情緒的サポート,手段的サポート)を,統制変数として,父親の年齢,母親の就労状況,子どもの人数,末子の年齢,保育園・幼稚園の利用,育児支援サービスの利用,低い経済状態自己評価,平日の労働時間,夫婦関係満足度を測定した。従属変数として「育児」得点,「家事」得点を,独立変数として性別役割分業観とソーシャルサポート,性別役割分業観とソーシャルサポートの交互作用項,上述した統制変数を一斉投入した重回帰分析を行った。

    結果 分析対象者は360人であった(平均年齢36.8歳,標準偏差5.6)。重回帰分析の結果を以下に記す。性別役割分業観は,「育児」得点(β=−0.103),「家事」得点(β=−0.125)と有意に関連した。評価的サポートは,「育児」得点(β=0.142),「家事」得点(β=0.199)と有意に関連した。性別役割分業観・手段的サポートの交互作用と「育児」得点との関連が有意であったため(β=0.176),単純傾斜解析を行ったところ,性別役割分業観が高い者では,手段的サポートと「育児」得点との関連が有意であった(β=0.242)。

    結論 平等的な性別役割分業観を持つ父親,評価的サポートを受ける父親は育児参加する傾向にある可能性が示唆される。また,伝統的な性別役割分業観を持つ父親において,手段的サポートを受ける者ほど育児参加する傾向にある可能性が示唆される。

  • ロザリン ヨン, 野村 恭子, 高塚 雄介, 藺牟田 洋美, 谷口 仁史, 伊藤 弘人, 大平 哲也, 堤 明純
    論文ID: 22-025
    発行日: 2022/01/15
    [早期公開] 公開日: 2022/10/20
    ジャーナル フリー 早期公開

     ひきこもりという言葉が社会にはじめて認知されたのは1980~90年代で,「ニート」という言葉も登場し,無責任な若者の問題とされていた。ところが,内閣府調査や国内外の調査・研究の集積によって,ひきこもりの背景は精神疾患に限定されるものではなく,社会システム,愛着形成,家庭背景,教育など様々な要因でコミュニティや人との関係がうまく構築できずひきこもりに陥る人も多くいることが明らかになった。つまり,ひきこもりとは,「症状」や「状態」を表す言葉であり,疾患ではないため,なぜ,その状態に陥っているのか,多様な背景とニーズを理解・分析し,個人に対峙することが必要である。現在,長期化するひきこもりが40~50代となり,親の高齢化に伴い,本人のみならず,家族までもが,社会的に孤立し,生活が立ち行かなくなるケースも目立ちはじめている。これまで,我々が住む社会全体が,ひきこもりに対する関心や理解が乏しかったことは否めない。一方,超高齢化社会に際し問題となっている高齢者の閉じこもりは『外出頻度が週1回未満であり,要介護状態ではないこと』と定義され,社会的引きこもりとは同義ではない。昨今のコロナ禍における高齢者全体の外出頻度の低下により,フレイル予備群の増加が全国的な問題となっている。

     このように引きこもりや閉じこもりはいずれも可逆的な状態であるため,改善に向けた支援が重要であることは共通している。本稿は,第79回日本公衆衛生学会において日本公衆衛生学会メンタルヘルス・自殺対策委員会が企画したシンポジウム「年代別ひきこもりの課題,予防,対策」に登壇したひきこもり支援を行っている活動家やひきこもりの研究者が,公衆衛生の実地活動家や研究者に向けて取りまとめた知見である。

  • 澤 律子, 杉山 正子
    論文ID: 21-092
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 子宮頸部細胞診とHPV検査に関して,医師採取と自己採取での結果評価を行うことを目的とした。

    方法 対象者は日本予防医学協会附属4診療所にて子宮頸がん検診を受診した受診者で研究に同意した者とした。診療所での子宮頸がん検診受診後,約1か月の間隔をあけて,加藤式自己採取容器により自己検体を採取し,郵送により提出する方法を用いた。得られた同一受診者の医師採取と自己採取による細胞診およびHPV検査の結果を評価した。結果の評価に関してはχ2検定とκ分析を用いた。

    結果 医師採取と自己採取の両採取法を施行した同一受診者134人の比較では,細胞診の有所見率は医師採取6.0%,自己採取2.2%で医師採取が高かったが,統計学的な有意差は認められなかった。しかし,自己採取では子宮頸管内膜細胞の採取ができていなかった。HPV検査の陽性率は同一受診者148人において,医師採取および自己採取で14.2%を示し,差を認めなかった。しかしHPV18型は自己採取法でのみ1例が陽性であった。

    結論 本研究結果により,自己採取による検討や液状細胞診の導入およびHPV検査との併用の研究を進める必要性が示唆された。

  • 小山 史穂子, 勝見 友一, 尾谷 仁美, 宮代 勲
    論文ID: 22-021
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 COVID-19感染拡大に伴い,複数回の緊急事態宣言(以下,宣言)が発令され,院内感染を恐れる受診控えや,感染症対策による医療機関の一部機能停止による受診困難が問題となっている。本研究では,大阪府の1回目と3回目の宣言期間中の受診控え,受診困難の状況を診療科別に報告する。

    方法 大阪府が運営し,18歳以上の府民を対象とした健康アプリ「アスマイル」を用いて,1回目と3回目の宣言期間直後および期間終盤に宣言に伴う受療行動等の変化に関するアンケート調査を行った(調査期間:2020/6/23-7/12および2021/6/1-20)。全体質問を,「宣言期間中,医療機関の受診を控えようと思いましたか」という設問に対して,「とても思った/思った/あまり思わなかった/思わなかった」から単回答で,診療科別の受診控えは「宣言期間中,受診を控えようと思う診療科はありましたか」と,受診困難は「宣言期間中に受診したかったが,医療機関側の都合(休診,時間短縮,医療物資不足など)で受診ができなくなった診療科はありましたか」と設定し,各々「なかった/内科/外科/皮膚科/小児科/精神科・心療内科/整形外科・リハビリテーション科/眼科/耳鼻いんこう科/産婦人科/歯科/その他」の中から複数選択可で回答を得た。利用機会のある診療科に限定するため,2020年調査で診療科別に過去1年間に受診経験のある者だけにし,受診控えと受診困難の割合を算出した。

    結果 両調査に回答した12,469人のうち,性・年齢が明らかである12,461人を解析対象者とした(2021年調査時:男性;4,389人,女性;8,072人,平均年齢:55.2歳(±11.4))。全体質問は,2020年調査で6,343人(50.9%)が,2021年調査では1,451人(11.6%)が受診を控えようと「とても思った」と回答した。受診控えは2020年調査で歯科61.5%,内科59.2%で高く,2021年調査でも内科29.9%,歯科27.5%で高かった。受診困難ではいずれの診療科も10%未満と低く,最も高い診療科は両調査ともに小児科で8.9%,3.6%であった。

    結論 1回目の宣言期間では歯科と内科で半数以上が受診控えの意向があり,3回目の宣言期間中には減少したが,一定数は発生していたことがわかった。受診困難はいずれの診療科でも僅かであった。

  • 堀内 清華, 秋山 有佳, 杉浦 至郎, 松浦 賢長, 永光 信一郎, 横山 美江, 鈴木 孝太, 市川 香織, 近藤 尚己, 川口 晴菜, ...
    論文ID: 22-027
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 母子保健情報の利活用は,日常の母子保健活動における個別支援に貢献できると期待される。2020年6月より,乳幼児健康診査(以下,乳幼児健診)等の情報の電子化が各市区町村に義務付けられたが,その実施状況は明らかではない。2020年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業(健やか次世代育成総合研究事業))「母子の健康改善のための母子保健情報利活用に関する研究」研究班(研究代表者:山梨大学 山縣然太朗)は,情報利活用における課題を明らかにすることを目的として,市区町村における実態調査を行った。

    方法 2020年12月1日から2021年1月29日に,全1,741市区町村(指定都市,中核市,保健所設置市,特別区を含む。)の母子保健主管部(局)担当課を対象に,乳幼児健診等の情報の電子化,ならびに情報連携の実施等を問う自記式調査票による調査を行った。

    結果 全国1,741市区町村のうち985の市区町村から回答を得た(回答率 56.6%)。乳幼児健診における最低限の項目の電子化をしていたのは,3-4か月,1歳6か月,3歳児健診で931(94.5%),936(95.0%),936(95.0%)であった。副本登録については,164(16.7%)の市区町村では情報の再入力,42(4.3%)では,何らかの追加作業が必要であり,追加作業が必要な市区町村では,必要のない市区町村に比べて有意に負担を感じていた。住民の転出入等に伴い乳幼児健診等の情報連携を実施した市区町村は,130(13.2%),実施しなかったのは756(76.8%),転出・転入なしが90(9.1%)であった。情報連携の実施率は指定都市・中核市・特別区で有意に高かった。情報連携を行わなかった理由として,指定都市・中核市・特別区では,「転入者を随時把握して情報照会することが負担」,その他の市町村では,「従来の方法で情報共有ができており,情報連携を行う必要性を感じない」がより多い傾向にあった。

    結論 最低限電子化すべき項目は9割以上の市区町村で電子化されていたが,情報連携実施は一割程度であった。都市部および大都市周辺の市区では情報連携の作業負担が大きく,その他の市町村では情報連携の利点を感じていない傾向が示された。電子化項目の整備,即時で簡便な副本登録による作業負荷軽減など多面的な取組が必要と考えられた。

  • 坂口 景子, 武見 ゆかり, 林 芙美, 赤松 利恵
    論文ID: 22-031
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 健康日本21(第二次)の中間評価では,食環境整備と個人の食習慣改善とが必ずしもつながっていない状況が示唆された。そこで,健康日本21(第二次)の目標である2つの食行動(主食・主菜・副菜が揃う頻度と野菜摂取)に関連する食環境の認知およびヘルスリテラシーを検討した。

    方法 2019年3月に調査会社登録モニターの20~64歳を対象にWeb調査を実施した。食環境の認知,ヘルスリテラシー,食行動,社会経済的状況,属性を尋ね,モニター9,667人中2,851人(回収率29.5%)の回答を得た。食環境の認知は6項目(栄養バランスのとれた食事が入手しやすい,日常の買い物に不便がない,栄養バランスのとれた食事が適正な価格で入手できる,営業時間やサービスが利用しやすい,食材料の質に満足している,食の安全面に恵まれている),ヘルスリテラシーは5項目(情報取集,情報選択,情報伝達,情報判断,自己決定)とした。解析対象は社会経済的状況の不明者等を除外し2,111人(男性1,134人,女性977人)とした。2つの食行動を各々従属変数,食環境の認知,ヘルスリテラシーを独立変数,属性,社会経済的状況を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を行った。

    結果 「主食・主菜・副菜が揃う頻度1日2回以上が毎日」に対し,食環境の認知:食の安全面に恵まれている者(男性)と栄養バランスのとれた食事が適切価格で入手できる者(女性)は,そうでない者に比べ調整オッズ比[95%信頼区間]が1.54[1.19,1.98](男性),1.37[1.02,1.82](女性)であった。ヘルスリテラシー:情報収集得点(男性)は負の,自己決定得点(男性,女性)は正の関連をみとめた。「野菜摂取皿数が1日3皿以上」に対し,食環境の認知:栄養バランスのとれた食事が入手しやすい者(男性)と日常の買い物に不便がない者(女性)は,そうでない者に比べ調整オッズ比[95%信頼区間]が1.54[1.15,2.06](男性),1.55[1.12,2.15](女性)であった。ヘルスリテラシー:情報伝達得点(男性),自己決定得点(女性)は正の関連をみとめた。

    結論 主食・主菜・副菜が揃う頻度と野菜摂取の改善には,情報収集段階に留まらず自己決定など,より高いレベルのヘルスリテラシーの獲得と食環境整備の充実を両輪で推進する必要性が示唆された。

  • 栗田 淳弘, 中村 好一
    論文ID: 22-037
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/09/02
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 高齢者の健診結果と死亡・要介護発生との関連を明らかにする。

    方法 栃木県の後期高齢者医療被保険者のうち,2020年度に健診を受診し,要支援・要介護認定を受けていない75歳以上の男女53,651人(男24,909人,女28,742人)を対象とし,健診受診日から2021年8月末までの死亡,自立喪失(死亡又は要介護2以上)の発生について観察した。健診結果について特定健診の受診勧奨判定値等を基準に2群に分け,カプラン・マイヤー法による1年生存率および1年自立率の算出,コックスの比例ハザードモデルによる死亡ハザード比および自立喪失ハザード比の推定を行った。

    結果 観察期間中の死亡は424人(男281人,女143人),自立喪失は1,011人(男529人,女482人)であった。1年生存率および1年自立率は血清アルブミン低値が0.920~0.958で男女ともに最も低かった。コックスの比例ハザードモデルで年齢階層・BMI階層・後期高齢者質問票の回答を調整変数として解析した結果,男では血色素低値の死亡ハザード比が3.05[2.00-4.64],自立喪失ハザード比が2.58[1.87-3.56]で最も高く,女では血清アルブミン低値の死亡ハザード比が5.87[2.45-14.07],自立喪失ハザード比が3.00[1.70-5.29]でとくに高かった。高齢者健診の受診者の自立喪失等について分析した先行研究では,後期高齢者における低アルブミン血症の死亡ハザード比は2.7[1.2-6.0],貧血の死亡ハザード比は1.8[1.1-2.9]であり,本研究の結果は先行研究よりも高い傾向であった。血清アルブミン低値と脳卒中との関連を示す先行研究および血色素低値と死亡との関連を示す先行研究等があり,栃木県は脳血管疾患や心疾患の年齢調整死亡率が高いことから,これらの疾病のリスク因子を有する者に低栄養が加わることで,先行研究と比較して血清アルブミン低値や血色素低値のハザード比がとくに高い結果となった可能性が考えられる。

    結論 本研究により,栃木県において高齢者の低栄養は死亡・要介護発生との関連が高いこと,および地域によって高齢者の死亡リスクおよび自立喪失リスクの傾向が異なることが明らかになった。

  • 和田 ありさ, 樺山 舞, 向井 咲乃, 高渕 紗矢香, 加藤 弘子, 西住 智子, 神出 計, 谷掛 千里
    論文ID: 21-085
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 結核患者は感染性の消失を基準に退院するが,退院後高齢者施設への受入れを拒否される場合が少なくない現状にある。これまで施設職員の不安に焦点を当てた研究はない。そこで,入院治療を終えた結核患者受入れに対して高齢者施設職員が抱く不安の関連要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 対象は大阪府茨木保健所管内の高齢者施設74施設のうち了承の得られた70施設(通所型のみを除く)の全職員3,213人である。施設長宛てに職員人数分の無記名自記式質問紙を郵送した。調査票は各施設において個々の方法で職員に配布,回収された。施設ごとにまとめられた調査票は,保健所保健師が直接施設を訪問して回収した。調査内容は入院治療を終えた結核患者を受入れる状況を想定した場合に抱く不安感・抵抗感・困難感(以下,受入れ不安)や年齢,性別,職種,勤務年数,結核患者に関する経験,結核の知識等である。受入れ不安の有無と各項目との関連について検討した。

    結果 1,950通が回収され,回収率60.7%であった。そのうち分析に用いる項目に欠損がない1,290人を分析対象とした。受入れ不安についてありと回答した者は987人(76.5%)であった。受入れ不安ありが有意に多かった項目は職種(介護士・ヘルパー),結核患者に関する経験がない者であった。また退院後の結核患者の感染力や対応,感染後発病する可能性に関する知識を問う質問に誤答した者においても受入れ不安ありが有意に多く認められた。

    結論 本研究より,入院治療を終えた結核患者の高齢者施設への受入れに対して高齢者施設職員が抱く不安の関連要因が明らかになった。本研究で得られた結果をもとに高齢者施設職員がより不安なく退院後の結核患者を受入れ,対象者が円滑に元の生活へ移行できる環境を整備していく必要がある。

  • 中村 有里, 長谷田 真帆, 西岡 大輔, 雨宮 愛理, 上野 恵子, 近藤 尚己
    論文ID: 21-118
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 人とのつきあいのわずらわしさなど対人関係上のストレスから対人関係や社会的場面を避け,たとえ危機に陥っても他者に援助を求めない傾向が若者を中心に見られている。他者に援助を求める行動には,子ども期に両親に援助を求めた経験が関係することが報告されている。しかし,家族への援助の要請が難しい場合でも,近隣住民との関係の中で,他者に援助を要請するようになることも考えられる。そこで本研究では,子ども期の両親への援助要請の経験と成人期の対人関係の忌避傾向の関連における地域交流の経験による効果の修飾の有無を検討した。

    方法 名古屋市の18~39歳を対象にした調査より,1,274人のデータを分析した。修正ポアソン回帰分析を用いて,子どもの時に父親・母親に対して援助を要請した経験,小・中学校の時の地域行事に参加した経験,およびこれらの交互作用項による対人関係の忌避の割合の比を男女別に算出した。年齢・両親の最終学歴・子どもの時の母親の就労状況および主観的経済状況,もう片方の親への援助要請経験を調整した。また,援助を要請した経験,地域行事に参加した経験それぞれの有無別に対人関係の忌避の状態にある者の割合の予測値を算出し,効果の修飾の有無を評価した。

    結果 父親への援助要請経験と地域行事への参加経験の交互作用項を入れた多変量解析および算出された予測値からは,地域行事への参加経験による効果の修飾は男女とも観察されなかった。母親への援助要請経験に関しては,男性で,地域行事への参加経験による効果の修飾が観察され,母親への援助要請経験があり,かつ地域行事への参加経験があった場合は,なかった場合の予測値よりも低い傾向があった。女性では,地域行事への参加経験による効果の修飾は観察されなかった。

    結論 対人関係の忌避を抑制する上で,とくに男性では,子ども期の母親への援助要請経験があった場合に,地域行事への参加経験があることの重要性が示唆された。親からの適切な援助を得ることに加えて子どもの地域交流を促すことで,将来の社会生活で困難に陥るリスクを緩和できる可能性がある。

  • 松本 綾希子, 奥山 絢子, 後藤 温, 町井 涼子, 祖父江 友孝, 高橋 宏和
    論文ID: 22-011
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 新型コロナウイルス感染症の流行ががん患者の受療状況に与えた影響とその理由の評価。

    方法 2021年12月10-13日にインターネットによるアンケート調査を実施した。対象は40-79歳の男女とし,予備調査と本調査の二段階で調査を行った。調査会社が保有するパネルメンバーのうちがん疾患ありと登録されている5,000人に予備調査を行い,現在治療中または経過観察中のがん患者に本調査への参加を依頼した。本調査の項目は,通院や治療日程の変更の有無,変更内容,変更理由,病院にかかることに対する抵抗感,今後の希望通院方法・頻度の5項目とした。2020年4月から2021年12月までの状況を対象とした。

    結果 1,920人から回答を得た。新型コロナウイルス流行の影響で通院や治療日程が変更となったのは13.8%であった。変更になったものは主に通院日や方法(144人),治療の日程(87人),診断から治療開始まで時間がかかった(44人)などであり,日程変更があった治療内容は手術またはカテーテル治療(55人),点滴の抗がん剤治療(28人),放射線治療(22人)などであった。変更の理由は,感染の機会を減らすために医療機関から変更を提案された(49.6%),医療機関がコロナ対応に専念するため(27.3%),自分の感染が心配だったので自分から変更を申し出た(17.0%)などであった。変更の有無については診断時期による影響が大きく,2020年4月以降にがんと診断された人では19.9%だが,それ以前に診断された人では11.9%であった。居住地によって変更割合に差はなかった。

    結論 新型コロナウイルス感染症流行ががん患者の受療状況に影響を与えていたことが示唆された。今後も引き続き長期的な影響について調査を継続する必要がある。

  • 佐野 碧, 岩佐 一, 森山 信彰, 中山 千尋, 宍戸 由美子, 安村 誠司
    論文ID: 22-012
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/07/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 急速に発展しているインターネット(以下,ネット)等の普及に伴い,ネットの過剰利用や利用年齢の若年化が問題視されている。中学生・高校生(以下,中高生)のネット等の長時間のメディア利用と朝食欠食,運動不足,睡眠時間の減少,精神的健康度の低下の関連が報告され,中高生の健康悪化が懸念される。そこで,本研究では中高生におけるメディアの利用と主観的健康感の関連について明らかにすることを目的とした。

    方法 2016年5月に実施した「福島市民の健康と生活習慣調査」のデータを分析した。対象者は福島市内の全中学校・高校に在籍する生徒から1,633人を無作為抽出した上で,自記式質問紙調査を実施,留め置き回収とした。最終的に1,480人(中学生583人,高校生897人)を解析の対象とした。解析は中学生・高校生別に行い,主観的健康感を従属変数,メディア利用時間を独立変数,各種生活習慣等を調整変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比(OR)とその95%信頼区間(95%CI)を算出した。

    結果 主観的健康感が不良の者は,中学生では52人(8.9%),高校生では123人(13.7%)であった。中高生において,3時間以上のメディア利用をするものは主観的健康感が不良となる割合が高く,高校生では有意な関連を認めた(OR : 2.30,95%CI : 1.36-3.90)。また,中高生共に「肥満」,「運動習慣(なし)」,「ストレス(あり)」と主観的健康感不良の間に有意な関連が示された。さらに,高校生では「就寝時間(遅い)」と主観的健康感不良の関連も認めた。

    結論 中高生においてメディア利用時間が長い者は,主観的健康感が不良となりやすい可能性が示唆される。

  • 金森 悟, 甲斐 裕子, 山口 大輔, 辻 大士, 渡邉 良太, 近藤 克則
    論文ID: 21-141
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 高齢者の中には運動行動に関心が低くても,健康の保持・増進に必要な歩行時間(1日30分以上)を満たしている者が存在する。しかし,そのような集団の特性は明らかになっていない。そこで,本研究では,運動行動の変容ステージ別に,1日30分以上の歩行を行っている高齢者の特性を明らかにすることとした。

    方法 本研究は2019年度に日本老年学的評価研究(JAGES)が行った自記式郵送法調査を用いた横断研究である。対象者は24都道府県62市町村在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者45,939人とした。調査項目は1日の歩行時間,運動行動(1回20分以上で週1回以上)の変容ステージ,身体活動の関連要因(人口統計・生物学的要因8項目,心理・認知・情緒的要因3項目,行動要因8項目,社会文化的要因40項目,環境要因3項目)とした。分析は変容ステージで3群に層別し(①前熟考期,②熟考期・準備期,③実行期・維持期),目的変数を1日30分以上の歩行の有無,説明変数を身体活動の関連要因,調整変数を人口統計・生物学的要因全8項目としたポアソン回帰分析とした。

    結果 調査への回答者24,146人(回収率52.6%)のうち,分析に必要な項目に欠損がある者,介護・介助が必要な者を除いた18,464人を分析対象とした。前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみ,1日30分以上の歩行ありと有意な関連が認められた要因は,人口統計・生物学的要因3項目(配偶者あり,負の関連では年齢80歳以上,および手段的日常生活動作非自立),行動要因2項目(外出頻度週1回以上,テレビやインターネットでのスポーツ観戦あり),社会文化的要因6項目(手段的サポートの提供あり,友人と会う頻度が週1回以上,町内会参加,互酬性高い,趣味が読書,負の関連では趣味が囲碁)であった。

    結論 高齢者において,前熟考期のみ,または前熟考期と熟考期・準備期のみで1日30分以上の歩行と関連が認められたのは,人口統計・生物学的要因,行動要因,社会文化的要因の中の11項目であった。変容ステージの低い層でも1日30分以上の歩行を促すには,身体活動を前面に出さず,人とのつながりなどを促進することが有用である可能性が示された。

  • 杉浦 圭子, 野中 久美子, 村山 幸子, 藤原 佳典, 村山 洋史
    論文ID: 21-152
    発行日: 2022年
    [早期公開] 公開日: 2022/06/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 新型コロナウイルス感染症流行により2020年4月~5月の1回目緊急事態宣言は,ロックダウンに近い内容であった。本研究では,緊急事態宣言中および緊急事態宣言解除後(以下,活動再開後とする)の第2層生活支援コーディネーターの住民支援活動の状況について調査を通じて把握し,さらに行政や所属先からの業務に対する指示の有無は緊急事態宣言中や活動再開後の生活支援コーディネーターの活動にどのように影響をしたのかを明らかにすることを目的とした。

    方法 東京都特別区内の第2層生活支援コーディネーター279人に2020年10月に自記式質問紙を配布,181件回収した。調査項目は基本属性,緊急事態宣言前後の感染拡大前と活動再開後,緊急事態宣言中のコーディネーターの活動内容とその頻度を尋ね,加えて緊急事態宣言中と活動再開後の行政や所属先から指示の有無も尋ね,自由記載にてその内容を確認した。解析は感染拡大前と活動再開後の活動頻度との比較と行政や所属先からの指示の有無で緊急事態宣言中と活動再開時の活動頻度を比較した。

    活動内容 感染拡大前と活動再開後の比較では【社会資源の把握と関係者への情報提供】に含まれる担当地区の地域診断表の作成・改訂,情報誌やリーフレットなどの作成や配布等は活動再開後に頻度が高くなっていたが,多世代の担い手養成やサービス開発,地域関係者のネットワーク化等は前後で変化はみられなかった。緊急事態宣言中に活動頻度が高かったのは所属機関業務であり,地域住民への訪問や声掛けは3.4%だった。緊急事態宣言中に行政や所属先から91.1%指示があり,指示がある方が全般的に活動頻度が高まっていた。活動再開後の指示は76.5%だったが,指示がある方が個別面談や訪問による住民のニーズ把握,サービスとのマッチングおよび活動団体の再開支援等の活動頻度が高まっていた。

    結論 活動再開後には社会資源の把握と関係者への情報提供が優先的に行われていた。緊急事態宣言中は地域住民への訪問,声掛けはほぼ実施されていなかった。緊急事態宣言中,活動再開後は指示がある方が活動の頻度が高くなり,とくに活動再開後は指示がある方が,住民に働きかける活動頻度が高くなっていた。新たな感染症の急拡大時は現場に混乱が生じる可能性が高く,具体的な指示があることは生活支援コーディネーターの活動内容に影響することが示唆された。

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