目的 介護施設で働く介護職員のメンタルヘルスが日本で課題となっている。高年齢介護助手の導入は,介護職員の業務を高年齢介護助手が一部担うことにより介護職員の負担を軽減させることを狙う。一方で,高年齢介護助手が介護職員の業務促進・阻害要素をどのように変化させ,介護職員の情緒的消耗感と如何に関連するかは明示されていない。本研究は,高年齢介護助手の雇用によって介護職員が感じた業務促進・阻害要素の変化を調べ,介護職員の情緒的消耗感との関連を探ることを目的とする。
方法 2020年度「介護老人保健施設等における業務改善に関する調査研究事業」の調査データを用いた。介護職員の票のうち,勤務先の施設が高年齢介護助手(60歳以上の介護助手)を雇用していると回答した5,185人を解析した。従属変数は日本語版バーンアウト尺度の下位尺度である情緒的消耗感を用いた。独立変数として,高年齢介護助手雇用による介護職員の業務促進・阻害要素の変化(改善,維持・悪化)を9つ設定した。
結果 高年齢介護助手の雇用により介護職員が改善したと感じた項目は,「全体的な業務の量」(改善:63.6%),「普段の業務における気持ちのゆとり」(改善:39.8%),「介護の専門性を活かした業務への集中」(改善:38.0%)であった。調整変数とすべての業務を調整した重回帰分析の結果,「全体的な業務の量」が減少し(β=-0.383, 95%CI: -0.719, -0.047),「普段の業務における気持ちのゆとり」が増加し(β=-0.432, 95%CI: -0.796, -0.068),「介護の専門性を活かした業務への集中」が向上し(β=-0.574, 95%CI: -0.937, -0.210),「施設職員間の人間関係」が改善した(β=-0.871, 95%CI: -1.263, -0.480)と回答した者ほど,情緒的消耗感得点が低かった。対して,「地域の人や団体と関わる機会」が増加した(β=0.800, 95%CI: 0.162, 1.437)と回答した者ほど,得点が高かった。
結論 高年齢介護助手の雇用は介護職員が感じる業務促進・阻害要素の変化に関与し,それらが介護職員の低い情緒的消耗感と関連したことから,介護職員のバーンアウトのリスクを軽減する対策になり得る可能性が示唆された。
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