日本公衆衛生雑誌
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早期公開論文
早期公開論文の9件中1~9を表示しています
  • 佐藤 麻記子, 坂口 景子, 武見 ゆかり, 丸山 浩
    論文ID: 23-101
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 働き盛り世代の高血圧予防アプローチとして,川越市保健所では,特定給食施設指導を活用した減塩への意識改善と実践を促す事業を実施することとした。本報告は,管内事業所を対象に減塩に焦点を当てた社員食堂の食環境整備を推進し,その影響を従業員の尿中ナトリウム測定等により評価した取組の報告である。

    方法 埼玉県川越市内にある従業員数約270人のA事業所を対象とした。参加者は同意が得られた214人(約8割)であった。実施期間は2019年11月~2021年11月であった。高血圧者の減少を長期的な目標とし,本取組のアウトカムを,食塩摂取量の減少,尿中ナトリウム/カリウム比の低下,血圧の改善とした。その達成に必要な活動として,減塩に焦点を当てた社員食堂の改善(健康的でバランスのとれたスマートミール®の提供,全メニューの食塩相当量低減等)を行った。活動のアウトプットには,社員食堂の提供メニューの減塩,社員食堂の利用頻度の向上,社員食堂に対する主観的評価の向上,日頃の減塩意識の向上を位置付けた。評価時期は,3年間の社内定期健診時とし,尿検査,血圧測定(アウトカム),質問紙調査(アウトプット)を用いた。提供メニューの食塩相当量は,毎月,給食受託会社からデータの提供を受け把握した。

    活動結果 2019~2021年のデータに不備のない102人を解析対象とした。スポット尿による推定食塩摂取量(g/日)は,2019年の10.3±2.1から2020年9.8±2.4,2021年9.5±2.0と減少した(P=0.003)。収縮期血圧(mmHg)は,2019年の114.7±12.5から2020年111.7±12.1,2021年110.6±12.0と低下した(P=0.010)。社員食堂の提供メニュー別食塩相当量の変化は,定食A(P<0.001),定食B(P<0.001),カレー(P<0.001),麺(P<0.001)いずれも,2019年に比べ2020年と2021年の食塩相当量が減少した。

    結論 スマートミール®の導入と全メニューの減塩等の社員食堂の食環境整備を行った。1年後と2年後に従業員の食塩摂取量の低減,血圧値(収縮期,拡張期)の低下が認められた。2024年度より開始される国民健康づくり運動「健康日本21(第三次)」の推進に向けて,保健所等自治体の食環境整備の実践に役立つ示唆が得られた。

  • 嶋本 純也
    原稿種別: 会員の声
    論文ID: 24-044
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー 早期公開
  • 日本公衆衛生雑誌編集委員会
    原稿種別: 会員の声
    論文ID: 24-200
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー 早期公開
  • 松坂 方士, 雑賀 公美子, 田中 里奈, 松田 智大, 斎藤 博
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23-107
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 わが国では「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」別添「事業評価のためのチェックリスト」に従って対策型検診の精度管理を実施することとされている。ただ,現状では対策型検診の実施主体である市町村ががん登録を活用して感度・特異度を算出することは困難であり,すべてを直ちに実施することはできない。本稿では,市町村が実施主体であり,指針に則って精度管理を実施しているがん検診事業(対策型検診)に関して,都道府県がん登録情報を用いた比較可能な感度・特異度の算出に関する定義や方法を検討し,報告した。

    方法 検診の結果とがん罹患の有無の組み合わせによる偽陰性者や真陽性者などの受診者の4区分を定義するために,都道府県がん登録情報や市町村が収集しているがん検診情報を利用することとした。

    結果 偽陰性者を「がん検診を受診して異常なし(陰性)の結果であったが,がん検診の受診日から1年以内に対象がんが診断された受診者」と定義した。真陽性者,偽陽性者,真陰性者も同様に追跡期間(受診日からがん罹患の把握を終了するまでの期間)を1年間として,都道府県がん登録でのがん罹患情報の有無により分類することとした。これら4区分の受診者数から,感度・特異度を算出することとした。

    結論 感度・特異度は検査の性能を直接的に評価するものであり,本来はがん検診の精度管理にとって必須の指標である。今後は本稿の偽陰性者等の定義によって算出した感度・特異度による精度管理を実施する自治体が増加し,対策型検診がさらにがん対策に寄与することが望まれる。ただし,追跡期間やがん発見経緯の取り扱いに関しては,将来的に見直しが必要になる可能性がある。また,チェックリストを提出する個別医療機関の増加や,偽陰性者等のがん検診に関する基本的な知識の普及が今後の課題である。

  • 松﨑 英章, 辻 大士, 陳 涛, 陳 三妹, 野藤 悠, 楢﨑 兼司
    原稿種別: 原著
    論文ID: 23-111
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/24
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 本研究では,要支援・要介護リスク評価尺度(リスク評価尺度)における追跡9年間の要支援・要介護認定リスク(要介護化リスク)に対するカットオフ値を検討する。

    方法 本研究は,福岡県で実施された篠栗元気もん調査のデータを用いた9年間の前向き追跡研究である。2011年のベースライン調査に参加した要支援・要介護認定を受けていない篠栗町在住の高齢者2,629人のうち,データが得られた2,254人を解析対象とした。要介護化リスクの評価には,追跡3年までの期間で予測妥当性と外的妥当性を有することが示されており,すでにいくつかの市町村で利用されているリスク評価尺度を用いた(0–48点)。アウトカムは要支援・要介護認定とした。リスク評価尺度のカットオフ値は,追跡9年間の要介護化リスクをアウトカムとしたログランク検定のχ2値が最大となる得点とした。リスク評価尺度の合計得点についてはC統計量,カットオフ値については感度および特異度で予測妥当性を検証した。また,Cox比例ハザードモデルで算出したHazard ratio(HR)と95% confidence interval(95%CI)を用いて,リスク評価尺度をカットオフ値でカテゴリ化した2群(低得点群/高得点群)間における追跡9年間の要介護化リスクを比較した。多変量モデルでは,同居家族の有無,教育年数,経済状況,習慣的飲酒,習慣的喫煙,複数疾患罹患を調整した。

    結果 追跡8.75年の間に,647人(28.7%)が要支援・要介護認定を受けた。リスク評価尺度のカットオフ値は13/14点であった。リスク評価尺度の合計得点のC統計量は0.774であり,カットオフ値の感度と特異度はそれぞれ0.726と0.712であった。低得点群(0–13点)に対する高得点群(14点以上)の要介護化リスクのHR(95%CI)は有意に高く,5.50(4.62–6.54)であり,多変量モデルでは4.81(4.00–5.78)であった(P<.001)。

    結論 本研究では,先行研究(3年)よりも長い期間(9年)で追跡調査を実施した結果から,要介護化リスクの長期評価にはリスク評価尺度のカットオフ値を13/14点に設定する方法が適することが示唆された。また,このカットオフ値の利用は,介護予防に取り組む必要性を早い時期から啓発するための一次予防の手段の一つとして有用である可能性が示された。

  • 柴野 裕子, 森岡 典子, 柏木 聖代
    原稿種別: 総説
    論文ID: 23-106
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/13
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 本研究は,医療的ケア児のライフステージに沿って,児や家族に対してどのような協働が実践されているか,報告されている文献の整理により明らかにすることを目的とした。

    方法 JBI scoping review mannualに則ったスコーピングレビューを実施した。検索データベースはPubMed,CINAHL,医中誌を使用した。検索ワードとして,「collaboration」「Intersectoral Collaboration」「children with medical complexity」「children with special healthcare needs」「協働」や統制語,「医療的ケア児」「重症心身障害児」など複数の用語を組み合わせ検索した。対象文献の包含基準は,日本で医療的なケアが必要な児(0歳~18歳)に対する実践で,専門職種間による協働について報告しているもの,レビュー論文やプロトコル論文を除いた研究論文,英語または日本語論文とした。分析は,対象文献より協働に関する実践について抽出し,内容の類似性に基づいて分類後,ライフステージに沿ってまとめた。なお,文献の選定およびデータ抽出,分析は3人の研究者間でコンセンサスが得られるまで討議した。

    結果 分析対象は30文献であった(日本語27文献,英語3文献)。出版年は,14文献が直近3年以内に発表されていた。また,症例報告・実践報告は19文献・26事例で,専門職が対象の文献は11文献(量的研究:1文献,質的研究:10文献)であった。協働の実践内容は160件が抽出され,9つのカテゴリーに分類された。≪退院支援≫は,未就学児がすべてのサブカテゴリーの実践が報告されていたのに対し,就学児は,5つのサブカテゴリーのうち,2つの報告にとどまった。一方で≪幼・保・学校における維持期≫は,未就学児が7つのうち2つのサブカテゴリーで実践が報告されていたのに対し,就学児はすべてのサブカテゴリーで実践の報告があった。また,協働に関係する専門職に着目すると,医療・福祉・教育・行政と幅広い分野の専門職が関係していた。

    結論 協働の実践は各ライフステージで報告に差があった。また,関係する専門職は多岐に及ぶが,実践の報告は専門職に偏りがみられた。今後は,児やその家族を中心とした各種専門職間の協働の実践内容について調査していく必要がある。

  • 矢嶋 里菜, 松元 美奈子, 飯田 美穂, 原田 成, 澁木 琢磨, 平田 あや, 桑原 和代, 宮川 尚子, 中村 智徳, 岡村 智教, ...
    原稿種別: 資料
    論文ID: 23-110
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/13
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 疫学研究において服薬情報は自記式質問紙を用いて得ることが多いが,高齢者を対象に妥当性を検討した報告は希少である。本研究の目的は自己申告による服薬情報の妥当性をお薬手帳と比較して検討することである。

    方法 2019–2020年度に山形県鶴岡市の一般地域在住高齢者を対象として実施されたコホート研究の参加者370人において,自記式質問紙による薬剤情報をお薬手帳の薬剤情報と比較した。解析対象薬剤は降圧薬,脂質異常症用薬,抗心筋梗塞・抗狭心症薬,糖尿病用薬,抗リウマチ薬,骨粗鬆症・骨代謝改善薬,便秘薬,胃薬,抗不安・抗うつ薬,抗認知症薬,喘息治療薬,アレルギー治療薬,抗血栓薬,ステロイド,甲状腺疾患治療薬,解熱・鎮痛・抗炎症薬である。お薬手帳の薬剤情報を基準とし,調査日より前90日以内に服薬中で,28日以上処方されている内服薬,骨粗鬆症・骨代謝改善薬は注射薬も対象とした。ATCコード(解剖治療化学分類法)に基づいて薬効分類を行い,各薬剤の感度,特異度,カッパ係数を計算した。お薬手帳の持参がなかった者は「解析対象薬剤の使用なし」と定義し解析に組み込んだ。

    結果 男性146人,女性224人,平均年齢(標準偏差)は73.3(4.0)歳であった。各薬剤の感度と特異度は,降圧薬(0.97, 0.97),脂質異常症用薬(0.93, 0.98),抗心筋梗塞・抗狭心症薬(0.24, 0.99),糖尿病用薬(0.94, 1.00),抗リウマチ薬(1.00, 1.00),骨粗鬆症・骨代謝改善薬(0.82, 0.99),便秘薬(0.71, 0.98),胃薬(0.63, 0.97),抗不安薬・抗うつ薬(0.36, 1.00),抗認知症薬(0.67, 1.00),喘息治療薬(0.67, 0.98),アレルギー治療薬(0.57, 0.99),抗血栓薬(0.88, 0.98),副腎皮質ホルモン製剤(0.80, 0.99),甲状腺疾患治療薬(1.00, 1.00),解熱・鎮痛・抗炎症薬(0.75, 0.96)であった。

    結論 薬剤の種類により感度,特異度が異なっていた。とくに感度が8割を超える薬剤(降圧薬,脂質異常症用薬,糖尿病用薬,抗リウマチ薬,骨粗鬆症・骨代謝改善薬,抗血栓薬,副腎皮質ホルモン製剤,甲状腺疾患治療薬)では,高齢者においても自己申告による服薬情報の収集は有用であることが示唆された。

  • Yang Myung SI, Kazuya TAIRA
    原稿種別: Original Article
    論文ID: 24-002
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/06/13
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    Objectives Well-being serves as a crucial indicator of national governance and societal advancement. Consequently, the Better Life Index (BLI) developed by the Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD) has emerged as a pivotal multidimensional measure of well-being, surpassing traditional indicators such as Gross Domestic Product (GDP). However, current well-being indicators predominantly focus on national measurements and do not effectively evaluate well-being in smaller regions such as states or prefectures. This study aimed to calculate a Regional Well-Being Index (RWI) tailored to localized areas in Japan.

    Methods Japanese official statistics, publicly available as open data, were analyzed, focusing on 11 domains similar to those in the BLI: “Income,” “Jobs,” “Housing,” “Health,” “Work-Life Balance,” “Education,” “Community,” “Civic Engagement,” “Environment,” “Safety,” and “Life Satisfaction.” The RWI scores were calculated for each prefecture in 2010, 2013, 2016, and 2019 using standard normalization techniques. To represent the overall well-being of each prefecture in each year, scores were aggregated across all domains; this aggregate is referred to as the Integrated RWI. The reliability and validity of RWI were assessed by examining time-series changes and Pearson’s correlation coefficients.

    Results Median Integrated RWI scores for Japanese prefectures remained relatively stable across the study period, with slight variations observed: median = 0.67 (Interquartile range [IQR]: −2.48–2.71) in 2010, median = 0.00 (IQR: −2.85–2.76) in 2013, median = 0.13 (IQR: −3.05–2.49) in 2016, and median = 0.19 (IQR: −2.75–3.06) in 2019. Geographical analysis showed lower scores in regions such as Western Kyushu and Shikoku, and higher scores in Chubu and Eastern Kinki. The RWI and the BLI demonstrated construct validity, with Pearson’s correlation coefficients ranging from 0.58 to 0.99 across various domains.

    Conclusion The RWI, based on the OECD’s BLI, proved to be a reliable and valid tool for assessing comprehensive well-being at the regional level in Japan. It offers foundational data for identifying challenges to regional well-being and shaping targeted policies, thereby contributing to evidence-based policymaking. Moreover, this methodology has potential applicability in evaluating comprehensive well-being beyond GDP at the regional level in other countries using official statistics.

  • 清野 諭, 野藤 悠, 植田 拓也, 根本 裕太, 倉岡 正高, 髙橋 淳太, 森 裕樹, 秦 俊貴, 北村 明彦, 小林 江里香, 村山 ...
    論文ID: 23-093
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/30
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 2019年の厚生労働省取りまとめでは,一般介護予防事業等をPDCAサイクルに沿って推進することの重要性が指摘されている。しかし,現状ではその具体的な推進方策や標準化された評価フレームワーク(FW)は明示されていない。本研究では,自治体担当者が,通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って推進・評価するためのFWを提案する。

    方法 令和2年度老人健康増進等事業研究班が先行研究等をナラティブ・レビューし,FWの構築に活用可能な評価モデル・指標を抽出した。作成されたFW案を研究班の検討委員会で協議・修正するという手順を4回繰り返した。完成したFWを用いて東京都内50自治体の通いの場の取組状況を得点化し,これと各自治体の通いの場の数(高齢者人口千人当たり)との関係について地域相関分析を行った。

    結果 以下6つの局面から本FWを構成した。①「理解」:介護予防・フレイル予防の要点や通いの場の必要性について理解する局面,②「調査・計画」:地域アセスメントによって通いの場の現状と地域の強み・課題を明らかにし,課題解決に向けた計画を立案する局面,③「体制・連携」:課題解決に必要となる行政内外の組織と連携し,体制を構築する局面,④「実施」:課題解決に必要な取組を実施する局面,⑤「評価」:取組による直接の成果と効果を確認する局面,⑥「調整・改善」:評価結果をもとに計画や体制,内容,目標を再検討する局面。各局面の評価項目として,10のコア項目とそれに付随する小項目を設定し,本FWの通称を「ACT-RECIPE(アクトレシピ)」とした。都内50自治体のACT-RECIPE得点率中央値は,「理解」75%,「調査・計画」61%,「体制・連携」69%,「実施」64%,「評価」31%,「調整・改善」56%であり,平均得点率は57%であった。ACT-RECIPE平均得点率と高齢者人口千人当たりの通いの場の数との間には有意な正の相関関係(rs=0.43:P=0.002)があった。

    結論 通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って推進・評価するFW:ACT-RECIPEを作成した。都内自治体では“P”“D”“A”に相当する「理解」~「実施」,「調整・改善」に比べて,“C”に相当する「評価」が十分ではない実態が明らかとなった。本FWの活用によって,PDCAサイクルに沿った通いの場の取組や評価がより一層進むことを期待する。

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