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兒﨑 友美
原稿種別: 原著
論文ID: 24-014
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2025/02/04
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早期公開
目的 認知症初期集中支援チーム(以下,支援チーム)による支援効果や課題など,支援チームを対象にした研究は多数見られるが,支援チームの活用者である地域包括支援センター(以下,包括センター)を対象にした研究は見られない。そこで,包括センターを対象に運営者と活用者の双方向から,支援チームの活用実態や活用課題を検証し,支援チームの活用促進に向けた検討を行う。
方法 全国の包括センター5,625か所から等間隔抽出法で抽出した2,000か所に質問紙郵送調査を実施した。調査期間は2022年11~12月である。調査内容は,基本属性(設置機関,支援チーム併設の有無)と支援チーム活用件数および活用実人数,支援チーム活用課題である。分析は,支援チームを併設する包括センター(以下,併設センター)を運営者,併設しない包括センター(以下,単独センター)を活用者とし,支援チームの併設有無別に分け行った。基本属性や支援チーム活用件数,活用実人数は単純集計を行った。活用課題の自由記述はテキストマイニングを用いた。
結果 773票(回収率38.8%)を回収し,有効回答数は754票(37.7%)であった。内訳は「単独センター」が441件(58.5%),「併設センター」が313件(41.5%)であった。支援チーム活用割合は,「単独センター」が79.4%,「併設センター」が86.6%であった。2021年度の支援チーム活用実人数は,併設有無にかかわらず「1~5人」が最も多かった。
支援チームの課題として,単独センターでは,支援対象者要件や活用ルールの【活用の仕組み】,チーム医のかかわりやチーム員の専門性の【支援機能】,協働支援関係や事業の周知の【活用体制】が挙がった。併設センターからは,支援対象者要件や運営ルールの【運営の仕組み】,チーム医のかかわりや医療との連携の【支援機能】,チーム員の役割認識や人材不足の【運営体制】が挙がった。
結論 包括センターの多くは,支援チームを頻繁に活用してはいない現状にあることが示唆された。支援チームの活用促進を図るには,第一に,支援チームの仕組みであるルールの簡素化や支援対象者要件の緩和など運営・活用者双方の立場で仕組みを見直すこと。第二に,認知症支援体制について運用者である市町村を中心に,認知症支援者全員で定期・継続的に協議することが必要である。
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下田和 美怜, 岡本 玲子, 宮本 圭子, 小出 恵子, 蔭山 正子
原稿種別: 原著
論文ID: 24-054
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2025/02/04
ジャーナル
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目的 保健師には,健康課題の改善・解決のため,エビデンスに基づき保健事業を導入(事業実装)する力量が求められている。本研究の目的は保健師の事業実装力に関連する要因をキャリアレベル群別に明らかにすることである。
方法 都道府県・保健所設置市の保健師を対象に自記式質問紙調査を行った。対象を保健師としての経験年数や役職の有無に基づき,保健師経験5年以下:新任期群,6年以上役職なし:役職無群,6年以上役職あり:役職有群の,キャリアレベル3群に分けた。従属変数を保健事業実装点検シート(以下,IDAS)得点,独立変数を新規事業化経験・学習経験・横展開の経験・保健師のコンピテンシー尺度得点として単回帰分析を行い,その後単回帰分析において有意であった変数を独立変数として重回帰分析(ステップワイズ法)を行った。コンピテンシー測定尺度は専門性発展力(PDS),省察的実践力(RPS),研究成果活用力(RUC)を用いた。
結果 配布数966のうち有効回答数は702,有効回答率は72.7%であり,キャリアレベル群別の人数と全体に占める割合は,新任期群が87人(12.4%),役職無群が192人(27.4%),役職有群が423人(60.3%)であった。IDAS得点の平均点は全体が115.7点,新任期群107.6点,役職無群111.3点,役職有群119.6点と,役職有群が最も高かった。重回帰分析の結果,新任期群のIDAS得点に〈RPS得点〉(β=0.450),〈PDS得点〉(β=0.336),〈横展開の重要性認識〉(β=0.233)が,役職無群のIDAS得点に〈RUC得点〉(β=0.305),〈横展開の現状実施認識〉(β=0.237)が,役職有群のIDAS得点に〈RUC得点〉(β=0.225),〈PDS得点〉(β=0.219),〈RPS得点〉(β=0.206)が,関連していた。
結論 保健師の事業実装力向上には,新任期群では,リフレクションの実施,専門的知識・技術の向上,事業実装の重要性の理解の向上が,役職無群では,最新の研究の知見等の情報収集・吟味・活用が,役職有群では,保健師経験を経て培われた能力の継続的な向上が,それぞれ重要であることが示唆された。この結果に基づき,キャリアレベル別の特徴に応じた事業実装研修の実施,および実践や自己の活動を省察し習得度を点検する機会の設置が必要であると考えられる。
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山田 卓也, 杉本 九実, 西沢 蓉子, 石川 ひろの, 福田 吉治
原稿種別: 原著
論文ID: 24-070
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2025/02/04
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目的 健康無関心層に対するアプローチの必要性が重要となっている。先行研究において,健康への関心の程度を評価する「健康関心度尺度」が開発されている。この尺度は,健康への意識,健康への意欲,健康への価値観の3つのサブスケールより構成される。本研究は,12項目からなる健康関心度尺度の汎用性を高めるため,その短縮版の作成を行った。
方法 800人を対象としたウェブ調査のデータを用いて,12項目の健康関心度尺度の質問項目の因子分析の結果より,各サブスケールから因子負荷量が大きい順に2項目ずつ選択し6項目版の尺度と,健康への価値観のサブスケールに属する2項目を除く4項目版の尺度を作成した。作成した短縮版の信頼性と,12項目版との相関や,ヘルスリテラシー(CCHL尺度)や生活習慣(食事,運動,飲酒,喫煙)との相関を比較することで妥当性を確認した。
結果 Cronbach’s αは6項目版0.72,4項目版0.80であった。12項目版と6項目版および4項目版の相関係数は0.94と0.88であった。ヘルスリテラシーとは12項目版:0.28,6項目版:0.27,4項目版:0.22であった。4つの生活習慣との相関係数も3つの尺度で同程度であった。
結論 12項目と同程度の信頼性と妥当性を持つ6項目版と4項目版の尺度を作成することができた。健康関心度を測定する場合,3つのサブスケールを含む6項目版が望ましいが,利便性の観点から健康への価値観を除く4項目版を使用することも可能である。
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谷掛 千里, 鈴木 仁一, 杉井 たつ子, 橘 とも子, 橋本 佳美, 児玉 知子
原稿種別: 特別報告
論文ID: 24-091
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2025/02/04
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目的 COVID-19流行下の障がい児者,難病患者の障がい特性に応じた支援の難しさや重要性を考慮し,障がい児者,難病患者への支援活動や課題に関して行ったモニタリング活動を報告する。
方法 COVID-19流行下,2019年から2022年にかけて「障がい」と「難病」をキーワードに,情報収集を行い,課題抽出を行った。情報収集資料は,①日本公衆衛生学会,地方公衆衛生学会の総会抄録,雑誌(2019~21年),②海外学術雑誌,③新聞{全国紙(朝日新聞・読売新聞・毎日新聞・産経新聞),2021.1.1~2021.12.31(1年間)},雑誌,ホームページなどのメディア情報,④法律,通知,研究費などの行政情報,⑤患者団体の情報とした。日本公衆衛生学会へいくつかの提言を行った。
活動内容 2020年現在,障がい施設では感染対策の専門家から助言を受ける体制がない。COVID-19流行下,障がい者はCOVID-19に関する情報を得にくいなど障がい特性に起因する困難を抱えていた。障がい児は通所施設の閉鎖によりストレスを感じている。働き方の変化を考慮して,さらにWeb調査が必要である。2021年には自治体に対し,障がい特性に応じた障がい者への情報提供や感染症対応マニュアル作成が義務付けられ,学会などの支援が期待された。2022年は,自治体が主体となって医療・保健・福祉の連携が求められている。COVID-19含めた感染対策マニュアル作成含めて地域間格差をなくすためにも学会の支援が望まれた。
結論 COVID-19流行時に障がい者施設等福祉制度の支援に様々な専門家から助言を得られたことは,活動当初の目標を達成できたと考える。今後も各専門家が健康と福祉に取り残されている人がいないかという視点で活動をすることを期待したい。
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Soichiro SAEKI
原稿種別: Letter
論文ID: 24-111
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2025/02/04
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羽入田 彩花, 佐々木 渓円, 上原 里程
原稿種別: 資料
論文ID: 24-042
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/01/24
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目的 我が国において,出産後1年以内の産婦に対して様々なケアが実施されている。本研究では,日本国内で実施された産後のケアに関して,体系的な文献レビューを行い,産婦の抑うつや不安を軽減する支援方法とその効果を明らかにすることを目的とした。
方法 PubMed,医学中央雑誌,CiNii Research,Cochrane Libraryを用いて,2023年8月までに日本語または英語で出版された文献を検索した。日本国内の分娩施設退所後から出産後1年以内の産婦を対象として,支援を実施し,抑うつや不安の変化を評価した原著論文を採用した。採用した文献は,研究デザイン,対象人数,介入時期,支援方法,評価時期,主な結果の項目で整理し,支援方法と抑うつや不安に対する効果を検討した。
結果 PubMed,医学中央雑誌,CiNii Research,Cochrane Libraryから合計22件を採用した。産後から開始した支援では,出産病院による支援,産後ケア事業,運動支援,母子のスキンシップによる支援が,産婦の抑うつや不安を軽減していた。また,妊娠期からの継続的な支援では,特定の助産師による継続支援,産婦の健康状態やニーズの評価に基づいた包括的な支援が,産婦の抑うつや不安を軽減していた。その他に,産後2週間健康診査,育児生活の現状評価に基づくコーチング,アプリで医師や助産師に相談できるサービス,子育て教室,在日中国人を対象とした日本との文化の差異に着目した支援,ソーシャルサポートが,産婦の抑うつや不安を軽減していた。これらの支援のうち8件は,医師や看護職等の多職種で提供されていた。
結論 支援方法によっては,産婦の抑うつや不安を軽減したとする報告が散見された。支援体制として,産婦の健康状態やニーズの評価に基づいた包括的な支援計画を作成すること,産後ケアを医師や看護職等の多職種が連携して提供することは,産婦の抑うつや不安を軽減する可能性が考えられる。
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戸村 友美, 平野 美千代
原稿種別: 資料
論文ID: 24-062
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/01/24
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目的 若年性認知症者の家族介護者は介護負担が大きいが,周囲に助けを求めることが難しい現状がある。本研究は若年性認知症者の家族介護者が,診断後初期に支えを求める際の心情を明らかにすることを目的とする。
方法 本研究は,質的記述的研究デザインを用いた。研究参加者は,若年性認知症者の在宅介護経験がある家族介護者8人とし,各研究参加者に対して半構造化面接を実施した。分析は,データの文脈に沿い,診断後初期に支えを求めた状況における心情に関する文章を取り出しコードとした。コードの意味内容を比較検討し,同様の意味を表していると判断したものをまとめ抽象度をあげ最終コードとし,類似する最終コードをまとめて抽象度を上げ,サブカテゴリを生成し,同様の手順でカテゴリを生成した。
結果 若年性認知症者の家族介護者が診断後初期に支えを求めた状況における心情について,18サブカテゴリ,6カテゴリを生成した。若年性認知症者の家族介護者は,診断後初期に【若年で認知症を発症することへの恐れや不安】,【若年性認知症に関する如何なる情報でも知りたい】,【将来のために可能な限り『今』を継続したい】,【本人の社会の一員としての尊厳を守りたい】,【若年で認知症になったことを伝えることへの迷い】,【まだ人生半ばの自分の生活や心身を守りたい】と思い,周囲に支えを求めていた。
結論 若年性認知症者の家族介護者は診断後初期に認知症者本人や介護者自身に対する切実な願いを抱き,偏見や周囲への影響など若年性認知症で生じる特有の迷いの中で葛藤し,診断の過程で抱く負の感情を緩和したいと思い,支援を求めていた。若年性認知症者の家族支援では,本人に関することには主体的に支援を求める家族介護者の特徴を活かし,本人に対する支援をきっかけに家族介護者への支援も提供できると考えられる。また,診断時を含め早期に支援者から日常生活での困難を予測して声をかける姿勢が,支援の求めやすさに重要だと示唆された。
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筒井 杏奈, 村上 義孝, 藤牧 貴子, 遠藤 誠之, 大野 ゆう子
原稿種別: 原著
論文ID: 24-086
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/01/24
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目的 近年,世界的に治療の集約化が進む小児がんについて,地方居住者や,受療のため遠距離を移動する患者において死亡率が高いのかは一貫した研究結果は得られていない。本研究は,患者受療動態と死亡率の観点から,本邦における小児がん治療の地域間格差の有無を検討した。
方法 2016年から2019年までにがんと診断されて全国がん登録データに登録された18歳以下の患者10,713人を研究対象とした。都道府県庁所在地あるいは平成27年国勢調査に基づく大都市圏・都市圏を都市部,それ以外を地方部と定義し,診断時の居住地情報より患者を2区分した。また町字レベルの所在地情報から自宅から治療病院までの片道移動時間について経路探索Webサービスより推定した後に,1時間を基準に患者を2区分した。居住地域で治療を受けた人の割合である完結割合を都市・地方の別および治療の種類別に求めた。次に国際小児がん分類第3版に基づき,白血病(Ⅰ)を除く各診断群および全体を対象に,がんの遠隔転移の診断割合をカイ二乗検定で比較した。最後にCox比例ハザードモデルを用いて都市部に対する地方部ならびに移動時間1時間以下群に対する1時間超群の調整死亡ハザード比を求めた。
結果 がん患者全体の77%は都市部居住者に区分された。居住地域の範囲を二次医療圏としたときの完結割合は22%から46%,これを都道府県レベルに拡大すると80%から87%,地域ブロックでは95%から99%と上昇した。遠隔転移の診断割合は脳腫瘍(Ⅲ)のみ有意差が見られ,診断割合は都市部の方が高かった(6%対3%)。調整死亡ハザード比は,都市部対地方部では全がんならびに各診断群で有意差は見られなかった。移動負担別の比較では全がん1.17,リンパ腫(Ⅱ)2.57と有意に高かった。
結論 完結割合は都道府県レベルでみると都市部・地方部ともに80%程度であり,多くの人は居住地内で受療し,地域ブロックをまたぐ長距離移動者は少ないことが示唆された。全体として死亡率に都市部と地方部の間で違いは見られなかったが,移動負担で比較すると全がんや一部の診断群で差が見られた。小児がんや治療の集約化が進む本邦においては,患者の移動負担に注目して生存率への影響を継続的に評価する必要性が示唆された。
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三好 しのぶ, 越智 真奈美, 新村 美知, 矢竹 暖子, 竹原 健二, 加藤 承彦
原稿種別: 資料
論文ID: 24-088
発行日: 2025年
[早期公開] 公開日: 2025/01/24
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目的 本研究の目的は,日本における0歳の多胎児を養育する父親の心身の健康状態と生活実態について,単胎児を養育する父親と比較し,健康課題と支援の必要性に関する示唆を得ることである。
方法 国民生活基礎調査の世帯票と健康票のデータ(2016, 19, 22年)を用いた。単年では多胎児の父親のサンプル数が少ないため,大規模調査3回分のデータを結合し,健康状態と生活状況,相談状況に関して,多胎児と単胎児の父親のクロス集計を行った。分析にはt検定とフィッシャーの正確確率検定を用いた。
結果 多胎児の父親は,単胎児の父親と比較して睡眠時間5時間未満の割合が有意に高かった。また,悩みやストレスの原因で「育児」が有意に高かった。メンタルヘルスを評価する尺度であるK6の得点が10点以上の割合に有意差は認めなかったが,多胎児の父親では健康日本21(第三次)の目標値よりも高い割合だった。悩みやストレスの相談状況に多胎児と単胎児に差はなかったが,どちらも公的機関を利用している割合は極めて低かった。
結論 日本における代表性のあるデータを用いて0歳の多胎児の父親の健康状態と生活状況について記述し,多胎児の父親の健康課題と支援の必要性が示唆された。多胎児の父親は,睡眠時間が短い割合と「育児」に悩みやストレスがある割合が高く,K6得点が政府目標よりも高い割合であったことから,メンタルヘルスに気を配る必要があること,多胎児の父親支援のための知見の蓄積が必要であること,父親の育児支援の受け皿を整備する必要性が示唆された。
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川畑 輝子, 宇田 英典, 中村 正和, 山田 隆司, 佐々木 典子, 今中 雄一
原稿種別: 資料
論文ID: 24-074
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/26
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目的 地域包括ケアシステムの推進に向け,(公社)地域医療振興協会が運営する医療・介護施設のヘルスプロモーション活動(以下,活動)の実態と施設の種類による活動内容,促進・阻害要因の違いを把握し,今後の活動推進方策を検討することを目的とした。
方法 2022年4月~2023年9月に,Web調査および電話・メールによるヒアリング調査を実施した。調査内容は,1.患者・利用者,地域住民,職員を対象に行っている健康づくり等の活動内容(選択肢),2.組織的に活動を拡充する意欲(10段階スケール),3.促進・阻害要因(自由記載)とした。結果は施設の種類別に分析し,活動内容を2020年版HPH(Health Promoting Hospitals and Health Services)基準と照らして整理した。
結果 回答率は100%であり,全施設活動を実施していた。病院,診療所,介護老人保健施設(以下,老健)の順に実施施設割合(%)と施設の種類間差をみると,患者・利用者(96.0,84.5,94.4,P=0.01),地域(96.0,83.3,100.0,P<0.001),職員(100.0,72.9,94.4,P<0.001)と,診療所が病院・老健と比して有意に低かった.診療所の活動数を職員数別に見た結果,50人未満(S)は,50人以上(L)と比べて,活動数の平均(S,L)が,患者・利用者(4.1,6.2,P=0.03),地域(4.9,9.2,P<0.001),職員(1.6,3.8,P<0.001)と,いずれも有意に少なかった。拡充の意欲は全体として中央値7.0で施設の種類間に差は無く,その規定要素としての重要性は,病院=7.0,診療所=8.0,老健=8.0と,診療所と老健が病院よりやや高かった。促進要因は,病院では推進委員会設置等の「内部の体制づくり」が,診療所と老健では「教材,マニュアル,ノウハウ等の提供」が最多だった。阻害要因の1位は,施設の種類に関わらず「業務負担」だった。活動は2020年版HPH基準をほぼ満たしていたが,評価体制に改善の余地が見られた。
結論 全施設,すでにWHOのHPH基準に沿った活動を実施し,拡充にも意欲的だった。活動の推進には,組織の体制整備,活動に収益性があること,評価指標の開発と成果の測定,評価体制の構築が不可欠であると示された。
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成瀬 華子, 桑原 和代, 平田 あや, 今井 由希子, 杉山 大典, 舟本 美果, 岡村 智教
原稿種別: 原著
論文ID: 24-017
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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目的 「過去からの体重増加と肥満の有無の組み合わせ」と,糖尿病との関連について検討した報告は少ない。そこで,「20歳からの体重増加10 kg以上」の有無と肥満の有無の組み合わせが糖尿病の新規発症に与える影響を縦断的に検証した。
方法 大阪府羽曳野市の国民健康保険加入者で2013年度の特定健診受診者8,704人をベースラインとして設定し,当初から糖尿病であった者,追跡不能,その他欠損値がある者を除外した5,708人を解析対象とした。厚生労働省の標準的な質問票による20歳からの体重10 kg以上の増加の有無と,BMI 25 kg/m2以上か未満かを用いて,「体重増加無し・非肥満」群,「体重増加無し・肥満」群,「体重増加有り・非肥満」群,「体重増加有り・肥満」群の4群に分類し,糖尿病の新規発症リスクをCoxの比例ハザードモデルを用いて検討した。
結果 平均年齢は64.3±7.9歳,平均追跡年数3.14±1.13年間の糖尿病の新規発症は男性126人(6.0%),女性は133人(3.7%)であった。「体重増加無し・非肥満」群を参照群とした糖尿病新規発症ハザード比(95%信頼区間[CI])は,着目群「体重増加有り・非肥満」群:1.77(95% CI:1.26–2.49)と「体重増加有り・肥満」群:2.76(95% CI:2.05–3.72)が有意に高かった。男女別では,男性は「体重増加有り・肥満」群:2.06(95% CI:1.34–3.18)であった。一方,女性では「体重増加有り・肥満」群:3.68(95% CI:2.44–5.53)に加えて,「体重増加有り・非肥満」群:2.19(95% CI:1.35–3.55)でもハザード比が高かった。
結論 非肥満者にとって体重増加は糖尿病発症のリスクであることが示された。さらに女性でその傾向が強く見られ,BMI 25 kg/m2未満でも,20歳から10 kg以上の体重増加がある場合は,糖尿病の新規発症のリスクが高かった。これに該当する者は,特定保健指導の対象外であっても,生活習慣改善指導などの対応が必要であることが示唆された。
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Yoko ISHII, Sanae TOMITA, Sachiko IKEDA, Akane YAMAMOTO
原稿種別: Information
論文ID: 24-032
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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Objective This study aimed to elucidate foster parent support afforded by and the related needs of public health nurses, pediatric nurses, and childcare workers in Japan.
Methods We conducted a quantitative study involving 95 public health nurses, 450 pediatric nurses, and 360 childcare workers in three municipalities with foster parent placement rates higher than the national average in Japan. The participants were questioned regarding their experiences in supporting foster parents at work; participation in foster parent support training; awareness and perceptions of foster parents; knowledge about foster parents, foster children, and the foster care system; and confidence in supporting foster parents. Descriptive statistics were used to analyze quantitative data. Fisher’s exact test was used for statistical analysis.
Results Questionnaires were collected from 179 participants (recovery rate: 19.8%). The breakdown of respondents was as follows: 19 public health nurses (10.6%), 77 pediatric nurses (43.0%), and 83 childcare workers (46.4%). Twenty-four participants (13.4%) replied that they had participated in foster parent support training, and 46 (25.7%) replied that they had experience supporting foster parents at work. Only 20.8% of the respondents answered that they were confident in supporting foster parents. There were differences in the experience of supporting foster parents at work and participation in foster parent support training depending on the participants’ job type. The proportion of public health nurses was high in both categories. Experience supporting foster parents at work and participation in foster parent support training were significantly related to confidence.
Conclusion We found that the limited opportunities for public health nurses, pediatric nurses, and childcare workers to engage in supporting foster parents and participate in foster parent support training contribute to their low confidence levels in these areas. Our findings underscore the necessity of disseminating knowledge about foster care systems and fostering an understanding of foster families among pediatric nurses and childcare workers. Integrating training related to social care and foster care systems into basic nursing education is necessary. Moreover, actively listening to the perspectives and experiences of foster parents can provide valuable insights for professionals in these fields.
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白片 匠, 田渕 紗也香, 伊藤 美樹子, 三浦 克之, 祖父江 友孝
原稿種別: 資料
論文ID: 24-038
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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目的 日本では医療・介護サービスの需要増加に対応するため,高齢者施設での看取りが推進されている。2006年には介護保険による終末期ケアとして看取り介護加算が創設され,充実が図られてきた。他方,終末期高齢者にとって居所の移動(以下,リロケーション)は負担が大きいことが明らかになっている。そこで本研究では,回復の見込みがないと判断され,かつ施設での看取り希望者に適用される看取り介護加算等の利用を介護レセプトから実態を明らかにした。
方法 2018年4月から2021年3月末の間に看取り介護加算かターミナルケア加算(以下,終末期ケア)を利用した65歳以上の要介護者を対象とし,厚生労働省より提供された「匿名要介護認定情報等」の特別抽出情報を分析した。観察施設は,看取り介護加算等が適用できる介護老人福祉施設,介護老人保健施設等の6施設である。本研究ではサービス利用終了月に終末期ケアの利用実績のあった233,735人を分析対象とし,施設別・個人要因別・都道府県別に集計した。なお終末期ケアの介護報酬上の3区分(死亡日,死亡前日および前々日,死亡前4~30日)の利用が死亡日まで連続していない場合を,リロケーションありと定義した。
結果 対象者の基本属性は85歳以上が83.35%,男性25.29%,要介護3以上は93.53%だった。終末期ケア利用者数は介護老人福祉施設(114,356人)が最も多かった。介護老人福祉施設と地域密着型介護老人福祉施設,認知症グループホームは,認知症が中・重度(Ⅲa以上)が約8割であった。またリロケーションありは,介護老人福祉施設(加算Ⅱ)が0.22%と最も少なく,地域密着型特定施設が2.02%と最も多かった。施設別では看護職員や医師の配置基準がより手厚い施設で発生が少なかった。個人要因では,リロケーションの発生の多さは,要介護高齢者が男性であることや,年齢の若さ,要介護度の低さ,意思決定や意思の伝達能力の高さと関連していた。
結論 介護保険による終末期ケアは介護度が重度で高年齢者に普及していた。死亡前30日の間のリロケーションは施設別に0.2~2%程度で発生し,他方,リロケーションの発生には個人要因が,抑制には医療職の手厚い配置が関連していた。
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野中 久美子, 村山 幸子, 杉浦 圭子, 村山 洋史
原稿種別: 原著
論文ID: 24-059
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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目的 本研究の目的は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19;以下,コロナ)拡大に伴う1回目の緊急事態宣言(以下,宣言)発令期間中および宣言解除後での高齢者の健康維持や交流を目的とした自主グループ活動(以下,グループ活動)の活動実態とその関連要因を検討することである。それにより,自治体や地域包括支援センター等の専門職がコロナ禍など非常時にグループ活動の再開や継続を支援する際に活用できる知見を提示する。
方法 2020年11月に,東京都A区内の町会・自治会とシニアクラブの会長372人を対象に質問紙調査を実施した。町会・自治会とシニアクラブが主体で開催する高齢者のグループ活動について,2020年4~10月での各月の活動形態を「活動を自粛・休止」,「工夫して活動を実施」,「通常通り活動を実施」から選択するように求め,潜在クラス分析により活動パターンを類型化した。活動パターンを従属変数とした多項ロジスティック回帰分析により,宣言発令期間中および解除後での活動パターンの関連要因を検討した。説明変数として,感染拡大前での開催内容の多様さ,開催頻度,参加者の平均人数,ボランティア・世話役(以下,世話役)の平均人数,80歳以上高齢者の有無,グループ内ソーシャルキャピタル,感染拡大前および宣言発令期間中の世話役と参加者との連絡頻度を投入した。欠損値は多重代入法により補完した。
結果 分析対象は206グループであった。潜在クラス分析により4活動パターンに分かれた:「自粛・休止群」,「工夫して再開群」,「工夫して継続群」,「通常通りで継続・再開群」。「自粛・休止群」を基準カテゴリーとした多項ロジスティック回帰分析の結果,宣言発令期間中に参加者と週1回以上連絡を取っていたことが「工夫して継続群」(オッズ比=5.25,95%信頼区間=1.19–23.21)と「通常通りで継続・再開群」(オッズ比=4.37,95%信頼区間=1.07–17.82)に関連していた。また「工夫して再開群」では,開催頻度が月2回以上(オッズ比=3.12,95%信頼区間=1.10–8.87),世話役数が6~10人(オッズ比=0.32,95%信頼区間=0.11–0.89)も関連していた。
結論 コロナ禍など非常時にグループが活動を再開・継続するためには,自治体・専門職は,宣言発令期間中だけでなく平常時からグループ内のコミュニケーションが円滑になるようにグループ活動を支援する,世話役数が多いグループを積極的に支援していく必要性が示唆された。
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濱田 唯, 蔭山 正子, 横山 惠子
原稿種別: 原著
論文ID: 24-063
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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早期公開
目的 2020年の患者調査によると精神障害者数は600万人以上の人が精神科医療を受けている。非自発的入院が存在する精神医療患者への権利擁護を行う者(アドボケイト)の重要性が指摘されている。本研究は,Brashersらが患者のセルフアドボカシーの程度を測るために開発したPatient Self-Advocacy Scaleの日本語版(以下,日本語版PSAS)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。
方法 まず原版を研究者5人で日本語に訳し,精神医療利用者5人に予備調査を実施し,質問文を修正した。次に修正した内容を翻訳家が逆翻訳を行い,逆翻訳を原版作成者が確認した。その後,完成した日本語版PSASの妥当性と信頼性を検証するためにオンラインアンケート調査を実施した。アンケートは精神医療利用者の当事者団体に調査協力を依頼し,メーリングリストで周知を行った。再検査法による信頼性の検討のため,一部の回答者には再調査を依頼した。信頼性の検討は尺度全体および下位尺度のCronbach α係数を算出し,再検査との相関係数の結果で評価した。妥当性の検討は,探索的因子分析と確認的因子分析を実施し,さらに各関連尺度(日本語版コントロール欲求尺度,医療に対する自律性に関する尺度,ヘルスローカスオブコントロール尺度)との相関係数の算出を行った。
結果 本調査は214人,再調査48人から有効回答を得た。回答者の診断名は気分障害(48.1%)と統合失調症(40.7%)が大部分を占め,通院期間は46.8%が10年以上だった。尺度全体および下位尺度分析のCronbachα係数は0.66~0.83,再検査の相関係数は0.69~0.84だった。妥当性については,探索的因子分析では原版同様の項目で3因子にわかれ,確認的因子分析ではある程度の適合度を示した(CMIN/DF=2.834,GFI=0.896,AGFI=0.841,RMSEA=0.093,AIC=198.542,CFI=0.888)。関連尺度との相関関係は,大部分の下位尺度との間に有意な相関があった。
結論 日本語版PSASは,一定の信頼性と妥当性が確認された。今後は精神医療利用者のセルフアドボカシーの評価尺度として,権利擁護に関する意識調査の一助になると考えられる。
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渡邉 英之, 松永 眞章, He Yupeng, 太田 充彦, 李 媛英, 桑木 光太郎, 谷原 真一
原稿種別: 原著
論文ID: 24-068
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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目的 生活保護受給者における入院受療状況と日本全体の入院受療状況を性別に年齢調整を行った上で傷病大分類別に比較をすることで,生活保護受給者における入院医療の疾病構造の特徴を明らかにする。
方法 観察対象集団を生活保護受給者,基準集団を日本全体とした間接法による年齢調整を性別に行い,傷病分類(ICD-10(2013年版)による大分類)別に標準化入院者数比を算出した。算出には公開されている政府統計のみを用いた。具体的には,厚生労働省による令和2年患者調査による性別・年齢階級別・傷病分類別の入院受療率,令和2年度被保護者調査による性別・年齢階級別被保護実人員,令和2年医療扶助実態調査による傷病分類別の入院件数を用いた。
結果 年齢調整(間接法)後の男女合わせた全傷病における標準化入院者数比は1.49であった。標準化入院者数比が高い傷病分類は,男女とも「Ⅴ.精神及び行動の障害」(標準化入院者数比,以下同じ),(男:4.06,女:3.45),「Ⅳ.内分泌,栄養及び代謝疾患」(男:2.40,女:1.47)の順であった。一方,標準化入院者数比が低い傷病分類については,男性では「ⅩⅥ.周産期に発生した病態」(0.43),「Ⅶ.眼及び付属器の疾患」(0.44),の順であり,女性では「ⅩⅤ.妊娠,分娩及び産じょく」(0.17),「Ⅶ.眼及び付属器の疾患」(0.27)の順であった。
結論 年齢調整を行った生活保護受給者の入院受療状況を検討した結果,傷病全体においては生活保護受給者の方が日本全体より高くなっていた。しかし,傷病分類別の検討では日本全体より高いものと低いものの両方が存在していた。生活保護受給者の医療扶助の状況を評価する上では,生活保護受給者数の年齢構成が日本全体とは大きく異なることを考慮した上で,疾患別の検討を行うことが望ましい。
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田中 宏和, 片野田 耕太, 小林 廉毅
原稿種別: 原著
論文ID: 24-075
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/23
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目的 健康格差の包括的なモニタリング方法を検討するため,アウトカム指標として国際的に広く用いられている教育歴(学歴)と死亡率の関連を定量化し,その地域差を探索することを目的とした。
方法 国勢調査(2010年)と人口動態統計死亡票(2010–2015年)の匿名化個票データを取得し分析した。「性・生年月・居住市区町村・婚姻状況・配偶者の年齢(既婚のみ)」をリンケージキーとし,これが他の人と重複しない日本人をサンプル人口とした。日本人(30–79歳)7,984,451人(男性3,992,202人,女性3,992,249人:全人口の9.9%)が分析対象となった。確定的リンケージ法で国勢調査個票に死亡情報をリンケージした(5年間の死亡割合;男性:5.6%,女性:2.5%)。全人口とサンプル人口の比から性・年齢・都道府県・教育歴・職業の分布を用いた逆確率の重みを算出し,重み付けした教育歴別年齢調整死亡率,死亡率比とその都道府県比較を分析した。地域については市区町村を都道府県に集約した。教育歴は「中学・高校卒業者」と「大学以上卒業者」の2群を比較した。
結果 全国の男性の年齢調整死亡率(全死因,人口10万人対)は「大学以上卒業者」で1,025(95%信頼区間:1,013–1,037),「中学・高校卒業者」で1,245(95%信頼区間:1,238–1,253)であり,女性で「大学以上卒業者」で496(95%信頼区間:485–508),「中学・高校卒業者」で640(95%信頼区間:636–645)であった。「大学以上卒業者」に比べて「中学・高校卒業者」の死亡率比は男性で1.21(95%信頼区間:1.17–1.26),女性で1.29(95%信頼区間:1.17–1.41)であった。各都道府県において「大学以上卒業者」に比べて「中学・高校卒業者」の死亡率が高い傾向にありとくに男性でこの傾向が顕著であったものの地域差は小さいと示唆された。
結論 わが国において「中学・高校卒業者」は「大学以上卒業者」に比べて全死因死亡率が約1.2–1.3倍高いことが示された。地域ごとにみると男女とも死亡率比のばらつきは小さい可能性が高いが,死因別の考察を含め都道府県レベルの詳細な分析のためにはより精度の高い死亡率データベースの構築が必要である。
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吉田 美由紀, 達川 まどか, 大谷 進介, 藤村 一美
原稿種別: 資料
論文ID: 23-112
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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目的 限界集落の離島に在住する高齢者が,住み慣れた地域で暮らし続けることへの思いを明らかにし,最期まで質の高い生活をし続けることを支援する保健施策についての示唆を得る。
方法 A県の離島であるB島は,周囲を海に囲まれた完全離島で,人口138人,高齢化率48.6%(R2)である。少子高齢化による人口減少が著しいB島に住む65歳以上の高齢者7人に対し,インタビューガイドを用いた半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した。インタビュー内容は,①住み慣れた地域でのこれまでの生活を踏まえた今の自宅での暮らしへの思いや考え,②暮らしを支える介護・医療・予防,生活を支援する社会資源や人的資源に対する思いや考え,③これからもこの島で生活していくことへの思いや考えとした。逐語録を作成し,住み慣れた地域で暮らし続けることへの思いについての内容を対象者の言葉を用いてコード化し,抽象度を上げてサブカテゴリー,カテゴリーを生成した。
結果 対象者の平均年齢は76.9歳,「障害高齢者の日常生活自立度」はJ1~2であった。以下,【】内はカテゴリ名を示す。B島の高齢者は,今の島での暮らしについて,【島での暮らしは気ままで楽しい】が【島民間の強いつながりはしがらみにもなる】と思っていた。そして,島の暮らしを支える社会資源について,【支え合いが島の生活の土台】にあり,日常生活を支援してくれるサービスの利用により【現状の島の生活に不自由はない】と思っていた。一方,海で隔絶された環境において【島外とのつながりが生活の生命線】であると考えていた。これからの島での生活については,【衰退する島の現状になす術がない】,【島の生活資源の希少化で生活そのものの存続が危機】,【将来の島での生活は八方塞がり】と思っており,【島では望む最期を迎えられない覚悟が必要】と考えていた。そして,これからこの島で生活していくためには,【自立した生活を維持するためには自助努力が必須】,【人生の終末に対する自分の意志を持つことが必要】と考えていた。
結論 明らかとなった離島在住高齢者の住み慣れた地域で住み続けることへの思いから,島外とのつながりを維持するための体力づくりへの支援,島の高齢住民が互助力を醸成する機会の創出,ICTを活用した医療体制の強化,最期の迎え方を離れた家族とともに繰り返し話し合うことを推進する必要性について示唆を得た。
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林 慎吾
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 24-008
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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目的 2021年から全国の福祉事務所では被保護者健康管理支援事業が開始された。しかしながら,生活保護受給者を対象とした健康診査(以下,「健診」とする)の受診に関する要因は,ほとんど調べられておらず,福祉事務所における被保護者の健康管理に対する意識や行動傾向の実証分析,その分析結果に基づいた取り組みは多いとは言えないのが現状であった。そこで被保護者の特性に応じた健康管理支援を進めるための基礎資料を得るために,生活保護システム,医療扶助レセプトや社会的孤立に関する聞き取り調査のデータを用いて,被保護者の健診受診およびワクチン接種と社会的孤立の関連を明らかにし支援の在り方を検討することとした。
方法 2022年1月1日時点で,仙台市泉福祉事務所管内の被保護者1,739人を対象とした。基本属性,世帯員数,世帯類型,就労の有無については,生活保護システムから把握した。健診受診の有無,新型コロナワクチン接種(以下,ワクチン接種とする)の有無については,医療扶助レセプトから把握した。社会的孤立については,4項目の質問を作成した。健診受診の有無,ワクチン接種の有無の各変数を目的変数として,健診受診およびワクチン接種と社会的孤立の関係を検討するためにロジスティック回帰分析を行った。
活動内容 回答が得られた444人(回答率25.5%)が分析対象となった。健診受診者44人(9.9%),ワクチン接種者336人(75.7%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,健診受診は,対面接触,非対面接触,情緒的サポート,手段的サポートが有る場合,それぞれ正の関連を認めた。とくに,対面接触有りの被保護者は,オッズ比が3.59(95%信頼区間:1.85–6.94)であった。健診受診同様,ワクチン接種も対面接触,非対面接触,情緒的サポート,手段的サポートが有る場合,それぞれ正の関連を認めた。とくに,手段的サポート有りの被保護者は,オッズ比が1.58(95%信頼区間:1.02–2.54)であった。
結論 社会関係からの孤立は,健診受診・ワクチン接種のいずれの行動にも影響していたが,両者では,求められているサポートが異なることが示唆された。予防的サービスの勧奨には,対象サービスの手続きの性質や煩雑さなどに応じて,「対面接触」と「オンライン」のサポートを上手く組み合わせる支援を検討することとした。
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Mami KIKUCHI, Atsuko IKEDA, Michiyo HIRANO
原稿種別: Original Article
論文ID: 24-010
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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Objective Connectedness is essential for maintaining the physical and mental health of older adults. However, measurements that consider the presence of community-dwelling people and explicitly focus on an individual’s subjective sense of connectedness have not yet been established. This pilot study aimed to develop a draft scale that comprehensively measured older adults’ perceptions of community-based connectedness with people.
Methods The scale development comprised three phases; item review, pre-test, and field verification. Phase 1 (item review) involved creating an item pool and evaluating content validity. Phase 2 (pretest) involved evaluating face validity and conducting item analysis on the preliminary version of the scale. Phase 3 (field verification) involved distributing the preliminary scale to 800 Japanese men and women aged ≥ 65 years residing in Asahikawa, Hokkaido, Japan. Validity was assessed by factorial validity using exploratory factor analysis and concurrent validity using correlation analysis. Reliability was confirmed by Cronbach’s α coefficient using the internal consistency method.
Results The evaluation of content validity in Phase 1 and face validity in Phase 2 yielded 30 items. In phase 3, of the 800 questionnaires that were distributed, 343 were returned, of which 309 included responses to all items and were analyzed. Exploratory factor analysis resulted in a 22-item scale comprising three factors that assessed perceptions of community-based connectedness. The Cronbach’s α for the total scale was 0.967, and the α coefficients for inclusion, reciprocity through provision, and reciprocity through reception were 0.941, 0.915, and 0.928, respectively. The total scale scores were significantly positively correlated with purpose in life (rs = .453, P < .001) and negatively correlated with loneliness (rs = −.307, P < .001).
Conclusion The 22-item draft scale exhibited adequate reliability and validity. Perceptions of connectedness measured by this scale can be used to support public healthcare interventions for community-dwelling older adults.
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清水 鉄也, 阪東 美智子, 麻生 保子, 横山 徹爾
原稿種別: 原著
論文ID: 24-022
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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目的 転倒・転落の外的因子への介入は転倒・転落を減少させることが明らかになっている。一方で,介入の対象となる器物・設備およびその使用方法(以下器物等)と受傷率を網羅的に示した研究はわずかである。本研究では在宅高齢者の転倒・転落に関連した外的因子のうち,住宅内の詳細な器物等を示すこと,器物等の受傷率を受傷者の属性別に示すこと,および受傷程度が重くなる器物等を明らかにすることを目的とした。
方法 2019年中に自宅での転倒・転落により救急搬送された65歳以上の者を対象とした。埼玉県内の消防本部に救急活動記録の提供を依頼し,器物等毎の年齢層(65–74歳,75–84歳,85歳以上に区分)・性別の10万人年あたり受傷率と95%信頼区間,中等症以上の傷者数とその割合を示した。器物等はICD-10を用いて分類した後,使用方法別の細分類を行った。さらに,床を参照とし性,年齢層で調整したロジスティック回帰分析により,中等症以上となるオッズ比が有意に高い器物等を示した。
結果 3つの消防本部から計5,060例のデータ提供を受け,うち4,421例を分析対象とした。器物等はICD-10の20分類からさらに44に細分類できた。中等症以上は2,154例(48.7%)であった。65歳以上の受傷率は床(受傷率450.9,95%CI:434.5–467.9),階段(76.6, 69.9–83.8),ベッド(ベッド上から)(25.5, 21.7–29.8),段差(21.2, 17.7–25.1),トイレ(14.5, 11.6–17.8)の順で高かった。受傷率は器物等の間で異なることがあり,また同じ器物等であっても受傷者の年齢層や性別により異なることがあった。中等症以上となるオッズ比は屋根で高く(オッズ比8.95, 95%CI:1.52–169.40),他に有意差のある器物等はなかった。
結論 在宅高齢者の転倒・転落の受傷率や,受傷率の高い受傷者の属性,中等症以上となるオッズ比は転倒・転落に関連する器物等により異なっており,外的因子の低減策を検討する際にはこれらの特性を考慮する必要がある。
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助友 裕子, 市瀬 雄一, 細川 佳能, 大浦 麻絵, 嶋根 卓也, 杉崎 弘周, 中川 明日香, 東 尚弘
原稿種別: 原著
論文ID: 24-047
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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目的 本研究では,がん対策に寄与するがん教育のアウトカム(以下,がん教育初期アウトカム)を用いて全国調査を行い,どのようながん教育初期アウトカムが,生徒のがんリスク認知と関連しているのかを明らかにすることを目的とした。
方法 2022年9月~12月,高等学校2年生を対象としたオンライン調査を実施した。基本属性2項目(性別,年齢)およびがん教育ロジックモデルに示す初期アウトカム指標33項目(がん予防,がん検診,がん医療,サバイバーシップ,リテラシーなど)について尋ねた。全国から無作為抽出した研究対象校238校のうち,145校(30,208人)の協力が得られた(施設回収率60.9%)。回答の得られた21,692人のうち,20,402人が調査に協力すると回答し,617人を除外した19,785人を解析対象とした(有効回答率65.5%)。各項目の回答割合を算出した後,性差の検討にはχ2検定,がんリスク認知の関連要因の検討には性別を調整変数としたロジスティック回帰分析を用いた。有意水準は0.05とした。
結果 各指標の算出法による回答割合は,がん予防分野7指標は,男子が67.6~88.4%,女子が77.5~93.1%だったのに対し,がん医療分野3指標では,男子が4.3~89.1%,女子が6.6~89.8%であった。女子におけるがんリスク認知群は3,196人(31.9%)で2,814人(28.8%)の男子より高い割合を示した(P<0.001)。また,がん知識に関する項目で女子の方が,スティグマ等に関する項目で男子の方が高い回答割合を示した。さらに,性別を調整変数とした解析では,33項目中25項目がリスク認知関連要因であった。このうち,がん情報が「何を根拠にしているか」判断するのが簡単であるとした者のオッズ比は0.92(95%信頼区間;0.86–0.98)だった。
結論 本研究では,がんリスク認知には性別や多くのがん教育初期アウトカム指標と正の関連があることをみとめた。がんを典型疾患とした保健教育の充実およびそのための社会環境整備が求められる。
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金子 信一
原稿種別: 資料
論文ID: 24-049
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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目的 本研究の目的は,役割ストレッサーが一次的評価を通じて不安や抑うつ,主観的well-being(以下,SWB)に及ぼす影響を検討することであった。
方法 2023年11–12月にウェブ調査を実施した。調査対象者は,20–64歳のフルタイム従業員2,000人(男性1,093人,女性907人,平均年齢43.28(標準偏差(以下,SD)=11.96)歳)であった。調査項目は,属性(性別,年齢,職種,職位)と役割ストレッサー,一次的評価(無関係,肯定,害–喪失,脅威,挑戦),不安,抑うつ,SWBであった。分析は,一次的評価を従属変数,役割ストレッサーおよび属性を独立変数として,段階的に重回帰分析を行った。その後,不安と抑うつ,SWBを従属変数,一次的評価および属性を独立変数として,段階的に重回帰分析を実施した。
結果 調査対象者のうち,事務従事者および販売従事者を選択した1,260人(男性548人,女性712人,平均年齢44.75(SD=11.61)歳)を有効回答者とした(有効回答率63.0%)。一次的評価を従属変数,役割ストレッサーおよび属性を独立変数とした重回帰分析の結果について,肯定や害–喪失,脅威,挑戦は,「役割不明瞭」および「役割過負荷」に正の影響を与えていた。そして,不安と抑うつ,SWBを従属変数,一次的評価および属性を独立変数とした重回帰分析の結果について,不安は「害–喪失」および「脅威」が正の影響,「挑戦」は負の影響を与えていた。また,抑うつも「害–喪失」および「脅威」が正の影響,「挑戦」は負の影響を与えていた。その一方で,SWBは,「肯定」および「挑戦」が正の影響,役割不明瞭の「害–喪失」,および,役割過負荷の「害–喪失」と「脅威」が負の影響を与えていた。
結論 フルタイムで働く事務・販売従事者は,役割ストレッサーを害–喪失または脅威と知覚するほど,不安および抑うつが増加し,挑戦と評価するほど,不安および抑うつが減少するという結果が得られた。その一方で,本研究では,役割不明瞭を害–喪失と知覚するほどSWBが低下し,肯定および挑戦と評価するほど,SWBが増加していた。また,役割過負荷を害–喪失または脅威と評価するほどSWBが低下し,肯定および挑戦と知覚するほどSWBが増加するという結果が得られた。
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Kazuya TAIRA, Takahiro ITAYA, Kana IWASAKI, Yumiko IWASE, Sayaka TABUC ...
原稿種別: Original Article
論文ID: 24-076
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/12/18
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Objective The coronavirus disease 2019 pandemic has imposed considerable stress on public health centers (PHCs) in Japan, raising concerns over staff burnout and intention to quit. Therefore, this study aimed to examine the relationship between burnout and job-quitting intention among PHC staff members and estimated the prevalence of burnout and job-quitting intentions among these staff members.
Methods This study employed a cross-sectional design. Survey requests were sent to all 468 PHCs in Japan. For the centers that agreed to participate, we confirmed the number of distributed surveys and conducted them via mail. The prevalence of burnout and job-quitting intentions was calculated after adjusting for age, sex, department, and occupation. The Burnout Scale includes three subscales; exhaustion, cynicism, and efficacy. We calculated descriptive statistics for each burnout subscale and assessed the relationship between burnout and job-quitting intentions using generalized estimating equations.
Results We received responses from 23.9% of PHCs (112/468) and 29.3% of staff (1754/5990). Adjusted prevalence was 48.0% (95% confidence interval [CI]; 45.8–50.2%) and 62.2% (95% CI; 59.4–64.9%) for burnout and job-quitting intentions, respectively. Notably, public health nurses demonstrated a pronounced adjusted prevalence of 51.7 (95% CI; 47.2–56.2) and 65.8 (95% CI; 61.7–69.9) for burnout and job-quitting intention, respectively. Of the three burnout domains, only exhaustion (median; 4.40 [interquartile range [IQR]; 3.00–5.80]) had a median score higher than the cut-off value, whereas cynicism (median; 3.40 [IQR; 2.20–5.00]) and efficacy (median; 3.17 [IQR; 2.33–4.33]) had moderate scores. Burnout was a significant predictor of high job-quitting intentions (adjusted relative risk; 1.54, 95% CI; 1.40–1.70).
Conclusion The high prevalence of job-quitting intentions among PHC staff highlights the need for interventions to prevent or reduce burnout. Addressing burnout is essential to reduce job-quitting intentions among Japanese PHC staff members.
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森山 信彰, 舟見 敬成, 小野田 修一, 山田 秀彦, 安村 誠司
原稿種別: 資料
論文ID: 24-030
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/11/08
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目的 本研究では,理学療法士における,避難行動要支援者の個別避難計画(以下,「個別避難計画」),「避難行動要支援者」,「福祉避難所」の各用語を知っている者の割合ならびに現場における活用状況を調査した。さらに,用語に関する知識があることとの関連要因を検討し,より多くの理学療法士が用語を知り,ひいては災害対応に積極的に参画できるようになるための方策検討に向けた資料を得ることを目的とした。
方法 一般社団法人福島県理学療法士会会員を対象に2023年3月8–31日にWeb調査を行った。調査項目は基本属性(年齢,性別,理学療法士経験年数など),「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」を知っているか,知識習得の機会の有無,自身の被災・避難経験の有無,被災者支援経験の有無とした。知識の有無と,理学療法士経験年数,知識習得の機会の有無,自身の被災・避難経験の有無,被災者支援経験の有無の関連をχ2検定と残差分析で検討した。さらに,対象者の「個別避難計画」の把握状況および対象者の「個別避難計画」策定への参画の状況を尋ね,把握および参画している者には通常業務における「個別避難計画」の活用状況ならびに具体的な「個別避難計画」作成への参画状況を自由記載により尋ねた。
結果 1,645人の10.4%にあたる171人(年齢平均±標準偏差:38.4±8.5歳)から回答を得た。「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」を説明できる程度に知っていると回答した者はそれぞれ7人(4.1%),21人(12.3%),17人(9.9%)であった。対象者の「個別避難計画」を把握している者は,避難訓練の実施などに活用していた。個別避難計画の策定への参画内容として,介護支援専門員との情報共有が挙げられた。「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」の各用語を説明できる程度に知っている者の割合は,知識習得の機会があり,被災者支援経験があり,理学療法士経験年数が長いと高かった。一方,自身の被災・避難経験の有無とは関連が認められなかった。
結論 災害時の避難者対応に関する用語(「個別避難計画」,「避難行動要支援者」,「福祉避難所」)を説明できる程度に知っている理学療法士の割合は4.1–12.3%であった。知識習得の機会を得られるよう,体系化された研修会の開催などが有益である可能性がある。
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檜垣 史郎, 奥町 彰礼, 中山 浩二, 吉田 英樹
原稿種別: 公衆衛生活動報告
論文ID: 24-048
発行日: 2024年
[早期公開] 公開日: 2024/11/08
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目的 大阪市では2018年度と2019年度,病院への実地立入検査を実施したが,2021年度はCOVID-19の影響で書類審査を行った。
今回,実地立入検査結果と書類審査結果を活動報告した。本報告の目的は①2方法の結果を比較し,書類審査は実地立入検査と同様に病院を指導することが可能であるか,②今後仮に感染症がパンデミックとなった場合,どの方法が選択されるべきか,検討することである。
方法 2018年度,2019年度実地立入検査では,①計351病院へ書類・点検表送付➡②病院から書類回答➡③実地立入検査➡④郵送にて文書指摘・指導であった。
2021年度書類審査では,①市内176病院に書類・点検表送付➡②病院から書類回答➡③医療安全管理体制,院内感染対策に関して病院ができていないと回答した事項等について保健所行政医師3人が分担して,病院に電話し確認と指導➡④郵送にて文書指摘・指導であった。
そして,実地立入検査結果と書類審査結果を比較,検討した。
活動内容 実地立入検査年度に医療従事者不足での不適事項は,351病院中12病院(3.4%)で認めた。書類審査年度では176病院中8病院(4.5%)で,実地検査年度と書類審査年度で有意差を認めなかった。
医療安全管理体制に関し,実地立入検査年度に保健所が文書指導を行ったのは,351病院中95病院(27.1%)で,書類審査年度は176病院中21病院(11.9%)であった。実地立入検査では書類審査よりも,有意に指導を受けた病院の割合が高かった(P<0.001)。書類審査年度は,研修,医療事故発生時の体制整備の2項目において,文書指導が無かった。
院内感染対策で実地立入検査年度に文書指導となったのは,351病院中65病院(18.6%)で,書類審査年度は176病院中17病院(9.7%)であった。実地立入検査では書類審査よりも,有意に指導を受けた病院の割合が高かった(P=0.007)。書類審査年度は,指針,委員会,研修に関して,文書指導が無かった。
結論 書類審査では,関わる行政医師数が少なくて済み,指導基準を統一しやすいが,病院保管書類等を現地で確認出来ず指導すべき事項を覚知できない可能性があり,実地立入検査が望ましい。しかしパンデミック時にすべての医療機関が同様に実地立入検査を実施するのは困難と考えられ,オンライン併用医療監視について検討する必要がある。
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