日本公衆衛生雑誌
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早期公開論文
早期公開論文の19件中1~19を表示しています
  • 田近 敦子, 井手 一茂, 飯塚 玄明, 辻 大士, 横山 芽衣子, 尾島 俊之, 近藤 克則
    論文ID: 21-011
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 厚生労働省は2014年の介護保険法改正を通じて,本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた取組も進めるとし,通いの場づくりを中心とした一般介護予防事業を設けた。しかし,通いの場への参加による介護予防の効果を複数の市町を対象に検証した報告は少ない。本研究の目的は通いの場参加による要支援・要介護リスクの抑制効果を10道県24市町のデータを用い検証することである。

    方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が10道県24市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した,2013・2016年度の2時点の自記式郵送調査データを用いた。目的変数は要支援・要介護リスク評価尺度(Tsuji, et al., 2018)の合計点数(以下,要介護リスク点数)5点以上の悪化とし,説明変数は通いの場参加の有無とした。調整変数は2013年度の教育歴,等価所得,うつ,喫煙,飲酒,手段的日常生活動作,2013年度の要介護リスク点数(性・年齢を含む),さらに独居と就業状況を加えた9変数とした。統計学的分析は全対象者,および前期・後期高齢者で層別化したポアソン回帰分析(有意水準5%)を行った。感度分析として,要介護リスク点数を3点,7点以上の悪化とする分析も行った。

    結果 対象者3,760名のうち参加者は全体で472人(前期高齢者316人,後期高齢者156人),12.6%(11.8%,14.5%)であった。参加なしに対して参加あり群における要介護リスク点数5点以上の悪化の発生率比は全対象者で0.88(95%信頼区間:0.65-1.18),前期高齢者で1.13(0.80-1.60),後期高齢者で0.54(0.30-0.96)となり,後期高齢者で有意であった。また,要介護リスク点数3点や7点以上の悪化を目的変数とした感度分析でも同様の結果であった。

    結論 非参加者と比較し,通いの場参加者において,要介護リスク点数5点以上の悪化は,後期高齢者で46%抑制されていた。とくに後期高齢者が多い地域に対して通いの場づくりを進め参加者を増やすことが,介護予防を推進する上で有効である可能性が示唆された。

  • 平島 賢一, 樋口 由美, 柳澤 幸夫, 鶯 春夫, 澁谷 光敬
    論文ID: 21-030
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 近年,高齢ドライバーの免許証自主返納者は増加しているが,自動車は地方都市における住民の主な移動手段としての役割を担っており,免許証返納後の身体機能や生活に対する影響は大きいと考える。そこで本研究では,徳島県内の高齢ドライバーを対象に,免許証自主返納が活動性低下を招き,運動機能および認知・精神機能の低下を惹起するという仮説を予備的検証することとした。

    方法 対象者は,免許証の返納日まで日常的に週2回以上の運転を継続していた高齢者17人(平均年齢80.2歳,返納群)と,運転を継続している高齢者23人(76.9歳,運転継続群)とした。調査測定はベースラインと3か月後に実施し,活動性の評価は活動量計による3か月間の実測とLife Space Assessment(LSA)を用いた。運動機能と認知・精神機能の評価は,握力,Timed Up and Go testおよびMini-Mental State Examination(MMSE),Geriatric Depression Scale(GDS)を用いた。返納群には免許証返納に関するアンケート調査も実施した。統計解析は評価時期と2群に対して二元配置分散分析を実施した。

    結果 活動性の指標としたLSAの合計得点は有意な交互作用(P<0.01)を認め,返納群では3か月後に有意に低下した。一方,活動量計による歩数は有意な変化を示さなかった。運動機能および認知・精神機能のいずれの指標にも有意な交互作用を認めなかったが,MMSEとGDSで群の有意な主効果を認め,返納群が運転継続群に比して不良な成績であった。

    結論 徳島県在住の高齢ドライバーにおける免許証返納3か月後の変化は,日常生活における行動範囲の狭小化を認めた。運動機能および認知・精神機能の低下は観察されなかった。免許証を返納した高齢者は,自動車に代わる移動手段の速やかな確保が必要であると思われた。

  • 杉本 昌子, 槇田 浩祐, 吾妻 有貴, 福田 典子, 先田 功
    論文ID: 21-045
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 マンモグラフィ(MMG)単独検診の推進に向けて,問診内容を含めた住民検診データを用いて,視触診で見つかるMMG非検出乳癌の実態を明らかにし,乳癌との関連要因を検討することで,視触診省略によるMMG非検出乳癌への対応策について示唆を得ることを目的とした。

    方法 西宮市においてデータ化が可能であった2014, 2016, 2017年度の乳がん個別検診のデータベースから,個人情報をすべて削除し,連結可能匿名化したデータファイルを用いた。MMG非検出乳癌は,視触診判定のみで要精密検査(MMG判定はカテゴリー2以下で異常なし)となった者のうち,精密検査で「乳癌」と診断された者により把握した。乳がん検診の精度管理指標(プロセス指標)は,受診者全体に加え,視触診判定のみで要精密検査となった者についても算出した。乳癌と各項目との関連は,χ2検定またはFisherの正確確率検定等により分析した。

    結果 受診者13,504人のうち,要精密検査者は1,247人(9.2%)であった。精密検査の結果,乳癌と診断された者は44人(3.5%)であり,このうち,MMG非検出乳癌は4人であった。また,プロセス指標はいずれも許容値を満たしていた。MMG非検出乳癌症例を検討したところ,4例中3例は乳房で気になることとして「しこり」と答えていた。乳癌と各項目との関連を分析した結果,乳癌と有意な関連が認められた項目は,「乳房で気になることの有無」であり,「しこり」と「分泌物」に有意な差異が認められた。

    結論 MMG非検出乳癌の4例中3例はしこりを自覚しており,しこりと分泌物の自覚症状は乳癌と有意に関連していた。視触診省略によるMMG非検出乳癌への対応策として,これらの自覚症状に着目した受診勧奨の啓発,問診の徹底と観察,医師への伝達など多職種による連携,ならびにブレスト・アウェアネスの普及が重要であることが示された。

  • 岩佐 一, 中山 千尋, 森山 信彰, 大類 真嗣, 安村 誠司
    論文ID: 21-064
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 「心的外傷後成長(posttraumatic growth)」(以下,PTG)は,「危機的な出来事や困難な経験との精神的なもがきや奮闘の結果生じるポジティブな心理的変容」であり,心的外傷の体験者に対する心理的支援に活用されている。本研究は,東日本大震災を経験した福島県住民におけるPTGの自由記述を分類し,その傾向を調べること,基本属性とPTG自由記述の関連,「放射線健康影響不安からの回復」とPTG自由記述の関連について検討することを目的とした。

    方法 2016年8月に,20~79歳の福島県住民2,000人に自記式郵送調査を行った。PTGの有無について質問した後,PTGの自由記述を求めた。基本属性として,年齢,性別,教育歴の回答を求めた。震災直後と調査時点における,放射線健康影響に対する不安を問い,対象者を「不安なし」群,「不安から回復」群,「不安継続」群に分割した。Posttraumatic Growth Inventory(Tedeschi & Calhoun, 1996)における5つの領域(「他者との関係」「新たな可能性」「人間としての強さ」「精神性的変容」「人生への感謝」)に基づき,さらに西野ら(2013)を参考として,「防災意識の高揚」「原子力問題への再認識」「権威からの情報に対する批判的吟味」を加えた8つのカテゴリにPTG自由記述を分類した。

    結果 916人から回答を得て,欠損の無い786人を分析対象とした。女性と64歳以下の者では,「他者との関係」「人生への感謝」を回答した者が多かった。教育歴が高い者では,「他者との関係」「原子力問題への再認識」「権威からの情報に対する批判的吟味」「人間としての強さ」「精神性的変容」「人生への感謝」を回答した者が多かった。「不安から回復」群において,「原子力問題への再認識」を回答した者が多かった。

    結論 女性や若年者では,家族・友人関係,地域との結びつきを実感する等の報告や,日常生活に対する感謝の念が生じる等の報告がなされやすかった。教育歴が高い者では,国や電力会社,全国紙等が発する情報を鵜呑みにせず批判的に吟味するようになった等の報告や,震災後自身の精神的な強さや成長を認識できた等の報告がなされやすかった。放射線健康影響不安から回復した者では,原発やエネルギー問題に対して新たな認識が生じた等の報告がなされやすかった。

  • 宮川 雅充, 濱島 淑恵, 南 多恵子
    論文ID: 21-080
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 日本においても,家族のケアを担っている子ども(ヤングケアラー)が相当数存在することが指摘されている。しかしながら,ケア役割の状況が彼らの精神的健康に与える影響に関する調査研究はほとんど行われていない。本研究では,高校生を対象に,精神的苦痛とケア役割の状況との関連を分析し,ケア役割がヤングケアラーの精神的健康に与える影響について検討した。

    方法 埼玉県の県立高校(11校)の生徒4,550人を対象に質問紙調査を行った。調査では,家族の状況とともに,彼らの担うケア役割の状況を尋ねた。また,Kessler 6項目精神的苦痛尺度(K6)の質問も尋ねた。なお,高校生が質問内容を容易に理解できるように,K6の公式日本語版の一部に変更を加えたものを用いた。精神的苦痛とケア役割の状況との関連を,交絡因子の影響を調整した回帰分析(重回帰分析および順序ロジスティック回帰分析)により検討した。

    結果 本質問紙調査では,3,917人から有効回答を得た。本稿では,分析で使用する変数に欠損値がなく,年齢が15歳から25歳であった3,557人を分析対象とした。なお,3,557人のうち19歳の者は23人(0.6%),20歳以上の者は5人(0.1%)であった。34人(1.0%)が幼いきょうだい(障がいや疾病等はない)のケアを担っていた(ヤングケアラーA)。また,190人(5.3%)が,障がいや疾病等のある家族のケアを担っていた(ヤングケアラーB)。残りの3,333人(93.7%)は,家族のケアを行っていなかった(対照群)。2つの回帰分析は,同様の結果となり,いずれの分析においても精神的苦痛とケア役割の状況との間に有意な関連が認められた(それぞれ,P=0.003,P<0.001)。順序ロジスティック回帰分析の結果では,ヤングケアラーBの精神的苦痛(K6)のオッズ比は1.572であり,対照群と比較して有意に高かった(P<0.001)。一方,ヤングケアラーAの精神的苦痛(K6)のオッズ比は1.666であり,対照群との間に有意な差は認められなかった(P=0.084)が,オッズ比は対照群よりも高く,ヤングケアラーBと近い値であった。

    結論 ケア役割がヤングケアラーの精神的健康に影響を及ぼすことが示唆された。

  • 西田 和正, 河合 恒, 伊藤 久美子, 江尻 愛美, 大渕 修一
    論文ID: 20-092
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 2015年度に介護予防・日常生活支援総合事業が導入され,住民主体の介護予防活動は,より重要性が増している。自治体の介護予防事業においても,終了後に参加者を住民主体の介護予防活動へ効果的に繋げることが必要である。本研究では住民主体の介護予防活動への参加を促進する取り組みを行った介護予防事業終了者の,その後の住民主体の介護予防活動への参加要因を明らかにすることを目的とした。

    方法 東京都A区の一般介護予防事業の2教室を対象とした。この教室では,心身機能改善とともに事業終了後の参加者の自主グループ化を支援するための学習やグループワークを導入している。本研究では,2016・2017年度に同事業参加者に対して実施した,事業開始3か月後(以下,T1)と事業終了6か月後(以下,T2)の自記式アンケートを分析した。有効回答数は216人(男性:51人,女性:165人,年齢:65-95歳)であった。T1では参加教室,健康度自己評価,基本チェックリスト,ソーシャル・キャピタルの「近隣住民との交流」,「グループや団体への参加の有無」,「近隣住民への信頼」,「近隣住民が他の人の役に立とうとすると思うか」を調査した。T2では住民主体の介護予防活動として,介護予防自主グループへの参加の有無を調査した。住民主体の介護予防活動への参加の有無と調査項目との関連をロジスティック回帰分析で検討した。

    結果 参加群は113人(52.3%),不参加群は103人(47.7%)であった。住民主体の介護予防活動への参加の有無を従属変数,各調査項目を独立変数として個別に投入した単変量のモデルでは,「参加教室」(オッズ比:0.31,95%信頼区間:0.15-0.63,P=0.001),「近隣住民への信頼」(オッズ比:5.30,95%信頼区間:1.46-19.16,P=0.011)が介護予防活動への参加と有意に関連していた。すべてを独立変数として投入した多変量のモデルでは,「参加教室」(オッズ比:0.29,95%信頼区間:0.14-0.62,P=0.001)が有意な関連要因であった。

    結論 事業における積極的な取り組みを通して約5割が住民主体の介護予防活動へ繋がっていた。住民主体の介護予防活動参加の関連要因は,「参加教室」であり,教室の開催頻度などプログラムの内容が事業終了後の住民主体の介護予防活動参加に影響すると考えられた。

  • 野藤 悠, 阿部 巧, 清野 諭, 横山 友里, 天野 秀紀, 村山 洋史, 吉田 由佳, 新開 省二, 藤原 佳典, 北村 明彦
    論文ID: 21-022
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 性,年齢および機能的健康度から,3年間の要介護認定の発生確率を予測するモデルを構築し,その性能を評価した。さらに,高齢者本人の気づきと行動変容を促すことで介護予防の効率化を図ることができるよう,発生確率を視覚化した要介護認定リスクチャートを開発した。

    方法 兵庫県養父市在住の要介護認定を受けていない高齢者を対象に2012年に実施した郵送調査で,基本チェックリスト(KCL)に回答した5,960人および介護予防チェックリスト(KYCL)に回答した4,448人を分析対象とした。ベースライン時点から3年間の要介護認定の発生を目的変数とし,年齢に加え,1)うつの項目を除いたKCL 20項目の得点,2)KYCL得点のいずれかを説明変数とするロジスティック回帰分析を男女ごとに行い,その結果に基づき要介護認定の発生確率を計算した。モデルの較正の評価にはHosmer-Lemeshow (HL)検定を,識別能の評価にはarea under the receiver operating characteristic curve (AUC)を,内的妥当性の評価には5分割交差検証により算出したAUCの平均値を用いた。

    結果 KCLの分析対象者では,男性207人(8.2%),女性390人(11.3%),KYCLの分析対象者では,男性128人(6.6%),女性256人(10.2%)が要介護認定を受けた。KCLまたはKYCLを含むモデルのHLのP値は,それぞれ男性0.26, 0.44,女性0.75, 0.20であり,AUCは男性0.86, 0.86,女性0.83, 0.85,5分割交差検証により算出したAUCの平均値は男性0.86, 0.85,女性0.83, 0.85であった。算出した発生確率に基づいて,縦軸に年齢階級,横軸にKCLまたはKYCL得点を配置し,交点のマス目を発生確率に応じて6段階に色分けしたリスクチャートを作成した。

    結論 男女共にHLのP値は有意水準(0.05)を上回っていたこと,AUCおよびAUCの平均値のいずれも0.80以上であったことから,本研究で構築したモデルは,較正,識別能,内的妥当性のいずれの面でも優良であることが示された。本リスクチャートは,簡便に使用することができることから,市区町村における介護予防事業を効率的に推進するためのツールの一つになることが期待される。今後,全国各地で広く使用できるよう,大規模なサンプルによる検討や外的妥当性の検証が必要である。

  • 杉浦 圭子, 村山 洋史, 野中 久美子, 長谷部 雅美, 藤原 佳典
    論文ID: 21-032
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 最長職は高齢期の健康状態や生活の質に関連すると報告されている。本研究では,主として就労支援の観点から,最長職の就労形態および業種と,現在の就労状況および就労理由との関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 東京都大田区入新井地区に居住する65歳以上の者のうち,要介護度4以上,施設入所中の者等を除いた8,075人全数に対し,2015年8月に郵送による無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票では基本属性,生活状況,現在の就労状況および最長職の就労形態と業種を尋ねた。また,現在就労している者については就労理由を尋ねた。分析は現在の就労状況(「常勤」「非常勤」「就労なし」)を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を,就労理由については個々の理由の該当有無を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。

    結果 5,184件の調査票を回収し(回収率64.2%),5,050件を分析対象とした。最長職の就労形態は,正規の職員・従業員が最も多く42.7%で,業種は販売・サービス職が最も多かった(24.2%)。常勤,非常勤を含め現在の就労者は約3割だった。常勤・非常勤を含めた就労者のうち,その就労理由を尋ねると「生活のための収入を得るため」が最も多く約3割を占め,次いで「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・つながりを得るため」であった。現在就労している者の最長職の業種は,常勤では自営業主・自由業,会社・団体などの役員が多く,非常勤では専門職が多かった。就労していない者は正規の職員・従業員および無職(専業主婦含)が多かった。現在就労している理由を「生活のための収入を得るため」とした者は,最長職の就労形態については自営業主・自由業が,業種については労務系職種が多く,「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・人とのつながりを得るため」を理由としていた者は,最長職が正規の職員・従業員が,会社・団体などの役員,業種については事務系・技術系職種が多かった。

    結論 最長職の就労形態や業種によって現在の就労状況や就労理由が異なることが明らかとなった。高齢者の就労や社会参加が円滑に推進されるためには,高齢期の健康状態や生活の質に関連が深い最長職を含め,生活背景などの個別性を加味する必要性があると考える。

  • 赤岩 友紀, 林 芙美, 坂口 景子, 武見 ゆかり
    論文ID: 21-057
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 新型コロナウイルス感染症(以下,コロナ)流行下における世帯収入の変化の有無別に,コロナ前から緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題および食情報のニーズとの関連を明らかにすることを目的とした。

    方法 2020年7月1~3日,13の特定警戒都道府県在住20~69歳男女を対象に,無記名のWeb調査を実施した。目標回答者数を2,000人とし,2020年2月より前(以下,コロナ前)から2020年4~5月の緊急事態宣言期間中にかけての食行動の変化と,緊急事態宣言期間中の食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを尋ねた。有効回答者2,299人のうち,学生を除いた2,225人を解析対象とした。コロナによる世帯収入の変化別に3群(減少,変化なし,増加)に分け,対象者特性,食行動の変化等についてクロス集計を行った。また,世帯収入の変化を独立変数,食行動の変化,食物へのアクセスの課題,食情報のニーズを従属変数とし,属性を調整した多重ロジスティック回帰分析を行い,減少群の特徴を把握した。さらに,世帯収入の変化にコロナ前の経済的な暮らし向きを加えた6群に分けて,変化なし群/ゆとりありを参照群として同様に解析を行った。

    結果 減少群は34.6%,変化なし群は63.9%,増加群は1.6%であった。減少群はパート・アルバイト,自営業の者が多く,緊急事態宣言期間中に休職していた者が多かった。属性を調整後,減少群は変化なし群に比べて,外食頻度は「減った」,調理頻度,中食頻度,子どもとの共食頻度は「増えた」オッズ比が有意に高かった。コロナ前の経済的な暮らし向きにかかわらず,減少群の全てで,欠品による入手制限,価格が高いことによる入手制限,店内混雑による買い物の不自由が「よくあった」オッズ比が変化なし群/ゆとりありに比べ有意に高かった。また,減少群/ゆとりなしは変化なし群/ゆとりありに比べ,食費の節約方法等を必要としていた。

    結論 コロナ禍で世帯収入が減少した者は,緊急事態宣言期間中に食物へのアクセスに課題を感じていた者が多く,食情報ではとくに食費の節約方法のニーズが高かった。また,減少群は変化なし群に比べて外食頻度が減少した一方で,調理頻度,中食頻度の増加がみられた。こうした食行動の変化により,食物摂取状況が望ましい方向と望ましくない方向のどちらに変化したか,さらなる検討が必要である。

  • 上野 恵子, 西岡 大輔, 近藤 尚己
    論文ID: 21-070
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 近年,生活保護制度の被保護者への健康管理支援の重要性が指摘され,施策が打たれている。本研究は,2021(令和3)年に全国の福祉事務所で必須事業となった「被保護者健康管理支援事業」に対して福祉事務所が抱える期待や懸念,および国・都道府県への要望を明らかにすることを目的とした。

    方法 2019年11月,機縁法により選定された23か所の福祉事務所に,質問紙調査を依頼した。質問紙では,健康管理支援事業の実施に際して期待する点ならびに懸念する点,国・都道府県から受けたい支援を自由記述で回答を求めた。次いで2019年11月から2020年2月にかけて,福祉事務所でヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査では,質問紙項目に記載が不十分な回答,回答の補足事項や不明点を調査票の内容に沿って聞き取りを実施した。

    結果 16か所の福祉事務所から調査票の回答およびヒアリング調査の承諾を得た(同意割合69.6%)。福祉事務所担当者は健康管理支援事業が被保護者の健康意識・状態を改善し,被保護者のみならず他住民への取り組みとしても実施されることを期待していた。また,困難を感じている点として,実施体制の構築,事業の評価指標・対象者の設定,保健医療専門職の確保が示唆された。国・都道府県への要望としては,評価指標・基準の提示,標準様式の提供,参考となる事業事例の紹介,福祉事務所間や地域の他の関係機関との連絡調整,情報共有の場の提供,財源の確保などが挙げられた。

    結論 健康管理支援事業の円滑な実施を推進するためには,自治体と国ならびに都道府県が連携を深めるとともに,重層的な支援体制の構築が求められている。

  • 吉岡 京子, 藤井 仁, 塩見 美抄, 片山 貴文, 細谷 紀子, 真山 達志
    論文ID: 21-010
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 本研究の目的は,保健師が策定に参画した保健医療福祉計画(以下,計画とする。)の実行段階における住民との協働に関連する要因を解明し,地域全体の健康レベルの向上に貢献できる保健活動への示唆を得ることである。

    方法 研究の概念枠組みとしてPlan-Do-Check-Act(以下,PDCAとする。)サイクルを用いた。本調査で焦点を当てた計画の実行段階は「Do」に相当するため,調査項目は「Plan」の段階の内容を中心に構成し,計画の実行段階における住民との協働をどの程度取り入れたか,回答者の属性,計画策定への参画状況,組織要因,計画策定の際に用いた方策を含めた。調査対象者は,地方自治体に勤務する常勤保健師のうち,保健師活動指針が発出された2013年以降に計画策定に参画した経験を有する者とした。協力意思を示した220地域(36都道府県,41保健所設置市,153市町村)に2,185人分の調査票を2019年10月~11月に郵送した。二項ロジスティック回帰分析により,住民との協働を取り入れたことと独立変数との関連について検討した。

    結果 1,281人から回答を得た(回収率58.6%)。2013年以降に計画策定の経験がなかった203人と欠損値の多かった50人を除く1,028人について分析した(有効回答率47.0%)。計画の実行段階で住民との協働を「全く取り入れなかった」と回答した者は125人(12.2%),「あまり取り入れなかった」者は293人(28.5%),「少し取り入れた」者は482人(46.9%),「とても取り入れた」者は128人(12.4%)だった。二項ロジスティック回帰分析の結果,係長級以上の職位に就いていること,健康増進計画の策定への参画,住民へのアンケート調査やグループワークの実施,ワーキンググループや計画策定委員会の委員への住民の参加,すでに発表されている研究成果の活用,ターゲット集団の設定および計画実施の進捗管理の実施が,住民との協働を取り入れたことと有意に関連していた。

    結論 保健師が,計画の実行段階における住民との協働を進めていくためには,地域の健康・生活課題解決に向けて住民の声やエビデンスに基づく計画を策定し,確実に実行されるように進捗管理を行う必要性が示唆された。

  • 田村 元樹, 服部 真治, 辻 大士, 近藤 克則, 花里 真道, 坂巻 弘之
    論文ID: 21-014
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 本研究は,うつ発症リスク予防に効果が期待される65歳以上の高齢者のボランティアグループ参加頻度の最適な閾値を傾向スコアマッチング法を用いて明らかにすることを目的とした。

    方法 日本老年学的評価研究(JAGES)が24市町村に在住する要介護認定を受けていない65歳以上を対象に実施した,2013年と2016年の2時点の縦断データを用いた。また,2013年にうつ(Geriatric Depression Scale(GDS-15)で5点以上)でない人を3年間追跡し2013年のボランティアグループに年1回以上,月1回以上もしくは週1回以上の参加頻度別に,2016年に新たなうつ発症のオッズ比(OR)を,傾向スコアマッチング法とt検定などを用いて求めた。

    結果 参加群は,年1回以上で9,722人(25.0%),月1回以上で6,026人(15.5%),週1回以上で2,735人(7.0%)であった。3年間のうつの新規発症は4,043人(10.5%)であった。傾向スコアを用いたマッチングでボランティアグループ参加群と非参加群の属性のバランスを取って比較した結果,月1回以上の頻度では参加群は非参加群に比べて,Odds比[OR]0.82(95%信頼区間:0.72, 0.93)と,うつ発症リスクは有意に低かった。年1回以上の参加群ではORが0.92(0.83, 1.02),および週1回以上では0.82(0.68, 1.00)であった。

    結論 高齢者のボランティアグループ参加は,月1回以上の頻度で3年後のうつ発症リスクを抑制する効果があることが示唆された。高齢者が月1回でもボランティアとして関わることができる機会や場所を地域に増やすことが,うつ発症予防対策となる可能性が示唆された。

  • 根本 裕太, 桜井 良太, 松永 博子, 藤原 佳典
    論文ID: 21-023
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 自然災害時において,情報通信技術(ICT)機器を用いることで,迅速に多様な情報を収集できる。本研究では性別・年齢階級別のICT機器利用状況を示し,ICT機器利用者における自然災害時に想定される情報収集の特徴を明らかにすること,インターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因を解明することを目的とした。

    方法 東京都府中市の18歳以上の住民21,300人を対象に郵送調査を実施した。ICT機器は,パソコン,スマートフォン,タブレット端末,携帯電話の利用状況を調査し,いずれかの機器を利用する者をICT機器利用者とした。自然災害時に想定される情報収集手段として,テレビ,ラジオ,インターネット検索,緊急速報メール,防災行政無線,行政機関のホームページ,近隣住民,家族,友人から該当するものをすべて選択してもらった。このうち,インターネット検索,緊急速報メール,行政ホームページを,インターネットを介した情報収集手段とした。ICT機器利用割合の性差と年齢階級差ならびにインターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因を検討するため,ロバスト分散を用いたポアソン回帰分析を実施した。

    結果 9,201人(回答率43.2%)から有効回答を得た。ICT機器利用者は,70歳未満では95%程度以上,80歳以上では女性66.7%,男性70.6%であった。ICT機器利用者の災害時に想定される情報収集手段は,インターネット検索を選択した者は,女性では60歳未満,男性では70歳未満の70%以上であったが,80歳以上の女性では7.8%と低かった。インターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因は,インターネット検索では,女性,世帯収入が高い者,教育年数が長い者,配偶者がいない者で選択する者が多く,同居者がいる者や高年層,とくに高齢女性では少なかった。緊急速報メールを選択した者は,女性,教育年数が長い者で多く,高年層,配偶者がいない者では少なかった。行政ホームページを選択した者は,女性,教育年数が長い者で多く,同居者がいない者,配偶者がいない者や高年層,とくに高齢女性で少なかった。

    結論 ICT機器利用者における災害時に想定される情報収集手段は性や年齢階級により異なることが示され,インターネットを介した情報収集手段に関連する要因は情報収集手段によって異なることが示唆された。

  • 岩崎 正則, 角田 聡子, 安細 敏弘
    論文ID: 21-034
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 継続的な口腔管理,定期的な歯科受診は口腔の健康維持に重要である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により,感染への不安から医療機関への受診を控えるケースが報告されている。定期歯科受診による管理下にあった口腔の状態が,COVID-19感染拡大にともなう定期管理の中断により,どのように変化するかは明らかとなっていない。本研究は,高校生を対象に,学校健康診断(学校健診)のデータと学校健診と同時に実施した質問紙調査から得られたデータを用いて,COVID-19流行下の定期的歯科受診の状況と口腔の状態の変化を検討することを目的とした。

    方法 福岡県内の高等学校1校に在学する高校生のうち2019年度の1年生,2年生であった者878人を解析対象とした。COVID-19流行下での定期的歯科受診の状況,歯科医療機関受診に対する不安について質問紙により調査した。2019年度および2020年度学校健診結果にもとづく永久歯の状態と歯肉の状態の変化と定期的歯科受診の状況の関連をロバスト標準誤差を推定したポアソン回帰分析を用いて評価した。

    結果 対象者878人中,417人(47.5%)が定期歯科受診未実施,320人(36.4%)がCOVID-19流行下での定期歯科受診継続,141人(16.1%)が定期歯科受診中断であった。定期歯科受診中断群では,歯科医療機関受診に不安を抱いている者の割合が30.5%であり,有意に高かった。2019年度の歯科健診時に歯肉の炎症がない者521人における,2020年度の歯科健診時に歯肉の炎症を有する者の割合は,定期歯科受診未実施群で31.0%,定期歯科受診継続群で20.2%,定期歯科受診中断群で38.2%であった。定期受診継続群と比較して,定期歯科受診中断群および定期歯科受診未実施群では,歯肉の炎症を有する者の割合が有意に高く,共変量調整後の発生率比(95%信頼区間)は定期歯科受診中断群で1.95(1.34-2.84),定期歯科受診未実施群で1.50(1.07-2.10)であった。定期歯科受診中断と永久歯の状態の変化の間には有意な関連はなかった。

    結論 本研究の結果から定期歯科受診の中断と歯科医療機関受診への不安感は有意に関連していること,定期歯科受診中断者では学校健診時に新たに歯肉の炎症を有する者の割合が高いことが示された。

  • 梅木 佑夏, 田淵 貴大
    論文ID: 21-051
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/10/22
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 受動喫煙には子どもの健康への悪影響がある。そのため,2018年4月1日に東京都では「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」が施行された。日本における子どもの受動喫煙の防止を目的とした条例の影響について評価した報告はいまだ存在しない。本研究では,東京都の条例の施行前後の家庭における喫煙ルールの変化について分析し,条例の影響を評価した。

    方法 2018年1月26日~3月20日および2019年2月2~25日に日本の一般住民を対象としてインターネット縦断調査を実施した(JASTIS研究)。東京都居住者とコントロール地域居住者それぞれにおける2018年および2019年の家庭が屋内禁煙である者の割合の変化を差分の差分(Difference-in-Difference, DID)法を用いて分析した。

    結果 コントロール1(東京都を除いた46都道府県に居住する者),コントロール2(関東地方を除いた都道府県に居住する者),コントロール3(政令指定都市を有する都道府県に居住する者)の3種類のコントロールを用いて解析を行ったが,共変量調整DIDは,コントロール1で−1.0%ポイント(95%信頼区間(CI)=−5.8, 3.9),コントロール2で−1.0%ポイント(95% CI=−5.9, 4.0),コントロール3で−1.0%ポイント(95% CI=−5.9, 3.9)であり,いずれのコントロールを用いた場合も有意差を認めなかった。また,性別,年齢,喫煙状況,世帯年収,住居,仕事の状況,学歴,婚姻状況のいずれの属性で層別化した場合でも有意差は認められなかった。

    結論 本研究により,「東京都子どもを受動喫煙から守る条例」施行前の2018年と施行後の2019年で,東京都民の家庭での喫煙ルールは変化しなかったことが明らかになった。今後の自治体における受動喫煙防止条例の立案および推進方策について検討する上で,本研究は有用な資料になるものと考えられる。

  • 中山 千尋, 岩佐 一, 森山 信彰, 高橋 秀人, 安村 誠司
    論文ID: 20-140
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/08/25
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所の事故から9年経った現在でも,「放射線の影響が子どもや孫など次の世代に遺伝するのではないか」という「次世代影響不安」が根強く残っている。マスメディア報道やインターネットによる情報等が,この不安に影響していると考え,その関連を明らかにして,今後の施策に繋げることを目的とした。

    方法 2016年8月に,20~79歳の福島県民2,000人を対象に,無記名自記式質問紙による郵送調査を実施した。福島県の会津地方,中通り地方,浜通り地方,避難地域から500人ずつ無作為抽出し,原発に近い沿岸部の浜通りと避難地域のデータを分析対象とした。目的変数は「次世代影響不安」で,その程度を4件法で尋ねた。説明変数は,放射線について信用する情報源と,利用するメディアを尋ねた。この他に属性,健康状態,放射線の知識等を尋ねた。2つの地域を合わせた全体データで,「次世代影響不安」と質問項目との間で単変量解析を行った。次に「次世代影響不安」を目的変数,単変量解析で有意差があった項目を説明変数として重回帰分析を行った。さらに,このモデルに項目「避難地域」と,「避難地域」と全説明変数との交互作用項を加えて,重回帰分析を行った。

    結果 有効回答は浜通り201人(40.2%),避難地域192人(38.4%)であった。重回帰分析の結果,次世代影響について,2つの地域全体では,政府省庁を信用する人,健康状態がよい人,遺伝的影響の質問に正答した人の不安が有意に低かった。また,がんの死亡確率の問題に正答した人は,不安が有意に高かった。さらに浜通りを基準にして交互作用項を投入したモデルでは,浜通り地方で,全国民放テレビを利用する人の不安が有意に高く,遺伝的影響の質問に正答した人の不安は有意に低かった。避難地域を基準にしてこのモデルを分析すると,避難地域は全体と同じ結果であった。

    結論 二つの地域で,情報源とメディアが次世代影響に有意に関連していた。報道者が自らセンセーショナリズムに走らないような意識が必要である。受け手は正しい情報を発信している情報源やメディアの選択が必要であり,メディアリテラシー教育の必要性が示唆された。また,健康状態の向上は,不安を下げる方策であることが示唆された。一方がんの死亡確率の知識は,伝え方に誤解を招かないような工夫を要することが示唆された。さらに,遺伝的影響の知識の普及は不安を下げる方策であることが示唆された。

  • 吉岡 みどり, 原田 亜紀子, 芦澤 英一, 木下 寿美, 相田 康一, 大森 俊, 木下 裕貴, 大橋 靖雄, 佐藤 眞一, 水嶋 春朔
    論文ID: 20-113
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 人生の最終段階を可能な限り長く自立して過ごしていくためには,Activities of Daily Living(ADL)のような身体的な自立に加え,高次生活機能(「手段的自立」,「活動」,「参加」)があわせて必要となってくる。そこで,地域住民を対象とした長期追跡研究において,手段的自立,知的能動性,社会的役割と健康状態(総死亡,要介護発生)の関連性を検討した。

    方法 鴨川コホート研究の参加者データを用いて,2003年から2013年までに千葉県鴨川市民を対象に,医療サービス利用状況,健康状態,疾病有病率,介護保険サービスの利用状況を調査した。鴨川市民の生活習慣と高次生活機能の違いを死亡状況別,要介護発生状況別に比較した。高次生活機能は,老研式活動能力指標を用いて評価し,各質問への回答,各領域の得点,合計得点を調べた。

    結果 40-69歳の成人6,503人がコホート研究に参加し,2013年末までに810人の死亡を把握した。総死亡と高次生活機能との関連をみると,手段的自立得点4または5に対する3点未満のハザード比2.03(95%CI: 1.59-2.60),知的能動性得点4に対する3点未満のハザード比1.39(95%CI: 1.09-1.77),社会的役割得点4に対する3点未満のハザード比1.28(95%CI: 1.03-1.59))であった。性別の層別解析では,手段的自立得点の低さは,男女ともに総死亡発生に対して関連がみられたが,知的能動性,社会的役割については,女性においてのみ総死亡発生との関連がみられた。同じ期間に917人の要介護発生を把握した。同様に高次生活機能との関連をみると,手段的自立,社会的役割についてはハザード比が有意であった(手段的自立1.93(95%CI: 1.55-2.40),社会的役割1.30(95%CI: 1.07-1.58))。男女別では,手段的自立得点の低さは,男女ともに要介護発生に対して関連がみられたが,社会的役割については,女性でのみ関連がみられた。

    結論 総死亡,要介護発生に対して,高次生活機能の手段的自立,知的能動性,社会的役割のいずれのドメインにおいても,得点が最も低いカテゴリーは,総死亡,要介護発生に対して有意に関連していた。

  • 谷口 しのぶ, 櫻木 範明, シャロン ハンリー, 築山 真如月, 藤田 博正, 寒河江 悟, 梶井 直文, 渡利 英道, 玉腰 暁子
    論文ID: 21-025
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 細胞診と自己採取ヒトパピローマウイルス(HPV)検査を選べる受診再勧奨方法が子宮頸がん検診未受診者の検査応答率と病変発見率に及ぼす効果を明らかにする。

    方法 2016~2018年度に江別市の子宮頸がん検診未受診者に対して,子宮頸部細胞診(以下細胞診)あるいは自己採取腟分泌物検体によるHPV検査(以下自己採取HPV検査)を選択できる受診再勧奨を行った。主要評価項目は検査応答率,病変発見率(≥CIN2: cervical intraepithelial neoplasia grade2以上および≥CIN3 : CIN3以上),副次評価項目は要精検率,精検受診率である。

    結果 未受診者総計6,116人の応答率は15.9%であり,内訳は細胞診6.5%,HPV検査9.4%だった。HPV検査応答者の11.7%がHPV陽性であり,精密検査への選別をする細胞診トリアージの対象となった。病変発見率はHPV検査応答者で≥CIN2 : 1.7%,≥CIN3 : 0.9%,細胞診応答者で≥CIN2 : 1.0%,≥CIN3 : 0.8%であり,どちらの病変基準にも差がなかった。細胞診トリアージ受診者における病変発見率は≥CIN2 : 23.8%,≥CIN3 : 11.9%であった。

    結論 本フィジビリティスタディで,自己採取HPV検査+細胞診トリアージ法は,応答率が細胞診単独法よりも高く,かつ効率的に子宮頸部病変を発見できることが示され,未受診者対策として有効と考えられた。自治体の共同で本法の手順を標準化し,有用性を検証することが望まれる。新型コロナウイルス感染蔓延下の子宮頸がん検診受診促進策としても検討に値すると考えられる。

  • 斉藤 雅茂, 辻 大士, 藤田 欽也, 近藤 尚己, 相田 潤, 尾島 俊之, 近藤 克則
    論文ID: 21-056
    発行日: 2021年
    [早期公開] 公開日: 2021/08/06
    ジャーナル フリー 早期公開

    目的 介護予防事業推進による財政効果を評価する際の基礎資料を得るために,介護予防・日常生活圏域ニーズ調査で把握可能な要支援・要介護リスク評価尺度点数別の介護サービス給付費の6年間累積額を分析した。

    方法 日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study:JAGES)の一環で,2010年に実施された要介護認定を受けていない高齢者を対象にした質問紙調査の一部をベースラインにした(全国12自治体を対象。回収率:64.7%)。その後,行政が保有する介護保険給付実績情報と突合し,46,616人について2016年11月まで(最長76か月間)に利用した介護サービス給付費を把握した。要支援・要介護リスクについては,性・年齢を含む12項目で構成される要支援・要介護リスク評価尺度・全国版(0-48点)を用いた。ベースライン時の基本属性等を調整した重回帰モデルに加えて,従属変数の分布を考慮したトービットモデルおよび多重代入法による欠損値補完後の重回帰モデルを行った。

    結果 追跡期間中に7,348人(15.8%)が新たに介護保険サービス利用に至っていた。要支援・要介護リスク評価尺度点数が高いほど,6年間の要支援・要介護認定者および要介護2以上認定者割合,累積介護サービス給付費が高く,介護サービスの利用期間は長く,いずれも下に凸の曲線状に増えていた。ベースライン時の諸特性を統計的に考慮したうえでも,リスク評価点数が1点高いほど,6年間累積介護サービス給付費は1人あたり3.16(95%信頼区間:2.83-3.50)万円高い傾向にあった。リスク評価点数が低い群(16点以下)では1点あたり0.89(95%信頼区間:0.65-1.13)万円,高い群(17点以上)では1点あたり7.53(95%信頼区間:6.74-8.31)万円高い傾向にあった。推計モデルによる大きな違いは確認されなかった。

    結論 ある時点での集団のリスク評価尺度点数からその後6年間の累積介護サービス給付費の算出が可能であることが示された。外出頻度などリスク点数を構成する可変的な要素への介入が保険者単位でみると無視できない財政的なインパクトになりうることが示唆された。

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